上海レポート かさこワールド

・2日目:12/28(日)上海の朝

<1>団体ツアーの思い出
朝8時起床。廊下で早口に、
まるで喧嘩のようにしゃべりまくっている中国人の声で目が覚める。
きっと客ではない。部屋の清掃員の声だろう。
改めて、部屋から上海の街並みを見る。やっぱりすごい。
ビルの多さではなく、まだまだビルが建てられる空き地の多さと、
まだまだ古い街並みも残っているから。

さてさて朝の楽しみはなんといっても朝食である。
もちろん、ホテルのまずい朝食など食べるわけがない。
町の食堂で包子を食べるのだ。
これが実に安くて実にうまいということを、
アジア90日間旅行中、ドミトリーで泊まっていた日本人のバックパッカーから教えてもらった。
以来、中国旅行の一番の楽しみは朝食となった。

今回は私一人の旅ではなく、妻と一緒である。
中国をパックツアーでしか旅行したことのない妻に、
朝食に町の食堂で包子を食べるような、そんな旅行の醍醐味を味わってほしいと思っていた。

中国へは1996年、妻と一緒に団体パックツアーで、上海、桂林、西安、北京を訪れたことがある。
僕も妻もこの時に一番思い出に残っていることは、
ツアーの食事中にレストランを抜け出して、マクドナルドでポテトを買って食べたうまさだった。

パックツアーはすべて料理がついた。
30人以上の団体ツアーなので、それなりの大きなレストランで毎回中華を食べていたのだが、
3日目ぐらいから味に飽きてうんざりしてきたのだった。

30人もいるのでいろいろな料理があるはずなのに、なぜか飽きた。
それは大レストラン特有の、また団体ツアー用にアレンジされた、それなりの味の連続だったからである。
その後、個人で中国を1ヶ月旅した僕は、町の食堂で中華料理を食べても飽きなかった。
やはり大レストランで毎日食べるというのは飽きる味なのだろう。

<2>中国の朝は包子(パオズ)からはじまる
そんなこともあって、ホテルの朝食ではなく町の食堂を探す。
大都会・上海とはいえ、古い街並みがまだ相当残っている以上、町の食堂があるはずだ。
ホテルから出ると、近代的高層ビルがある方ではなく、
古い小汚い街並みの方へ向うと、案の定、あるはあるは、
おいしそうに蒸篭からもくもくと湯気をあげている食堂がいっぱいあった。

包子を店頭で見せてもらい大きさを確認し、1人3つずつ頼む。
そしたらなんか店員がいろいろといっている。
わけもわからずうなずくと、包子の外に、豆腐の入ったスープが1杯出てきた。
そんでもって、あたたかい牛乳のようなもの。

包子は実にうまい!
感動だな。中国に来た甲斐がある。
そんでもって豆腐の入ったスープ。
湯豆腐のような感覚で食べられてこれまたうまい。
そして喉が渇いたところで、このホット牛乳。
しかしこれがまずい。なんだろうな、これ。牛乳ではないな。とにかくまずい。
これは1口つけて勘弁して、うまい包子と湯豆腐で大満足する。
これで1人3元(45円)。中国は最高ですな。

<3>コンビニが中国に出現!
朝食を食べ終わると、向かいのコンビニがあることに気づく。
ついに中国にもコンビニができたか。
1999年に中国を1ヶ月以上訪れていたがコンビニは見なかった。
これも最近の変化か、上海だけの現象か。

コンビニに入る。水やお菓子を仕入れるためだ。
しかしコンビニというシステムは実によくできている。
マクドナルドと同じく世界のスタンダードとして広まることができるものを持っている。
売っている商品や陳列の仕方は日本と変わることはない。
ただそれがみんな中国製のものばかりということだけか。
雑誌、新聞、お菓子、カップメン、アイス、ドリンク、生活用品、文具用品などなど。

ふと思う。
コンビニがどんどん増えれば個人商店はどんどん潰れて行くだろうな。
品揃えも恐ろしいほど、世界と均一化されていくだろうな。
24時間365日というのっぺらぼう社会がもたらすもの。
それが近年、日本で起きている意味不明の動機なき衝動犯罪・変質犯罪の数々。
コンビニが中国にどんどん増えれば、いつか日本の今の社会のような、
犯罪でしか自己主張ができないような社会にきっとなっていくんだろうな。

便利の代償は重い。
それを先進国は伝えるべきではないのだろうか。

ちなみにコンビニは「好徳」という名前で、ファミマやローソンやセブンイレブンではなかった。
その他「快客」という名のコンビニと「ローソン」はあった。ローソンにはおでんまである。

買ったのは水は1.4元。キットカット3元。

<4>ガイドブックの情報を信じる方がバカ。あくまで目安に。
さて、今日は、さっさと大都会・上海を離れて水郷村へと行く予定。
今回、28、29、30、31の4日間でできれば4ヵ所水郷村を回りたいと思っているので、
スケジュールに余裕はない。
一番、観光地化されていなくて穴場(歩き方によれば)だが、行きにくい西塘(シータン)に行く。

上海から観光用の日帰りバスは出ているようだが、一般の路線バスはないようだ。
上海からタクシーをチャーターしたらかなりの距離なので、相当金額がはることは目に見えているので、
できるだけ、路線バスで近くまで行き、そこからタクシーで行くという作戦にする。
上海近郊の水郷村で最も観光地化されているという周庄行きのバスもある、
青浦まで上海からバスが出ているので、
そのバス停がガイドブックがあっているかどうか、確かめに行く。

これまで地球の歩き方に「迷い方」ガイドをされてしまった経験や、
ガイドブックを作る側に携わった経験から、いかに情報が腐るかということを目の当たりにしたので、
ガイドブックを目安にしつつも、信じず、現地で確認する癖がつくようになった。
これは単にガイドブックが悪いのではなく、今の時代が実に移り変わるのが早いという側面が大きい。

青浦行きバス乗り場と歩き方の地図で書いてある場所の確認を散歩がてらする。
あちこちで工事中の上海である。
変わっていてもおかしくはない。
ホテルから歩いて10分ほどのところ、地図とは違うが、
バスターミナルのようなものがあり、そこから青浦行きバスが出ている。
かなり頻繁にあるようなので安心した。

<5>ホテル選びは立地がすべて
さてさて、このようにホテルの近くに朝食を食える食堂があったり、
バスターミナルがあったりするのは、たまたまではなく、そのような場所を選んで予約したからだ。
有意義な旅行ができる大きなポイントの1つが、ホテルの立地にある。

バックパッカーは時になんでもかんでも「安いことがいいこと」と勘違いしてしまうが、
多少金を払ってでも、立地を重視した方が時間効率がよく、
かえって無駄な出費をしないですむことが多い。
特に今回のような短い旅行の場合には、ホテルの設備だの料金だのより、とかく立地が第1である。

目的地に行くべき青浦行きバス乗り場が近いことに加え、
すぐホテルの裏手に「美食街」があることもこのホテルを決めたポイントだった。
「美食街」とは、レストランが集まったレストラン・ストリートで、
場所によっては夜中相当遅くまでやっている店もある。
深夜につくことを考えて、夜でも多少明かりのある賑やかな場所を選んだわけだ。

取材時もホテルの立地で取材範囲が大きく左右されることがある。
本取材前の写真撮影時間も、いかに街の中心に近いかで、撮影できる時間が大きく変わってくる。
2002年、青島を取材した時には、ホテルが街の外れにあるため、
本取材前にそのような時間を取ることができず、あまりいい写真が撮れなかったことを覚えている。

立地重視のホテル選びが、効率良く動けるための最大のポイントなのである。

<6>贅沢マック
青浦行きのバス停を確認すると、淮海中路というわりに大きい通りを歩いてホテルに帰る。
ここには最近作られたばかりのデパート施設が多い。
その中にマクドナルドがあったので、一休憩していくことにする。

マクドナルドでコーヒー1杯が4.5元(60円)。
中国では贅沢である。
朝、一生懸命、皮にあんをつめる作業をしてできた、
パオズや湯豆腐が1人3元であることを考えると、
いかにマクドナルドがまだ高級であるかがわかる。
でもいずれ「経済成長」すれば、マクドナルドの値段は変わらず、
食堂の値段が値上がりすることで、価値バランスとしては日本と同じようになるのだろう。

ちなみに上島珈琲やスターバックスといったコーヒー専門店でコーヒーを飲めば、
だいたい1杯20元(300円)ぐらいする。これはマックの比ではなく、超贅沢な値段だ。

<7>両替
ホテルの帰りに両替をしておこうと、昨夜、タクシーから見えた中国銀行の場所に行ってみたが、
残念ながら閉まっていた。今日は日曜日だからか。
僕の中国旅行経験からすると、中国銀行は、あまり祭日や土日に関係なく、
いつでもやっているというイメージがあった。
年末年始だからだろうか。いやそんなことはない。
たまたまこの場所がやっていなかっただけだろう。

これから水郷村へ行くことを考えると、大都会・上海で両替しておくことに越したことはない。
とにかく旅行で物を言うのは現金だ。
まだまだ中国ではクレジットカードは使えない。
よほど高級ホテルか高級デパートでない限り、
クレジットカードはただのカードであり、日本円はただの紙切れに過ぎない。

泊まっているホテルに外貨レート表があったので両替してくれと頼んだが、
なぜか「できない」「できない」の一点張り。
中国人特有の面倒だから「できない」といっているだけじゃないかと、
手をかえ品をかえ、両替できないかとアピールしたができないの一点張りだった。

街を歩いていると、中国銀行は閉まっていたが、中国工商銀行はやっていた。
ここで外貨を両替できるとは到底思えなかったが、聞いてみると、あっさり両替してくれた。
中国銀行以外の銀行でも両替してくれるとははじめて知った事実だった。