中国水郷村旅行記・周庄→同里 かさこワールド

・4日目2:12/30(火)周庄→同里
<1>観光地化の宿命
周庄観光は予定より早くお昼前には見終えてしまった。
写真をたくさん撮りながらゆっくり見て歩いたつもりだったが、そもそも水郷村がそんなに大きくないこともあり、
また、お昼頃に、上海からの日帰り観光客が大挙して押し寄せてきたこともあって、
早々、次なる水郷村・同里(トンリー)に向うことにした。

確かに周庄は水郷村の代表格といえるだけあって、
他の水郷村よりも見所が多いし、広いし、景色もすばらしいのだが、
観光客が多く、また観光客慣れした店やレストランが多いせいか、
その前に訪れたような西塘のような、生活感が漂う趣きある水郷村という雰囲気が、
幾分、欠けているような気もしたこともあって、のんびりする感じではなかったこともある。

<2>「トイレに行け」の秘密
次なる目的地・同里に行くには、周庄からバスは出ていないはずなので、タクシーチャーターするしかなかったのだが、
地球の歩き方によると「周庄ー同里はモーターボートで30分」という記述があり、
どうせいくなら舟でいくのはおもしろいと思い、舟で行くことにしていた。

宿のおばちゃんにそのことを話すと、「私に任せておきなさい」と手配してくれるようだったので、
宿に戻ると、宿のおばちゃんの指示に従った。

宿に預けてあった荷物をまず取り出す。
たいがい、中国のホテルでは荷物を無料で預かってくれると思う。
「荷物を預けたい」という言葉はわからないが「行李(シンリー)=荷物」という言葉さえ覚えておけば、
預けることも、また、預かった荷物を出してもらうこともできる。

舟に乗る前、宿のおばちゃんが妻にやたらと「トイレに行っておきなさい」と執拗にいっていた。
実はわれわれ、宿に戻ってくると早速トイレを勝手に借りていたので、行っておく必要はなかったのだが、
宿のおばちゃんがきっと親切で言ってくれるのだと思い、もう一度、トイレに行っておくことにした。
なぜ宿のおばちゃんがしつこくトイレに行けといっていた意味が、あとでわかることになるのだが・・・

<3>同里行き舟の旅

宿のおばちゃんについて歩くこと10分ほど。
市場を抜けると、目の前に湖が広がっていて、小さな舟がいっぱいあったが、
正式な客を乗せる舟というわけでもなく、正式な舟乗り場があるわけでもなさそうだった。
宿のおばちゃんの知り合いの人の舟に乗せてもらうという感じだった。

値段は宿のおばちゃんいわく100元(1500円)だった。
まあ、客を乗せるための舟ではないので、それをチャーターするわけだから仕方ないだろう。
舟に乗り込み、とても親切だった宿のおばちゃんに手を振ると、同里に向けて、舟は湖に乗り出していった。

本当は乗客用でもなんでもない舟に乗って旅ができるといううれしさに、
はじめはかなりはしゃいでいて、あちこちにカメラを向けていた。
すれ違う舟が舟とミスマッチな乗客に奇異に目を向けていた。
水郷村内の水路の観光舟乗りではなく、水郷村から水郷村へ行く舟乗りは、
まさしく水郷村ならではの移動方法ではないかと楽しくて仕方がなかった。

水郷村外側の狭い水路を行き、
時折、大きな湖とも思える場所に出たり、
見える景色はさまざまだった。
水辺のせいか、かなり寒いが、舟には予想に反して、
人が2人入れるちょっとした小屋みたいなものがあり、
風よけにはなっていた。

「地球の迷い方」の30分で着くというのは、
いくらなんでも嘘だろう。
まあ1時間ぐらい時間を見ておけば充分だと思ったが、
甘かった。

写真:舟に乗り込んだちょっとした「小屋」。
実に狭いが、まあこのようなものがあるだけでも、
多少の寒さはしのげる。




舟はいけどもいけども次なる水郷村らしき場所に出ない。
それどころか1時間を過ぎると、狭い水路から大きな大河に出てしまい、
そこには大型貨物船は通るは、陸には工場地帯があるは、到底、近くに水郷村があるとは思えなかった。

ふと思った。ひょっとして、この舟は同里ではなく、蘇州に向っているのではないだろうか。
蘇州は同里よりまたさらにはるか向こうである。
だからこんなに時間がかかっているし、まったく水郷村らしからぬ景色が広がっているのではないか。

運転手は僕らの小屋のずっと背後にいて、確認することはできないし、
まして中国語しかわからないから、やりとりをしたことによって誤解が起きても困る。
もうなるようにしかならない。同里だろうが蘇州だろうが、着いた場所からまた何かで移動すればいいのだから。

舟に乗ること2時間あまり。
もう寒くて仕方がないし、しょんべんしたいし、
目的地とは違った場所に来てしまったかもしれないという思いもあって、
とにかく早く陸地にあがりたいという一心だった。

こんなに時間がかかるのは、
絶対、蘇州まで来てしまったんだと思っていた。
そりゃ、こんなに時間がかかるなら、
宿のおばちゃんが行く前に、しつこくトイレに行けというわけだ。



さらに舟旅は思わぬことになった。
2時間が過ぎたあたりだろうか。
大きな湖から狭い水路に入る入口に、
舟が2艘つかえてしまっていて、通ることができなかったのだ。
舟が懸命にどこうとするのだが、
からまって通ることができそうにない。
それをみたうちの舟の運転手が思わぬことをいった。
「ここで降りていきなさい」

写真:手前、右に写っているのが乗ってきた舟。
その舟の真ん中にある小屋のようなところに入れられた。
写真の左奥に写っているのが水路をふさいでしまっている舟。


狭い水路の前にわりに大きな建物がある。
そこの陸地に突如、降ろされることになった。
こんなところに降ろされて大丈夫なのか。
「ここは同里なのか?」と聞くと、「そうだ、同里だ」という。
蘇州ではないのか。まあどっちでもいい。
ちゃんとした舟着き場に降ろされることなく、
またここから何らかの手段でどこかに行かねばならなくなってしまった。

幸いなことに、その建物はホテルだった。
すぐさまホテルのトイレにかけこむと同時に、
ホテルのマネジャーにここはどこか確認する。
「同里だ」


やっぱり同里らしい。蘇州ではないようだ。
しかしなぜ周庄から同里まで舟で2時間もかかったのか。
またしても「地球の歩き方(迷い方)」の30分というとんでもない嘘情報に騙される。
2時間もかかるなら、タクシーチャーターした方がよかったのではないか・・・。
昼飯も食わず、同里の郊外にあるホテルに着いたのが2時半過ぎだった。

とにかくこの周りには何もない。
ホテルのマネージャーに同里の中心部への行き方を聞く。
3kmぐらいだということで、そんなに遠くはないらしい。
タクシーをつかまえるか、歩いていってしまうか。

ホテル敷地内を出るが、小さな道路でタクシーが通る気配はない。
ホテルの隣りに湖に浮かぶ島にあるお寺に行く船着場があった。
そこであらためて同里までどうやっていくかと聞くと、
ここから出ている、テーマパーク内を走るようなへんてこな車で、
同里中心部まで行ってくれるという。


助かった。わからぬ道を3km歩くのはきつい。
この乗り物で行ってくれるならこんなにありがたいことはない。
しかし本当にここは同里なのだろうか、
本当にこの乗り物で同里の中心部に行ってくれるのだろうか。
まだまだ不安はつきなかった。

しかしやっとこの乗り物に乗って10分ほどすると、
水郷村・同里の中心部にたどりついた。
やっぱりここは同里だったんだ。
舟も途中で降ろされたがあとほんのちょっとの距離だったことがわかる。
それにしても思わぬ長い旅でもうクタクタだったが、
こういう思わぬことがあるからこそ、旅は楽しいのだと思う。
パッケージツアーのような予定調和の旅では、
絶対に味わうことのできない醍醐味だ。
だから手間がかかっても、効率が悪くても、個人旅行をするのだと思う。

とりあえずホテルを探し、とりあえずめしをくって、同里観光はそれからだなと思う。