大理・周城 かさこワールド

ペー族の古い町並みが残る喜州から自転車で1時間ほどで、
次なる村、周城(ジョウチョン)に到着。
山の斜面沿いにつくられた村で、
村の入口には大きな大きな樹があり、
その下で青空市場が開かれていた。
ここもかなり古い家が残っていて
、山の斜面に沿ってびっしり建てられていた。

この市場もそうだが、
雲南省という海から遠く離れた標高2000mの町にもかかわらず、
必ずといっていいほど生きた魚を売る店がある。
それというのも、非常に細長くてでかい湖があるからだ。
この湖で獲れた魚が市場で売られている。
野菜や果物は実に豊富で、まるで体の一部になってしまったかのような、
民族衣装をまとった人たちが市場で物を売っている。

大樹のまわりに店が建ち並んでいるだけなので、そんなに店数としては多くない。
ぐるぐるそこを回りながら写真を撮っていると、1人の女が声をかけてきた。
藍染の客引きだ。


「地球の歩き方」によると、周城では藍染の客引きが多く、それについていけば、
藍染をつくっている家に案内してくれるので、
買う買わないは別にしてついていこうと書いてある。
なるほど、これはいい情報だ。ということでついていくことにした。

この手のみやげもの屋の客引きについていくかいかないかは、非常に見極めが難しい。
藍染の客引きならインドネシアのロンボク島でもあって、
知らず知らずついていったが民家を見れる機会にもなり、
また別に買わなくてもあきらめてくれてしつこくなく、
写真も撮れたので非常にいい機会だったのだが、
客引きにつれていかれたら何をされるかわからないというか、
法外な値段で買わないとなかば監禁されるリスクのある国もないことはない。
ただこの周城ではそのようなことはないようなので、
基本的に旅行中、相手から声を掛けてきた者には絶対についていかないという大原則を崩して、
敢えてついていくことにした。

民族衣装をまとっておらず40歳過ぎぐらいのおばちゃんに連れられ、
市場から離れてどんどんどんどん村の中へと入っていく。
しつこくない客引きなので、おばちゃんの先導を半ば無視しながら、
途中途中で写真を撮りながら藍染現場へと向かう。

市場から歩いて10分ほどで、民家に到着。
民家に入ると、お母さんなのだろうか、
おばあちゃんが民族衣装を身にまとい、
手動の機織り器で懸命に作っていた。
※ちなみに大理古城の中心街のみやげ物屋には自動機織り器があった。

私はもっぱらその姿に見とれていたのだが、
とにかくおばちゃんとしては藍染を売りたいので、
いっぱい布切れの入った籠を持ってきて、
「アイゾメヤスイ」と以前に覚えた日本語を発しながらも、
ひたすら値段を連呼していた。

バカ高いなら買うまいと思っていたが、
1枚の布切れが15元程度(約220円)。
この辺が日本人的というか、
やっぱり案内されちゃったから1枚ぐらいは買ってやらないとなと思い、
またさっさと1枚買うことでおばさんを黙らせて、
ゆっくり写真を撮りたいという思惑もあり、
一番安い布切れを買うことにした。







しかしながら1枚買うと今度は別の部屋に案内され、
ここにもどっさり布切れが。
もういらないといって、機を織るおばあちゃんを撮ることに。
客引きをしているところとはいえ、おばあちゃんは、
写真を撮られることが恥ずかしくもありちょっぴりうれしくもあるのか、
にこやかに笑ってくれて私は一安心した。
私が何枚も写真を撮り続けるので、
1枚でも多く売りたい客引きおばさんの方は終始苦笑い。

さて終わったと思って、この民家をあとにしようとすると、
「もう1軒、行こう」と客引きおばさんがいうのだ。
また買わないとうるさいかなと思いつつも、
また別の写真が撮れるのではという期待もこめて、
またおばさんの先導を半ば無視しながら、
写真を撮りつつ、ついていった。



市場まで戻ってきて、
今度は山側に向かって坂を上りはじめる。
そしてさらに奥の路地へと入っていく。
いやーおばさんに連れられてこなかったら、
ここまで路地には入ってこなかっただろうと思うと、感謝である。

そして着いたもう1軒の民家でまた藍染をすすめられる。
機を織るおばちゃんなどはこちらにいなかったので、
1枚買ったからもういらんとばかりに、ここを後にした。

坂を下って市場方面に戻ろうとすると、
この客引きおばさんがしきりに坂の上の方へ行けと指差している。
このおばさんはもちろん英語が話せるわけもなく、
日本語といえば「アイゾメ」と「ヤスイ」だけであるから、
中国語で何かしらいっている。
私はわかる中国語は数字ぐらいなもんだから、
何を言っているか言葉はわからないのだが、
一瞬、また別の藍染屋に行けということなのかと警戒していたが、
そうではないらしい。
客引きおばさんのゼスチャーからやっとわかった。
「坂の上のお寺があるからそこをついでに見ていけ」ということらしかった。
おばさんにまたまた感謝である。


そこからまたどんどん坂をのぼっていった。
のぼりきったところに小さいが立派なお寺があった。
お寺といってもそこはおじいちゃんたちの社交場のようになっていた。
南方の少数民族なので、仏教圏とはまた違った信仰なのかと思いきや、
漢民族の流入やチベット文化圏と近いせいなのか、
いわゆるお寺があり仏様がいるという日本人に馴染みのあるスタイル。
また早くから漢民族との交流もあったせいか、昔から漢字文化圏なのだそうだ。
雲南の少数民族ペー族といっても意外に日本文化との親近感があるのはこのためだろう。

ただ決定的に違うのは仏様の表情だ。
とにかく、日本で言ったら「不謹慎な」といわれそうな「ふざけた」というか「おどけた」というか、
やわらかな表情が多い。
別にこの寺に限ったことではなく、今回、お寺で見た仏様はみんなこんな感じだった。
神様が人間に近いというか、神様っぽくないというか。
一神教や厳格宗教ではありえない、この柔軟性のある神様というのが、
きっと基本的には争い事を好まず、柔軟で寛容な精神を育てているのではないか。
結局、欧米と中東の争いは、融通のきかない厳格な一神教、
すなわちキリスト教VSイスラム教という単純図式に置き換えられるけど、
このような神様の柔軟性がある国々には無縁なのかなという気がした。





そんなわけで周城は小さな村にもかかわらず、
また市場がそれほど大きなものではないにもかかわらず、
とっても楽しかった。
しかもそれはすべて無料。
中国では観光地化されたスポットより、
町を歩くだけの方がはるかに楽しいということを、
あらためて思い知らされた。

ここから大理古城まで自転車で約2時間ほど。
自転車で通う学校帰りの小学生と自転車競走をしながら、
農作業を営む人々の姿を眺めながら、
のんびりとしたサイクリングを楽しんだ。