石鐘山石窟〜大理郊外・石窟の旅 かさこワールド

大理旅行は大理近郊の村で開かれている、
市場巡りの旅をしていたわけだが、
1日ぐらい市場とはちょっと違った場所に行ってみようと思い、
ホテルの気のいいおやじさんに頼んで、タクシーをチャーターしてもらい、
大理から約110kmほど先にある、
剣川県にある石宝山風景区に行くことにした。
剣川県も大理ペー族自治州内にある場所で、
石窟があるのだが、これもペー族のものだという。
そんなわけで片道3時間かけて剣川に行くことにした。

チャーターを頼んだホテルのおやじさんも、
そしてチャーターしたタクシー運転手も、もちろん中国語しか話せない。
しかし身振り手振りとか筆談とか、
いろんなことを交えるといろいろとわかるから不思議なものである。
行き、タクシー運ちゃんが自分の頭を指し示した。
はじめ何を言っているかわからなかったのだが、
ゼスチャーや話し方から、意味がわかった。


剣川に近づきつつあり、高山地帯を通りながら、
標高が大理よりもさらに高くなって、標高2500mぐらいになっているから、
軽い高山病で頭が痛くないかと心配してくれているのだろうと察した。
私は大丈夫だというゼスチャーを返すと運転手はにっこり微笑んだ。
言葉はまったく通じないけど、そういうコミュニケーションが通じることの楽しさは、
旅の醍醐味の1つだよな。


というわけで大理からどんどん山岳地帯を通って山の中に入っていく。
アップダウンもかなりあり、途中には見事な棚田があった。
車窓から眺める景色がとても素晴らしい。
このためだけでもチャーターして遠出した甲斐があったなと思う。

ちなみにチャーター代は400元(6000円)。
市内で1日チャーターだったら200〜300元ぐらいで済むだろうが、
かなり遠いということでこの値段になった。
かなり高いので、バスを乗り継いでいけばよかったかなとも思ったが、
結果としてはチャーターしてよかった。
時間的にバスの乗り継ぎでは日帰りが難しいということだけでなく、
この石宝山風景区を観光するには車がないと観光できないのだ。

風景区という山岳一帯が観光地になっていて、その山の中に石窟や寺が点在している。
その風景区内を移動するには足(車)がないと観光することは不可能なのだ。
まあさまざまな交通手段があふれ、交通手段商売の発達している中国のことだから、
バスでこの風景区まで来て降ろされても、そこから何らかの手段はあるのだろうが、
観光客が多い場所ではないので、私が見る限り、風景区にタクシーや馬車などは見なかった。

風景区内の観光は入口の料金所で入場料たったの30元(450円)を払えば、
風景区内をすべて見ることができる。
大理にあるしょうもない公園の入場料が40元近くするのとは雲泥の違いだな。
遠くまで来た甲斐がある。

風景区に到着した時はもうお昼になっていたので、まず昼食をとった。
チャーターする際、ホテルのおっちゃんが「めしは運転手と一緒でいいか」というので、
ぜひ一緒にということになっていた。
中国ではこのようなことを気にするらしい。
1日チャーターした場合、運転手と食事を共にするか否かということを。
というのも中国東北地方取材に行った時も、ガイドから運転手も一緒でいいかみたいなことを聞かれた。

なんせこのような僻地に来ると言葉は通じないしメニューなどもない。
その際、運転手がいてくれると注文するのに大変助かるわけだ。
運転手に注文をまかせて3人で5品ぐらい食べて30元(450円)。とてもおいしかった。

<1>宝相寺
観光したのはまずこの宝相寺という場所。
山の中の階段を10分ほど登っていく。
歩き方の少ない情報の中で、
ここがおもしろそうだろうというヨミをして来たわけだけど、
寺ものは常に期待外れではないかという心配がつきまとう。
わざわざチャーターし時間もかけて来たものの、
この登り道を登った上に何の変哲もない寺しかなかったらどうしようかと。

しかししかし、ここは素晴らしいですよ!
寺というか石窟のように山の岩の壁にへばりついて、
でかい大仏と寺が合体している、
非常にユニークな寺だった。
ほんとこういう場所に来てよかったなあと思う。











寺にいる人々もとても親切だった。
この日は5月4日、反日デモが巻き起こった中国で、
反日デーともいえる五四運動を記念した日で、
広州だとか上海だとか北京だとかでは、
きっと厳戒態勢ではないかと思うほど、反日デモが心配されている日だ。
しかも朝のニュースではなぜか突然、
日本の真珠湾攻撃から敗戦に至るまでのドキュメンタリーをやっているような国だ。
実はそういうことを脳裏にあって、できるだけ都会を離れるべしと思い、
まず大理は大丈夫だろうと思ったが、
この日にわざわざ大理よりもさらに辺境のこの剣川を選んだ。

宝相寺にあるお堂で寺の人が親切に案内してくれる。
あんたら、どこの人かねというので、思わず正直に日本人といってしまう。
しかしお寺の人は「そうかそうか、
日本人か。わざわざこんなところまで良く来てくれた」と歓待してくれたのだ。
そんな具合でお寺で会う現地の人々はとても親切だった。
そして写真を撮らせてほしいといっても嫌がることもなかった。

壁にへばりついている大仏まで当然、
行けることができ、ここからの景色もなかなかだ。
下から見ているより恐さはない。
それにしても、中国の神様の仏像の、
このふざけた表情と派手な色使いがなんともいえない。神様が人間に近い。

<2>石鐘山石窟

宝相寺を観光し終えると、車に乗って石鐘山石窟へ。
石窟というからペー族のものではないのかなと思っていたが、
ガイドブックによるとペー族の石窟らしい。
ペー族は漢字も使うらしく、漢民族と似た習慣を多く持つらしい。

標高2500mに作れられた中国で最も高いところにある石窟群だという。
石窟入口の駐車場からは見事な風景が広がる。
まるでチベットで見た風景に似ているなと思う。

ただ岩壁に張り付いた石窟は意外に小さかった。
中国の石窟というとどうしてもバカデカイものを想像していたんだけど、
ここの仏像の大きさは人間ぐらいで、そんなに大きくはない。
ただ小さいが数が多く、ずらっと岩壁に彫られている。
こちらの仏像は宝相寺のようなふざけた表情や派手な色使いはなく、
きわめて素朴で真摯な表情の仏像が多かった。

それにしても、こんな山奥の険しい岩に、
精巧な仏像を彫ろうと思うモチベーションなるものは、
一体どういうものなのだろうかと、この手の遺跡を見るといつも不思議に思う。
それほどまでに神による精神的な支えというのが必要な時代だったのだろうか。


宝相寺と石鐘山石窟を観光し、大理に戻った。
剣川から大理までの風景がとても素晴らしく、このためだけにでも来てよかったなと、
行きと同じように思う。
なかなか剣川に足を伸ばす人は少ないのかなと思うけど、
もし時間があれば行ってみるとよいだろう。