プラハ郊外の町 かさこワールド 写真貸出


・ターボル行き
・予定外の楽しさ
チェコ人ガイドさんの要領のいい取材フォローのおかげで、
プラハでの取材が予定より1日早く終わり、1日自由になる時間ができた。
1日も早く終わったのは、店の取材アポイントが5日にわたって入っていたにもかかわらず、
ガイドさんがアポイントの順番を入れ替え、近い店からどんどんやっていったおかげだった。
もちろんそれでかえってうまくいかない場合もあり、
たとえば19時にアポが入っていたのを早めて16時ぐらいにいくと、
「19時にまた来てくれ」とかえって二度手間になるような場合もあったけど、
どんどんアポを前倒しにして近くの店を次々とつぶしていったおかげで、
こんなに早く終えることになったのだ。

せっかく1日、時間ができたので、プラハ郊外の町に行こうと思った。
ずっとプラハだけではチェコの首都しか見ないで終わってしまう。
首都と郊外の町ではまったく雰囲気が違っているだろうから、この機会にどこかに行こうと思った。
そして私は迷わずチェスキークルムロフという町に行くことにした。

この町は世界遺産になっていることでも知られ、とても美しい町並みとして知られている。
日本のパックツアーでもさえもチェスキークルムロフを訪れる場合が多い。
プラハを「世界で最も美しい町」と評したので、同じく「世界で最も美しい町のひとつ」といわれる、
チェスキークルムロフをぜひとも訪れたいと思った。

この町はプラハから南へ約150kmのところにあり、オーストリア国境に近い場所にある。
プラハから列車でもいけないことはないのだが、えらい時間がかかり、バスで行く方がうんと早い。
バスが何時に出るかをチェックするついでにバスチケットも買っておこうと、
プラハにあるフローレンツバスターミナルに行った。

バスでも3時間以上かかるので、できるだけ朝早いバスで行きたかったのだが、
一番早い8時30分のバスは「満席だ」と予想外の言葉を聞いた。
「満席?!そんなバカな」
他にバスはないのかというと「10時30分にある」という。
しかしその到着予定時刻は13時過ぎだ。
それではチェスキークルムロフに3〜4時間ぐらいしかいれないではないか。

まいったな。
まさか満席といわれるとは思わなかった。
私はなんとか行ける方法があるのではないかとガイドブックを念入りに調べた。
そしてある1つのことに気づいた。
そうだ。チェスキーブデェヨヴィッツェまでバスで行こう!

チェスキークルムロフの手前にチェスキーブデェヨヴィッツェという大きな町がある。
この町はバドワイザーのもととなったビールの生産地として有名なところなのだが、
この町からチェスキークルムロフまでのバスが頻繁に出ているとガイドブックには書いてある。
ならば、プラハから直接クルムロフまでいけなくとも、ブデェヨヴィッツェまで朝早いバスで行き、
そこでクルムロフ行きのバスに乗り換えれば早く行けるのではないかと思ったのだ。
早速バスターミナルに戻り、ブデェヨヴィツェ行きバスのチケットを購入しようと思ったのだが、
このチケットも朝一番のバスは満席だというのだ。

そんなバカな。
でもこれではどうやってもバスで行くことは難しいそうだなと思った。
でもなんとかしてクルムロフに行く方法はないかと、再びガイドブックを念入りに調べていた。

ガイドブックの情報からクルムロフに行く他の方法はあり得なかった。
そこで私は地図をじっくり見ることにした。
ブデェヨヴィッツェに行けなくても、どこか他の地方都市を経由して行く方法はないだろうかと考えてたのだ。
そこで目に付いたのがターボルという町だった。
プラハとブデェヨヴィッツェのちょうど中間あたりにあり、
ターボル自体も観光の町としてガイドブックに紹介している、比較的大きな町だった。
ここならバスでも列車でもプラハから何本もあるようだ。
ひとまず朝早く、プラハからターボルまで行き、
ターボルからブデェヨヴィツェまでバスで行き、
そしてブデェヨヴィツェからチェスキークルムロフまでバスで行く。
この方法なら乗り換えは面倒だが、時間を有効活用でき、
かなり早くにクルムロフに到着できるはずだ。
思いついたルートに興奮し、何かを出し抜いた気分で一人喜び、
早速、ターボルまでの列車の切符の手配に行ったのだった。

<2>
翌日、プラハを朝7時30分発の列車に乗り、9時にターボルに到着。
せっかくターボルを経由するのだから、そのまま通り過ぎるのはもったいないなと思い、
ブデェヨヴィツェのバスにすぐには乗らず、ちょっと観光してから行くことにした。

比較的大きな町ではないかと想像していたが、日曜の朝のせいか、町は閑散としていた。
しかしなんだかすごく興奮していて楽しかった。
取材という予定調和の「旅」から外れた、久々の旅気分が私をうれしくさせたのだろう。
それほど「取材」と「旅」は違う。

何よりうれしかったのは駅に着いた時のことかな。
地元の酔っ払いが2人、駅で飲んだくれていた。
なんだかツーリストではないエリアに来たなあという感じがしてとてもうれしかった。
実際、ツーリストらしき人物は私以外にはいなかった。

閑散とした町を少し寂しく思いながら、観光の中心地、旧市街へと歩くこと15分。
旧市街の広場に到着した。
教会があり、市庁舎があり、英雄の像があり、そして広場がある。
ヨーロッパの典型的な町並みが広がっていた。

広場から狭い路地道をたどっていくと、古い城に出る。
かなり老朽化の激しい城だし、城というか小さな宮殿というぐらいの規模に過ぎないんだけど、
ここの塔から見るターボルの町並みの景色は素晴らしかった。
こんな小さな町に来てよかったな。
そういうのが旅の楽しみなんだよなと思った。

城の塔からの眺めを楽しんだ後、再び旧市街の広場に戻ってくる。
教会にも必ずといっていいほど塔があり、
この町の教会にも塔があったので登ってみる。
城から眺める景色よりしょぼかったが、とにかく塔があったら登ってみて、
そこからの景色を眺めてみることは必ずするようにしている。
違った角度からみると、また違った町並みが見えるからだ。

その後、博物館の下にある地下道の見学に行く。
ガイドブックには「危険なので見学はツアーの必ず参加しよう」と書いてある。
何が「危険」なのか意味がわからなかったのだが、
入口では必ずガイドツアーに参加させられることになる。
チェコ人観光客が3人いたのでガイドはチェコ語でしゃべっている。
真っ暗な暗闇の地下道をいろいろ説明されてもそれほど興味があるほどでもない。
私はすっと後ずさりしてさっさと自分で見てしまおうと思ったのだが、
その様子に気づいたガイドさんが「危険だから私について見学してください」といわれてしまい、
仕方なく、ガイドツアーのちんたら見学につきあうことに。

しかし「危険」という意味が進むにつれて身にしみるほどわかった。
地下道は完全な迷路状態なのである。
何の目印もない地下道なのだが全長10km以上あるという。
こんな小さな町にそれだけ長い地下道があること自体、驚きなのだが、
ガイドさんいついていても恐いぐらい、あちこちに道があり、
到底、迷ったら出てこれないだろうなと思うような造りになっているのだ。
これはシャレにならない。マジで「危険」だよな。

地下道を出るともうすでに11時ちかかった。
これからチェスキークルムロフに行かなくてはならない。
ほんのちょっとターボルを見るだけのつもりが、なかなかいい町で思ったより長居してしまった。
私は足早にターボルに戻ったのだが、時刻表を見ると、今まさに、
ブデェヨヴィツェ行きのバスが行ったばかりだった。
ひょっとして、あそこにいるバスではと思い、いちかばちかと走ってみたが、
あっけなくバスは走り去ってしまった。
次のバスは1時間30分後だった。

ターボルに着いた時にちゃんとバスの時刻表を見るべきだったとか、
地下道であんなに時間を食わなければとかさんざん悔いたのだが、
まあそのおかげでターボルの地元の食堂のようなところに入れて、
チェコに来てはじめて英語が通じない場所に来て、久々に旅気分を満喫し、
メニューもろくにわからないから「グヤーシュ」を頼み、
なんとそれがプラハで頼む約半額の300円ぐらいで驚き、
味は素朴だったけど、異国に旅してるなあという感慨を味わえたので、
バスに遅れてしまったこともよしとしよう。

それともう1つ。
バスに遅れたが1時間半後のバスは、ブデェヨヴィツェ行きのバスではなく、
最終目的地であるチェスキークルムロフ行きのバスだった。
多分、プラハを10時30分に出たバスだ。
このバスに乗らず、先にここまで来たおかげで、1つ町を見れた。
うれしかった。

・ターボル写真