ポーランド取材裏話かさこワールド

ここでしか話せない?!ガイドブックには「書けない」「書く必要がない」お話を、ちょっと紹介しよう。

・大統領宮殿
今回のポーランド取材は、私の方から取材したい場所を、
現地の観光局にリクエストを出し、アポをとってもらったり、
ガイドさんやドライバーさんをつけてもらったわけだが、
互いに母国語ではない英語でやりとりしているせいか、
いや、はたまたニュアンスが伝わらないのか、妙なところに顔を出すことになった。

 
 ポーランドの首都ワルシャワには町中に大統領宮殿がある。
 といっても日本の皇居ほど立派なわけではなく、
 まあ、国会議事堂みたいな建物だ。
 現在大統領宮殿として使われているラジディブ宮殿は、
 昔その宮殿内で、世界的な名作曲家ショパンが演奏した部屋だかなんだかがあると、
 どっかの資料に書いてあったので、
 ワルシャワ生まれのショパンのゆかりの地をほとんど撮影する予定になってたから、
 そこもできれば撮影したいとリクエストを出していた。

 ところが、現地の観光局にその意図がうまく伝わらず、
 ポーランドに到着するなり、
 「大統領宮殿はアポが取れなかったが、なぜ取材する必要があるのか」
と問いただされる始末。
ショパン関連の部屋か何かがあるはずだといったのだが、
そんなものは宮殿にはないといっているという。

ま、仮に部屋があったとしても一般旅行客に公開されているわけではないので、
別に取材ができなくても支障はない。
だから別に無理だったらアポが取れなくても問題ないと伝えたのだが、
随分と熱心に大統領宮殿にアタックしてもらって、ついにアポがとれ、撮影ができることになった。

ところがやはり撮影にいったものの、そんな部屋はないという。
ただなんか知らないけれど、とりあえず日本から来た珍しい取材班を、
面倒ながらも、宮殿内部の部屋をちょっとだけ案内してくれた。

大統領宮殿内部に入れるというのはま、なんとなく得したような気分でうれしいのだが、
ま、そこに大統領がいて握手でもすれば別なんだろうけど、
そういうわけではないと、ただの豪勢な部屋ぐらいにしか見れず、
また、短い時間の間に取材しなければならない場所は山のようにあり、
少しでも無駄な時間を省きたいというのがずっと気に掛っていたので、
なんだかへんなことになったようなと思いつつ、
ガイドブックには使いようのない、大統領宮殿内部の部屋を瞬く間に撮影して、とんずらしたというわけだ。

「カメラマンの方、早いですね」って、そりゃそうなんだよね。
ショパンがなんかした部屋っていうならともかく、現在大統領が接客で使っている部屋とか、
いわれても、あんまり使いようがないような・・・
ま、そんなわけで、このつぶやき君でせっかく撮った大統領宮殿内部の写真を、ま、とりあえず、紹介しておこう。

・スタジアムバザール

 さてさて、大統領宮殿のように、入口にX線検査があり、銃を持った兵士がいるような、
 非常に防備がしっかりしているというより、非常に「物騒な」大統領宮殿の後は、
 これも私がリクエストしていない場所にいってくれるという。
 それがバザールだった。

 確かに私は市内のバザールを2ヶ所ほどリクエストしたのだが、
 そんなところよりもっといいバザールがあるからということで、
 観光局がきをきかせて取材で回ってくれることになった。
 なんでも東欧一の規模を誇る「スタジアム」バザールだという。
 なんだかおもしろそうだと思ったが、ガイドさんが、
 カメラを2台ぶらさげて、カメラバックに取材道具一式入ったリュックを持っている僕にぽつりという。

「ここはワルシャワで最も危険なところですから、荷物に気をつけてください」

おいおいなんだよ、それを早くいってくれよ・・・
確かに入口の前に立つとすごい人込み。
観光客が来るようなバザールでもなく、
とにかく東の方から流れ着いた人が、なんでもかんでも品物を持ってきて、
安けれりゃいいだろってな具合に日用雑貨品がずらずらおかれているバザールである。

 こりゃ、さすがの私も、カメラ2台をこのバザールの中でぶらさげ、
 荷物を2つ持ちながら、財布がすられないって自信はないなと思ったぐらい混雑していた。
 それでも、取材魂(といってもこんな危険なところは紹介できないな)というか、
 トラベルライター魂、いやいやそんな崇高な職業意識ではなく、
 バックパッカー魂というと語弊があるが、旅好き魂を発揮して、
 普通では行かないような、この最大規模のバザールとやらをしっかりとカメラに収めようと思い、
 ものすごい人込みの中を、自分のあちこちの荷物に気を使いながら、
 万が一、ガイドブックで使えそうな写真はポジフィルムの入っているカメラで、
 完全に自分の趣味用写真はデジタルでっと器用に使い分けながら撮影していた。



するとガイドさんの注意のごときか、バザールに入って5分もたたないうちに、
後から変なおやじがよってきてなんくせつけてきた。
「カメラ、あぶないじゃないか」

いや、あんたには関係ないでしょ。
なんで後から来たあんたにいわれなきゃあかんのか。
それよりもあんたに気をつけなければなと思いつつも、
確かにこの状態で「普通」に撮影するのはいろいろな意味で危ないと思い、
カメラのファインダーからのぞくことはあきらめ、
首から下げたまま、てきとーにシャッターを押す撮影スタイルに変更する。

 それにしてもバザールはすごい。
 でかいのと、がらくた日用品の宝庫。
 またの名を「ロシアンバザール」というらしいが、
 確かにロシアから来た人々が、一番近いヨーロッパの国、
 ポーランドに来て売りさばこうという感じに見える。

 僕はバザールが好きで、大概海外にいくとのぞくことが多いんだけど、
 アジアのようにムワっとした匂いが漂ってくるような食料品中心のバザールではなく、
 ここは日用品がずらりと並ぶバザールらしい。



なぜか女性物の下着屋が多いような傾向があるが、
まあたいがいの日用品はここに集結している感じだ。
そして道を歩いているとなぜここが「スタジアム」バザールというのかわかる。
どでかいスタジアムのまわりにぐるっと円状に広がっているバザールだからなのだ。

この混雑したバザール内をカメラ2台ぶらさけながら、30分以上は歩いたか。
とんだ場所につれていかれたなと思いつつ、
バザールを出てとりあえず荷物に異常がなかったことを確認すると、ほっとした次第であった。
ここは見てもそんなにおもしろくないし、やはり危険らしいので、行かないように。

・ワルシャワ大学

 ポーランド取材に行く2日前、
 取材コーディネートを頼んでいる日本のポーランド大使館から連絡が入った。
 「取材日程を1日早めることはできないか」
 なにか問題が発生したのだろうかと思うと、そうではなく、
 「実はワルシャワ大学の方が、かさこさんに入学式に参加してほしいということで、
 1日早めれば、間に合うのですが」

 ワルシャワ大学の入学式???
 純粋な仕事としての取材ではないけど、なんだかおもしろそうだし、
 こんな機会はないだろうから、ぜひにでもと思うが、
 さすがに2日前にもろもろの変更はできない。
 それに一体なんでワルシャワ大学が僕に入学式に参加して欲しいのか、
意図がわからなかったので、残念ながら遠慮することにした。
行けば、ワルシャワ大学の学位でもくれるのか?!

実は、ワルシャワ大学は取材リストに入っている。
別に大学を紹介したいわけではなく、大学内にワルシャワ生まれの音楽家、
ショパンが暮らしたアパートの建物があるからなのだ。
それにしても入学式とは・・・

しかし、実際にワルシャワ大学の取材の時になって、やっと意図がわかったような気がした。
肝心要のショパンの家取材はさっさと終わってしまうと、
「どうしても見て欲しいところがある」といって、
大学の広報に案内されたのは、新しくできた近代的な図書館だった。

確かにすばらしい。ただ図書館を僕に見せてくれても、
残念ながらガイドブックでは到底紹介できないし、
そもそも非常に短い日程の中でこなさなければならないこと、
調べること、写真を撮るものは山のようにあるのに・・・

きっと大学の広報の人は、日本の留学生にも来て欲しいというか、
観光ガイドブックということではなく、
日本のメディアが来たから自分の大学の一番素晴らしいところを見せてあげよう、
というそういう心からだったんだろうな。
だからきっと入学式にも参加してくれなんていったのだろう。

ということで、当然のことながら、ガイドブックになんか載せられないが、
行った手前、何も写真を撮らないというわけにはいかずに撮ってきた、
このすんばらしい新図書館の写真を紹介しよう。

それにしても、いろんな人がいて、いろんなボタンのかけちがいがあって、
思わぬ出会いや思わぬ出来事があって、
ま、それも1つの人生の楽しみなんだろうな。
本道だけが人生じゃない。
脇道も時には楽しまなくっちゃ・・・
といいつつ、大変厳しい短い日程の取材状況の中では、
残念ながらこの図書館案内を楽しめたとは言い難いのですが、
ま、取材が終わってしまってこうして振り返れば、それもまた1つの思い出。

・ポーランド・ほんのちょい写真館

 ま、ま、堅苦しい話ばかりに終始してきたんで、
 ま、ま、ここでちょっと休憩がてら、
 ほんのちょい写真館をお送りいたします。

 えっ、また子供ばかり?
 いやいや、そんなことはない。
 なんせ今回は一人でカメライターだったんで、
 とてもとても子供を撮る余裕なんてなかった。
 ま、でもそんな中でなかなかいい表情の子供を1枚。

 ま、あとは子供じゃないので、ご安心を。
 ちょっと息抜き程度にご覧くださいな。













写真左:ポーランドでも「ロードオブザリング」は人気なのか?
至るところでポスターを見掛けたわけではないが。
世界的に映画を見る目が低下してるのか?

写真中:これと似たようなポスターは結構みました。
合気道教室の案内ポスター。
オリエンタリズムかはたまたヤポニズムなのか。
結構ヨーロッパでこういうのって流行ってるみたいです。
文明の行き詰まりからなのか、未知なる世界への逃避傾向なのか、
自分たちとは違った価値観のカルチャーブームみたいなのって、 今、あちこちであるよな。

写真右:街の売店の雑誌販売。
雑誌氾濫状況は日本だけではないらしい。
この大インターネット時代に、もうくだらん雑誌は淘汰し、
いいものだけを残していった方がいいんじゃない?
って問いかけは、何も日本だけではないようだ。



写真左:分別ゴミ箱。
こうして海外で分別ゴミ箱を見たのははじめてのような気がする。
はじめ何かと思ったが、言われてみれば確かに納得。

写真右:ねこだな。
深い意味はない。ちなみに猫をみたのはこの1回きりだな。

・ガイドブックには書けない取材裏話4:ガイドさんクッキング/首都はつまらないの法則
ポーランド首都ワルシャワで4日間、お世話になったガイドさんは、
観光局から依頼されたフリーのおばさんガイドさんだった。
取材の3日目のことだったか。
15時頃一端取材を終え、次の取材が19時とちょっと時間が空いた時だった。
15時に終わったとはいえ昼も食べていなかったので、
とりあえずめしだべと思っていたら、ガイドさんが思わぬ申し出をした。
「昼食作ってあげるから、1時間後にうちに来なさい」

なんともありがたい申し出だなと思いつつ、いいんだろうかというためらいと、
さっさとめしくって合間の時間で調べることをやってしまわなければという思いがよぎったが、
ポーランド人の一般家庭にお邪魔できるなんて、ぜひのぞいてみたいという誘惑にかられ、
いや、またガイドさんがかなり強引に誘って断ることも到底できなかったので、
ガイドさんのお言葉に甘えることにした。

ガイドさんの家はワルシャワ中心部から徒歩10分程度の住宅街。アパートだな。
家の中に入って驚くことといえば天井が高いこと。
あとは靴のままであるということ。
それ以外、とりたてて日本と大きな違いがあるわけではない。

ガイドさんのこれまでのガイド経歴を聞きながら、
狭いキッチンで簡単な椅子とテーブルがあって、そこでクッキングしているところを見ながら待つ。
作ってくれたのはパスタ入りトマトスープにゆでたポテト、ハンバーグのようなもの。
「ポーランド料理」とはいうものの、調理の様子を見て強く感じたことがあった。
日本だろうがヨーロッパだろうがアメリカだろうが、
どこの主婦の調理法というか生活は変わらないんだよな。

フライパンやまな板に包丁、鍋を使い、じゃがいもを使い、たまごを使い、小麦粉を使い・・・
なんかこの時はじめて「人類みな兄弟」って言葉を思った。
国と国とで戦争するなんてこんなバカらしいことはない。
やっていることはどこだって同じ、同じ人間じゃないか。
異国での日常生活の1シーンを見せられたことが、アウシュヴィッツ強制収容所を見るより、
何かすごく心に印象に残ったのだった。

味もおいしかった。
ポーランド料理なんていわれて口に合わなかったらどうしよう。
ガイドさんの手前残すわけにもいかないしなんてことは杞憂に終わった。

ガイドさんは翌日も夜、家でご馳走を作ってくれた。
写真は撮らないでくれといわれたので、残念ながら写真はないので、
「ポーランド人の家」というイメージはわきにくいかもしれないが、
当たり前のことだけど同時代を生き、同じ「西欧」社会を生きる僕らからすれば、
そうたいした違いはないというのが率直な感想だ。

ガイドさんは英語が話せることから昔は日本人グループの観光客を案内したそうだが、
最近は日本語を話せるガイドさんが出てきたので、
日本人はこのところ担当していないからとてもうれしいといっていた。

それにしても聞けば驚きで、旦那さんの仕事の関係で、イラクにも住んでいたこともあるというし、
ヨーロッパ各地はもちろんアメリカなどは何度も旅行や仕事で訪れているらしかった。
まあこの人はガイドさんという仕事柄、あちこちの国に行っているのかもしれないけど、
やっぱり島国・極東ニッポンは、ヨーロッパ人の「国際」感覚にはかなわないよなと思う。
でも意外に「アジア」はほとんど行ってないらしく、
中国や日本にある種のオリエンタリズム的興味を持っているようだった。
僕に「日本にいくならどこが一番いいか教えてくれ」という話になり、
僕はワルシャワをガイドしてもらったお礼に、日本旅行の簡単な案内をすることにした。

<2>
日本を訪れるならどこがいいかいうので、やっぱり京都でしょうと答える。
「東京は?」と聞かれてう〜んとうなってしまう。
どっかいくとこあるかな・・・

そう思うとポーランドと同じだなと思う。
ワルシャワよりクラクフ、東京より京都。
やっぱり首都って旅行地としての魅力は薄いよな。

じゃあ東京から京都までどのぐらいかかるといわれ、
電車で片道$100ぐらいと答えると「エクスペンシブ」といわれる。
そうだよな。それに東京から時間もかかる。
次に東京は観光するにはよい場所かと聞かれて、そういわれてみると何もない。
浅草ぐらいか。でもすぐ終わってしまう。

やっぱり京都がいい。
あそこならいくらでも古いお寺がある。
そういわれていろいろとしゃべってみると、京都に行くなら何も東京に行く必要はない。
関西空港にダイレクトに飛んでしまった方がいい。
そうだそうだ、それに東京の空港はとっても離れていて不便だし。
東京の中心地まで行くのに1時間半はかかる。
だったら東京なんか行く必要がない。
大阪の方が物価は安いし・・・

なんて外国人に日本案内を聞かれていろいろ答えているうちに、
首都・東京に観光旅行で行く必要がないことに気づく。
あそこはビジネスで行く町であって観光で行く町は残っていない。
外国人が想像するオリエンタリズムなりジャポニズムは東京にはない。
そんなことをポーランドのガイドさんとの交流で気づかされる。

何事も自分のこと、自国のことを客観視するのは難しい。
だからこそ海外旅行に行って、外から日本を見て欲しいと思うんだな。