グイン・サーガの部屋 かさこワールド

・序:グイン・サーガとは?


全100巻をめざして1979年前からはじまった壮大なヒロイック・ファンタジー『グイン・サーガ』
魅力ある登場人物が織り成す運命の悪戯に、目が離せない。
世界はどうなってしまうのか?
謎の超戦士グインの存在の意味とは?
目まぐるしく展開していくストーリーに、先を待たずにはいられない。
空前のファンタジー小説。


すでに100巻を超え、世界最長小説が、なぜこんなにおもしろいのか。
それは登場するキャラクターの多様さと魅力にある。
どのキャラクターを主人公にしても話がかけるおもしろさ。
そして様々な個性あふれるキャラクターのもつれ合った人間関係のからみあいが実におもしろい。
主人公が5巻ぐらい登場しないこともあるという変わった小説なのだが、そこがおもしろさの秘訣なのだろう。

この本に吸い込まれる魅力のもう一つの原因は、先行きに起る出来事の予想度の適度さ。
どういうことかというと、次に起る出来事が、読者には半分は予想でき、半分は予想できないというバランスの良さがある。
完全に読者が次に起ることをわかってしまったらおもしろくないし、
かといって全く予想もつかない出来事が突拍子もなく起ると、強引さや現実味のなさを感じてしまう。
この本は常にそのバランスが良いから、先へ先へと引き込まれて読んでしまうのだろう。

この本を読み始めたきっかけは実に単純だった。
高校生の頃、本を読み始めて、おもしろい冒険小説『ロードス島戦記』に出会った。
しかし8巻で終わってしまい、あっという間に読む本がなくなってしまった。
そこで読む本がついえないような、長い連続物を読もうと思い、その当時33巻まで出ていた『グイン・サーガ』を手に取ったのだ。
これなら当分、本を探さなくても済むと。
ところがそのあまりにおもしろさに次々と読んでしまい、今では最新刊を待ちわびる日々。
あまりに待ちわびて今まで2回ぐらい読みなおしている。

グインの最新刊が出た時には、どんなに疲れていても寝る間を惜しんで読んでしまう。
こんな魔力を秘めた本に出会えたことが本当に幸せだと思いつつ、
毎月毎月最新刊を待ちわびる日々が続いている。
僕が読んだ本の中でもゆるぎない最高ランクの本だ。

ただ残念ながら2009年5月27日、126巻刊行時点で著者がお亡くなりになってしまった。



・既刊解説

第一部:辺境篇 1〜5巻

1巻:豹頭の戦士

謎の超戦士、豹頭のグインの出現。
そして物質転送の古代機械によって誤って敵国モンゴールに転送されたパロの双子の王子レムス・王女リンダと、グインとの出会い。
そして、紅の傭兵、イシュトヴァーン。
運命の4人が、辺境ノスフェラス行に向けて、モンゴールからの脱出を図る。
壮大な物語のすべてはここから始まった。

2巻:荒野の戦士

未開の砂漠、ノスフェラスへと逃れた4人は、モンゴールの公女将軍アムネリスの追討により、奥へ奥へと入っていく。
モンゴールとの戦い、そして砂漠地での謎の生物との戦いに明け暮れながら、
ノスフェラスの蛮族セム族を仲間にする。

3巻:ノスフェラスの戦い

部族間争いを続けるセム族を、モンゴールとの戦いのためにまとめあげるグイン。
執拗に未開の地へと足を踏み入れるモンゴールの真の目的とは、
ノスフェラスにある「瘴気の谷」の謎を解明し、そこにモンゴールの砦を築くことだった。
圧倒的な劣勢の中、セム族をまとめ、奇怪な生物を操り、モンゴールに奇襲をかけ、対等に戦うグイン。
今ここにノスフェラスの戦いが始まった。

4巻:ラゴンの虜囚

グインの統率により、セム族がモンゴール軍に対して優位にすすめているものの、
圧倒的な軍事力の差は否めない。
そこでグインが考えた奇策とは、ノスフェラスのもう一つの部族、
幻の巨人族ラゴンを援軍にすることだった。
あまりの奇策に反対に合うが、単身グインは幻の部族探しの旅へ。
その間、グインの計略により、イシュトヴァーンをモンゴール軍のスパイに送り込み、
火の罠を仕掛けて一部隊を全滅させる。
しかしグイン不在と圧倒的軍力の違いで、押されるセム族。
果たしてグインの幻の援軍は間に合うのか?

5巻:辺境の王者

ラゴンを従えたグイン。
しかしモンゴール軍はついに全精力をあげてセム族に侵攻。
グイン不在で危機一髪!その時、秘密の通路を通ってラゴンを連れたグインが登場。
一挙に形成逆転し、モンゴール軍のノスフェラス侵攻を総退却させた。
そしてグインは、ラゴンとセムを統べるノスフェラスの王となる。

グインサーガ83「嵐の獅子たち」
この本で何より驚いたのは、イシュトバーンを突如襲ったのが、なんとスカールだったということだ。
さすがにこれは予測もしなかった展開だった。

話の中心は、マルガのナリスに向って、リンダを連れたグイン率いるケイロニア軍と、
イシュトバーン率いるゴーラ軍が、先にマルガ入りするのを競いあうという展開。
そして闇の司祭グラチウスが、キタラノヤンダルゾックがイシュトバーンを狙うというところで終わる。

パロを舞台に、いよいよすべての主要登場人物が終結し、
複雑に絡み合った糸の中で、様々な争いをはじめようとしている。
まさしく「嵐の獅子たち」というタイトルにふさわしい内容だ。

第二部:陰謀篇 6〜10巻
6巻:アルゴスの黒太子
モンゴール軍を蹴散らしたグイン一行は、ノスフェラス脱出の辛苦の旅に出る。
モンゴールの奇襲を受け、占領したパロでは、
首都クリスタル公、アルド・ナリスが反逆の陰謀を巡らす。
しかしナリスはモンゴールに捕らえられてしまうが、
処刑されることなく、なんとモンゴールは、パロを平和的に占領するために、
ナリスとモンゴールの公女アムネリスの強制結婚を実行しようとしていた。
一方、パロの友好国、草原の騎馬民族国家アルゴスの黒太子スカールは、
パロ奪還に向けての出撃準備をしていた。
今後の物語に大きな影響を及ぼす重要人物、アルド・ナリスとスカールが登場する巻だ。

7巻:望郷の聖双生児
政略結婚の仕組んだモンゴールの公女将軍アムネリスは、
なんとアルド・ナリスに恋に落ちてしまうという不覚に陥ってしまう。
渦巻く陰謀の結婚がいかなる展開を迎えるのか?
一方ノスフェラスを脱出したグイン・リンダ・レムス・イシュトバーン・スニの一行は、
その後も艱難辛苦の大冒険を続け、必至にパロへの帰還をめざす。

8巻:クリスタルの陰謀
大冒険の脱出劇で、恋に落ちるリンダとイシュトバーン。
謎の悪霊の帰依で知恵をつけはじめたレムス。
クリスタルパレスでは恋に落ちるアムネリスをいいことに、
着々とパロ奪還の陰謀をめぐらすナリスやパロの残党たち。
そして草原の国アルゴスからは、黒太子スカールが、パロ奪還に向け兵を起こした。

9巻:紅蓮の島
パロを出奔したナリスの弟アルディーンことマリウス。
よりによって敵国モンゴールの公子に気に入られ、楽器を教えるのだが、
ナリスの陰謀の道具として使われ、公子暗殺の手助けをしてしまうことになる。
モンゴールに占領されたパロの奪還の陰謀は着々と進んでいた。
一方海をさまよい続けるグイン一行は謎の生物の住む島から脱出。
パロ友好国アグラ−ヤの船に助けられ、無事にアルゴスまで帰還することとなった。
いよいよパロの反撃がはじまる。

10巻:死の婚礼
パロ征服のためにモンゴールが仕組んだ陰謀の政略結婚式当日、
パロのクリスタル公ナリスが暗殺されるー
しかしそれはパロ側の陰謀だった。
モンゴール本国のミアイル公子の暗殺もあり、
アムネリス公女はモンゴールへと帰っていった手薄を狙い、生き返ったナリスがパロ奪還をめざす

第3部戦乱篇
11巻:草原の風雲児
パロの真珠をアルゴスに届けた最強の傭兵グインとイシュトバーンは、
パロ奪還に加わることなく、別れを告げ旅に出た。
一方パロではナリスがパロ奪還のため新たな陰謀をめぐらす。
モンゴールの隊長カースロンを寝返らせることに成功した。
一方、パロ奪還のために一足先にアルゴスを出陣した、
ベック公と黒太子スカールは、パロへの進路を誰も思いもつかぬ道を選んだ。

パロ奪還に向け、次々に動き出したプロローグ的位置ずけの本。

12巻:紅の密使
モンゴールに与するか、パロに与するか、沿海州の諸国会議が行われた。
各国がそれぞれの思惑を持ち、陰謀や私利私欲に満ちた政治家の欲望が渦巻く。
にもかかわらず会議は満場一致。
そこに何かの裏があるのではないかと、
ヴァラキアのカメロン提督は、各国の陰謀を見破るための暗躍する。
一方グインやリンダと分かれたイシュトバーンは、
沿海州でモンゴールの密書を手にする機会を得、
この密書をモンゴールではなく、パロのクリスタルに持っていこうと密使となる。

15歳でパロの国王となったレムスは、
アルゴスより遅ればせながら、パロ奪還のために出陣する。
しかしうまくいかない焦りがレムスを苛立たせる。
そんな折、パロにいるナリスは見事な活躍をし、余計焦りを招く。

13巻:クリスタルの反乱
モンゴールのパロ制圧軍内部の確執を利用し、
ナリスの側近リギアを愛人として送りこみ、モンゴールの将軍一人を寝返らせた。
そしてパロ奪還への反乱が起きる。
その先頭に立って指揮する人間は、なんと暗殺されたはずのナリスだった。
生き返ったナリスの姿に、パロは一挙に士気をあげ、
パロの都クリスタルをモンゴールから奪還に成功するのであった。

85巻:蜃気楼の彼方

イシュトバーンがヤンダルゾックの言いなりになってしまっているかどうか。
しかしそれを引き寄せたのは、その人間に悪を引き寄せる何らかの要因があるから・・・。
この点は非常に興味深い。
架空話でキタイの竜王が、人間に取りつき操っているという、それだけ考えれば単なる作り話だが、
それを転用して考えれば今の社会の人間心理にも十分あてはまる。

「魔が差す」という言葉があるし、「隙を付かれる」ということもあるが、
誰だったそういう危険性をはらんでいる中で、なぜその人がそんな行動をしてしまったのか。
やっぱり最終的にはそれを引き寄せ、かつそれを実行に移してしまう素養がもとからあったということなのだ。

<ストーリー>
ナリスとグインが出会えるか・・・
この二人が出会うことで、歴史は大きく変わろうとしている。
今の社会で起こっている事象を、全く違う方法で解き明かせる二人ーそれがナリスとグインだ。

ナリスは膨大な書物と伝聞による情報を論理的に組みたて類推し、今の事象を解き明かそうとし、
グインは自らのさまざまな体験によって、今の事象を解き明かせる。
しかしなかなかこの二人は出会えない。またしても・・・
85巻。主要な登場人物たちは、さまざまな人間関係を織りなし、絡みあってきた。
レムス・リンダ・ナリス・ヴァレリウス・イシュトバーン・スカール・アムネリス・グイン・・・
しかしグインとナリスだけが未だに一度も出会っていないのだ。

そして今回、イシュトバーンの奇襲によって見事に打ち砕かれる。
そして、グイン・イシュトバーン・リンダという3人の邂逅が実現する。
年月を経て全く違う立場や地位を背負って。

それにしてもグインの余裕たっぷりの会見は見ていておもしろい。
「戦うまでさ」という最もありえない選択肢をすっと広げてみせるあたり、さすがといえる。

91巻:魔宮の攻防
ナリス死すの大きなクライマック後、
ちょっとストーリーが停滞気味だったグインサーガだが、この巻になって一挙に話が進んでいった。
そのせいか、どの巻でも発売日と同時にすぐ一気に読んでしまうんだけど、今回はほんとその一気ぶりは早かったな。
ま、100巻にも及ぶ超大作ファンタジーだから、
巻によって停滞気味の内容があっても、それは全体の話から必要なのであって、
致し方がないとわかってはいるんだけど、
この巻のように、主人公のグインが出てきて(この小説は主人公が出てこない巻も相当ある)、
かつ、トントン拍子に進んで一挙に謎に迫っていくような、
話の核心にせまっていくような展開は実におもしろかった。

これまでのグインサーガで、大きく2つに分けるとすると、
ヤンダルゾック出現以前の、いわゆる「人間」世界でのストーリー展開と、
ヤンダルゾック出現後の、人間対人間を超えたストーリー展開になるのだが、
最近の「アモン」の存在というのは、ちょっと戸惑いがあった。
ちょっとわかりにくい、存在しえない超悪的存在みたいな形で、
これまで出てきたキャラクターの質とは一線を画してしまっていて、
それが大黒魔道師グラチウスの子分のユリウス程度の存在ならいいんだけど、
グインと対決するまでの主要存在になってしまうことは、非常に違和感を覚えていた。

しかしこの巻でちょっとそういったことが払拭されることにもなり、
またこの超長編小説の核となるべき世界の謎テーマにとって、
重要な位置づけであることが明確になったので、
やっとこの得体の知れぬ「アモン」の出現を理解できるようになった。

とまあそんなわけで、この巻は、クリスタル突入に随分時間がかかるに違いない、
という予測とは裏腹に、一挙にクリスタルの核心部までに至る、実に小気味のよい巻だった。
こうなってくると次回巻がますます楽しみだな。
2ヶ月後が待ち遠しい。

92巻:復活の朝
実に劇的な変化が表れた、ターニングポイントとなる巻。
圧倒的魔生物ともいうべきアモンとのとりあえずの決着と、
おぞましい魔宮と化したクリスタルパレスの解放。
やっと実際上の現実政治的人間的駆け引き的ストーリーに戻りつつあり、
幾分、外伝のようなファンタジーミステリアスティックな、
このところの本編が終わってほっとしている。

ただアモンとの決着は終わってはおらず、
それは作者も「外伝で」といっているので、ぜひそちらでやってほしいなと思う。
外伝と本編をうまく使い分けることで、
物語のトーンの違うものを読者も読みやすくなると思う。

前半では古代機械をめぐるアモンとの駆け引きに出るグインなのだが、
もしこれが100巻で、自身の命をかけた脅し文句であったならば、
「ひょっとしてこんな形でグインは終わってしまうのか?!」
とはらはらした可能性はあるのだが、まだ92巻だし、
ここで終わるはずもなく、グイン自身の命をかけた駆け引きは、
少々興ざめぎみではあった(ここで死ぬわけがないと読者がわかってしまうので)。

ただし、超魔生物アモンを出した意義が、グインの「人間観」の言葉によって、
やっと達せられるわけで、作者自身もあとがきで、
「この言葉をいうために書いてきたということが1つ達成できた」みたいな意味では、
ある1つの到達点を迎えたといえよう。

さてさてこれからどうなるのか。
魔宮と化したパロ内戦に一応の決着はついて、物語に一段落してしまったわけだが、
ますます佳境に入るであろう次なる物語の展開に期待したい。

外伝18巻:消えた女官〜マルガ離宮殺人事件
あとがきを読むと、作者のこの作品の意図がわかる。
フィクショナルな世界を舞台にある種のノンフィクショナルな物語を、
新たに構築してみたい。
グインサーガの世界を舞台に、本編とは違った物語を書いていきたいという、
気持ちはわからないでもない。

ただ、ちょっと今回のは、あまりおもしろくなかったかな。
まず事件が起きるまで、舞台説明、時代状況説明に半分を費やしている。
いつ事件が起こるんだろうかと読んでも読んでも、
当時の単調な日常説明ばかりで、はっきりいってうんざりする。
「事件簿」を書くからには、ど〜んとはじめ事件を起こして、
そこから解決への道程を探ることに文章を費やさねば、
ミステリーのおもしろさはない。

その解決への道程があまりに短い。
リギア登場でいよいよ事件の真相探りがはじまったと思いきや、
もう1巻終わってしまいそうなページ数になっていて、
「ひょっとして次巻に持ち越すのか?」と思いきや、
あっという間に解決。
事件解決のトリックがあまりなく、
どちらかというと人間関係の感情から起きた事件で、
もっと奥深いトリックがあるのかと思っていたのでちょっと残念だった。

アルド・ナリス王子の「事件簿1」と書いているので、
今後もこのようなナリス探偵の事件簿を書いていきたいのだろうけど、
シャーロックホームズのようなあっと驚く事件と解決に慣れ親しんだ僕からすると、
このホームズの真似事がごときナリス事件簿はもうこれ以上やってほしくはないなという感じ。

よっぽど本編のナリスの陰謀の方がすごいわけで、
ムリに本編とは関係ない事件を起こしてその解決のための探偵ミステリーを書くと、
わざとらしさが出てしまうし、あっと驚くようなことが少ない。

早く本編が読みたいと思う読者はいっぱいいる。
外伝も本編から多少それてはいるが、でも本編とはまったく関係ないわけではない、
そういった物語なら大歓迎だが、
いよいよクライマックスに向けておもしろくなってきた本編を差し置いて、
ナリスの事件簿はちょっと違うんじゃないかなという気がする。

本編がすべて終わった上でこのような外伝が出る分には楽しめるが、
今の段階ではちょっと読者は楽しめないんじゃないかと思う。

グイン外伝19:初恋
アルドナリスがフェリシアとの情事を重ねていた頃の話。
全体的には「早く本編が読みたいのに、なにを今更こんな話を」という感じで、
まったくの外伝で本編とは関係のない、しかも色恋沙汰の話なんだけど、
最後の最後、アルドナリスの言葉で、
「ああ、これが言いたかったからこの物語を書いたんだな」とすっきりした。

アルドナリスというカリスマに惚れる人々。
しかし彼にとっては、それは本当の愛ではなく、
単なる自己満足にしか過ぎないという考えに至る。

確かにそうかもしれないな。
彼のカリスマゆえの孤独と冷酷といわれるそのキャラクターを形作った、
思春期の頃のほんと1つのエピソード。

93巻:熱砂の放浪者
クリスタルパレスから再びノスフェラスへ。
しかしその水先案内人が黒魔道師・グラチウスで、
結構その2人のコンビが描かれるのだが、これは神秘的な旅にはなり得ないでしょうと、
ずっと思い続けて、やっと最後になって出るべき人物、賢者ロカンドラスが出てくる。
その意味で、前半はかなり退屈感がある。

94巻:永遠への飛翔
これまで謎だった星船とグインの素性がいっきに明らかになる、
大きく物語が進展する巻なんだんだけど、すごくおもしろいとは思えないのは、
やはりアモンという得体の知れない生物の登場と、
星船に乗って宇宙にまで行ってしまう、
そのあまりに次元の違うかけ離れた舞台とキャラクターによるものだと思う。
早くアモンは終わらせてほしいし、中原が舞台の物語へと戻ってほしいな。

95巻:ドールの子
過渡期的巻。グインは出てこない。
パロ情勢、ゴーラ情勢、ケイロニア情勢の近況報告的な巻で、
ストーリーはドラマティックに動かない。
早く続きが読みたい。その下地となるつなぎ的位置。

96巻:豹頭王の行方
パロとケイロニアの会談が行われ、そこにグラチウスが現れ、
グインがその後、どうなったかという驚くべき事実と、
グル・ヌー崩壊後のノスフェラスの変化が語られる、
また新たしい何かが起こる胎動を予感させる巻。
久々にリンダが出てきて、英明さをみせるのも心地よく、
それに大絶賛するハゾスの気持ちがよくわかる。
そしてまた相も変わらず、飄々とした態度ながら、
パロの宰相としてだけではなく、グラチウスとまともにわたりあえる皮肉な応酬を浴びせられる、
ヴァレリウスというキャラクターのよさがひかる巻でもある。

97巻:ノスフェラスへの道
グインサーガには大きく分けて2種類のパターンがある。
渦中の出来事がどんどん進んでいく本編らしき巻と、
出来事と出来事の狭間でその整理をする巻。
今回は後者なので、ちょっと一休みというか、
次の出来事が起こるプロローグ的巻だった。

タイトルは第四話の「ノスフェラスへの道」だが、
多分それは次巻にふさわしいタイトルで、
この巻のタイトルとしてふさわしいのは第三話の「カルラアの戦士」だろう。
表紙カバーの絵も「カルラアの戦士」であるマリウスなのだから。

この巻がマリウスが主人公の巻といってもいいだろう。
定住民と遊牧民、剣で戦う男と芸術で戦う男・・・
とにかく一般常識とはまるで逆のマリウスの生き方に、
周囲の人々は戸惑い、振り回されるのだが、
それも1つの価値観としての生き方であるということが彼の歌によってわかり、
互いに許し認め合うというのがこの巻のメインストーリーだ。

99巻:ルードの恩讐

なんだか最近、一休みの巻が多い。
この巻も著者があとがきで書いているほど、読者はスピード感を感じていないと思う。
シリーズなのでこのような巻があるのは致し方ないが、
最近はちょっと長い倦怠期に入ってしまったような感じ。
今回は結局、イシュトヴァーンとの昔話で終わってしまったような気がする。
ルードの森のグールの住処に招かれる話も、そんなにすごさはないし。
いよいよ今度で100巻。
これまでのめまぐるしいスピード感を早く取り戻してほしいな。