ニンビン〜ベトナム旅行2004 かさこワールド

1:ベトナムの“桂林”・ニンビンへ
今回、どうしてもベトナムに行きたくて、
ベトナムを旅行の目的地に選んだわけではなく、
時期と日程と料金を考慮し、
どこでもいいから少しでも行きたいところをということで、
GWにもかかわらず往復6万円という安いハノイ行きを決めた。

さてさて、ハノイに行って行くところがあるのだろうかと、
正式決定する前にガイドブックを見漁る。
やっぱり地球の歩き方がダントツで詳しい。
他は私のような個人旅行者には到底情報がなさすぎる。
欧米人バックパッカーのバイブルともいうべき、
ロンリープラネットの日本語版が昨年から発売になり、
ベトナムも出ていたので購入した。
電話帳のような厚さでとても持ち運べる代物ではないけど、
少しでも情報を仕入れて、私が行っておもしろそうな場所探しに役立てる。

ベトナムの首都ハノイにこれといったみたいものはなかった。
世界遺産のハロン湾はあまりたいしたことがないらしい。
ベトナム中部の古都フエまで行くには距離があり過ぎるし、時間がなさ過ぎる。
さてどうしたもんかと思って、
ぱらぱら地球の歩き方をめくって見つけたのが、
ハノイからバスで2時間30分(実際には1時間30分)で行けるニンビンだった。

ニンビンには歩き方でもたったの4Pしか割いていないが、
写真のない欄外紹介名所なども見合わさると、
ここを拠点に随分楽しい旅ができそうだと思った。
のどかな田園地帯、「桂林」のごとくボート下りを楽しめる、
ハノイより古い古都がある、それらをニンビンを拠点に「自転車」で回れる!

自転車が決めてだった。
自転車で回れば、車やバス、列車のような、「点と点の旅」ではなく、「線の旅」ができる。
見にいくべき観光名所地も大事なのだが、それ以上にそこに至るまでの道程を見たいというのが、
今回の私の主眼であった。
そうすれば、ホテルやレストランのある「町」でもなく、観光客慣れした「観光地」でもない、
町と観光地の間にある生活の場の人たちを写真に撮ることができるのではないかと思ったからだ。

台湾乗り継ぎ前後泊のため、ベトナムには実質4日半しかない。
ニンビンに3日のんびり費やせるなと思い、ハノイ行きのチケットを購入することにした。

2:思わぬ誤算で旅が広がる
ところがこの「自転車」旅行は脆くも崩れ去る。
「雨」である。
ベトナムは5月から雨季だということは知っていた。
雨対策のために折りたたみ傘だけでなく、
一度も着たことがない家にあるカッパまで用意して、
雨でも自転車で回る気まんまんだったんだけど、
やっぱり現地に着いてそりゃ厳しいなと思い知らされる。

結果的に雨に降られたのはベトナムについた初日だけで、
しかもハノイで1時間程度、ニンビンでも1時間程度だったが、
今にもざあっと雨が振り出しそうな曇り空が続く中、
自転車は愚か、写真を撮ることすら難しいということを、
雨の中、ニンビンの町を徘徊して思い知らされ、
「こりゃ、参ったなあ」と実に困っていた。






それで予定を急遽、変更して、
ニンビンは車をチャーターして、
ざっと1日で見て回ってしまうことにした。
ニンビンに1日はちょっと名残惜しかったけど、
結果的に、ニンビン以外に、ハイフォンやハロン湾など、
ニンビンとはまた違った雰囲気を持つ町に行け、
とても楽しい旅行になった。

旅は、臨機応変が大切。
計画通りに進めようなんて思っちゃいけない。










写真左:一本道を入れば田舎町だが、国道1号線沿いはわりに車通りが多い騒がしいところだった。
ホテルはこのメイン通り沿いに多いのだが、うるさいことを想定し、
一本道を入ったところに泊まったおかげで大変静かでよかった。

写真右:カメラを持ってあてどなく町をうろうろすれば、路上にたむろする子供たちとたびたび遭遇する。
彼らに話しかけ、写真を撮ってもいいかと聞くと、
まるで宇宙人を見るかのような騒ぎでもう大変だ。
「ニャット!ニャット!(日本人だ。日本人だ)」と私がベトナム語で説明すると、
「ニャット!!!」と納得したようで、また騒ぎがでかくなる。
そんなこともまた、旅の楽しい思い出の1つ。

旅の仕方コラム1:現地のベストシーズンで場所決めを
GW、盆休み、連休、正月などと、休日が取れる時期が限定されている日本人。
休みが取れるときに、行きたい場所を旅先に選ぶというスタイルが多いと思うが、
その時期にその場所がどんなシーズンかということは要チェックである。

たとえば雨季のネパール、夏休みに行ったが、
見事にヒマラヤ山脈は見れず、のどかな湖畔のリゾート地ポカラも、
何もできない退屈な町に早変わりしてしまい、
「ヒマラーヤは見えない」というかさこ青春三部作の、
非常に内省的でマイナス思考な旅になってしまいかねない。
まあそんな旅もまたそれなりに意味はあるんだけど、
ヒマラヤを見たいなら絶対に雨季は避けるべきだ。

たとえば中欧なんかでも驚くべきことに10月ぐらいですっかり冬になってしまう。
昨年、ポーランド取材に駆けこみで9月末に行ったけど、
1週間遅かったら雪が降って取材にならなかったらしい。

たとえばラスベガス。
夏休みに行くのはまあはっきりいってバカである。
別にカジノだけやるならずっとホテル内にいるからいいんだけど、
砂漠のラスベガスは夏は40度を越える灼熱地獄になり、
ホテル内で遊ぶならいいが、町はとても歩けたもんじゃあない。
でもそんなことを気にせず、夏休みだからという理由だけで、
ラスベガスに行ったりなんかするととんでもない目に合うというわけである。

ちなみにエジプトにちょうどラマダーン(断食月)の時にいってしまったのだが、
あれもまた非常に微妙だったな。
別に特に旅行に支障があったわけじゃないんだけど、
こういう非常に特別な「行事」が行われている時は、
いい意味でも悪い意味でも町の雰囲気がまったく変わってしまうから気をつけたい。
日暮れになると、飯が食えるから、みんな待ち構えてるんですよ。
夕方はだから非常に殺気立っていて、日暮れになって食えると、狂気の沙汰になる。
昼間は誰も概してやるきがない。

あと、中国も気をつけたい。
あの国は日本以上にクレイジーだ。
10月の国慶節と1〜2月の旧正月時は、日本の年末年始みたいに長い国民的休みになり、
国民大移動がはじまる。
この時期、中国の国内移動は大変な混雑でもうすごいことになるらしい。
観光名所地や駅なども人であふれかえり、観光どころではなくなるので、
このような時期は避けるのがベターだ。

旅の仕方コラム2:http://www.yahoo.com/を使うべし!
なんか現地の最新情報を知りたいのなら、
ヤフージャパンではなくヤフー・アメリカhttp://www.yahoo.com/を使うのがよろし。
もちろん英語のみになっちゃうけど、きちんとした情報量からすると、
ヤフージャパンの比にならない。

たとえば今回、雨季が気になったので、ハノイの天気を調べたんだけど、
ヤフージャパンよりヤフーアメリカの方が調べられる国や都市が多い。
また、現地の為替レートを調べておけるんだなと思って、
ベトナム・ドンと日本円レートをヤフージャパンで調べようと思ったが、
本当に主要な通貨しか調べられないんだけど、
ヤフー・アメリカなら、ベトナムドン=日本円為替レートといった調べ方でも、簡単にすぐわかる。

英語サイトだから難しそうとか思うかもしれないけど、
調べたい情報なんて大概、数字とか時間とか料金だったりして、
英語がわからなくても数字がわかれば大丈夫だから、
使えない情報量の少ないヤフージャパンより、海外情報ならヤフーアメリカの方がはるかによい。

3:ニンビン川下りの「謎」を解く
ニンビンの町から約8kmほどいったところに、
タムコックという場所があり、
ここが桂林的「奇山」景色の広がる景勝地を川下りできるところ。
ニンビン観光のメインイベント地である。

アジアで川下りといった観光のためのボートに乗る時は、
大概どこでも、あってないような値段の、
果てしない交渉をしなくてはならないのが、
それは面倒でもあり楽しくもあるのだが、
ここではそういった「トラブル」を防止するためか、
小舟に乗る手前に大型バスでも停まれる、
どでかい駐車場を併設した観光所で、
「タムコック観光料」として4万ドン(約280円)と、
小舟代1万5000ドン(約105円)を支払う。

小舟代より観光料の方が高いとはどないなことだと思いながら、
この料金を支払えば交渉いらずで、
小舟に乗って川下りを楽しめるというわけだ。



さてさて舟に乗る。本当に実に小さな舟である。
私と妻の2人に対して、漕ぎ手がおばさん2人が乗り込んできたことにまず驚く。
「2人も漕ぎ手がいるんかいな」
この時点で私は、このような舟にたった2人といえども、乗せて漕ぐのは大変な重労働だから、
きっと漕ぎ手が2人なんだろうと勝手に思ったが、
実は実はそんなあまっちょろい感傷的な理由ではないことが、
帰りに明白になるが、それはまた後のお話。

小舟に乗ると川沿いがコンクリートの手すりのようなものでしっかり整備されていて、
「もしこれがずっと続くようであればとんだ期待外れだな」と思ったが、
それはすぐ終わって、瞬く間に緑の自然だけの世界になる。



何にもないといえばない。
中国の桂林のような「奇山」が連なるほどの特殊な風景というわけではないが、
のんびりとした、緑に囲まれた静かな山間の小川をゆく、という趣向はなかなかのものである。
「あー、旅に来てよかったなー」と思える瞬間だ。
このような本当の「癒し」を求めて旅しにきてるんだよな。



アジアのこのような場所でたくましいと思うのは、
このような観光地にも生活臭がするということ。
観光客を乗せた舟もたまにすれちがうが、そうではない舟の方がはるかに多い。
また、舟にいっぱいジュースやら果物やらを積んで舟づたいに売ろうとする小舟と、
ところどころですれ違うのもなかなかおもしろい。
「買ってくれ」といわれても、何もこんなところでわざわざ買う必要はないよなと思って通り過ぎる。
ただベトナムだけあってか、このような物売りがあまりしつこくないので、
楽しめて通り過ぎて終われるからいい。



はじめのうちは漕ぎ手のおばちゃんがほとんど話せない英語とベトナム語を交えて、
とにかくいろいろと話しかけてくれて、なかなかおもしろかった。
片道1時間、往復2時間もの舟旅で、
行った時には観光客が非常に少なく、静寂の緑の小川をゆくのんびりとした旅だった。
途中、この岩山の洞窟のようなところを通っていく箇所もあり、自然の趣向で楽しませてくれる。



1時間ほどすると、それ以上、小川を行くことができなくなっていて、
ちょっとした休憩所とあやしげな寺があるところで一端降り、ここで降り返す。

さてさてここからが、
川下りメインイベントのはじまりはじまりである。
行きと同じように写真を撮りながら、
山間の静けさに耳を澄ませながら、
舟旅を楽しんでいるところ、
よく漕ぎ手を見てみると、帰りは1人しか漕いでいなくって、
1人が私らの隣に座って、何やら椅子をもぞもぞやっている。

帰りは漕ぎ手のおばさんと「お話タイム」なのかと思いきや、
椅子から取り出したものにびっくりである。
でるは、でるは、
テーブルクロスやコースターのようなおみやげグッズである。

これをさあ、帰りは買ってくれ!
わたしらの本職は漕ぎ手じゃなくって、売り手なのよ!!
てなわけだ。

妻と2人で旅をしているおかげで、
このようなみやげ売りのターゲットは女性に焦点を合わせて、
「マダム、マダム」ととにかく妻に、
いろいろなものを見せては買ってくれるよう勧める。
当事者にならない私は、
ニヤニヤしながらその様子を写真におさめる。
しかし作戦を立てなくてはならない。
無視するのが一番いいんだろうが、なんせこの狭い小舟空間で無視のしようもない。
1つでも買ってしまえば騒がなくなるかなと思うが、
1つ買ってしまったが最後、「この人たちは買ってくれる」と思われ、
際限なくセールスを続けられるのではないか。

そこで私たちの作戦としては、
いろいろ見せてもらいながら、値段交渉しながら、
引っ張るだけ引っ張って、
到着地点間際で1つか2つ買ってあげるということにする。

このような「店ではない場所」のおみやげは、
決まって品が悪く値段が高いと思うのだが、
まあ見てみると、なかなか良さそうなものではあり、
しょうもないみやげ品ではないので、
ついつい興味をそそられてしまう。
大きいもので3ドル、小さいもので2ドルという。



ベトナムはアメリカドルが通用する。
実に皮肉なもので、社会主義国で、
かつてはアメリカのベトナム戦争のせいでボロボロにされた国なのに、日常生活にドルが通用する
(つまりは自国通貨より米ドルが信頼されている)というのはなんともいえないが、
実は往々にしてこのような現実が世界各地に巻き起こっていて、
旧ソ連邦に与した社会主義国ほど、アメリカドル信仰が篤いのが現実である。

まあそれはともかく、ドルで値段をいわれると非常に困る。
最低単位の1ドルが100円と非常に高価だからだ。
ベトナムドンで交渉できれば1万ドンが70円の世界だから、
2枚で1万5000ドンにしてとか、細かい値段交渉ができるのだが、
ドルだと2枚で1.5ドルにしてとかいう端数交渉はしないから、
値段が1ドル(100円)単位であがっていってしまう。
まあとにかく布の種類がいろいろあって、結局、妻がみやげ用に、
刺繍の入った巾着袋3つ(1つ3ドル)と小さなコースター2つ(1つ2ドル)を10ドルで買うことにした。



意外と値引きをしなくて交渉にならなかったし、
もともと1つ3ドルというのがベトナムの物価水準から考えればえらい高いような気もしたけど、
きっと観光所の舟代として1万5000ドン(約105円)では到底やってられないのだろうから、
その代わりこの舟上でのみやげ売りがおいしい稼ぎということなんだろうなということで、
まあ、仕方がないかなとあまったるい思いで購入した。

10ドルといってもドルをそんなに持ってきているわけではないので、ドンで払う。
1ドル=1万5000〜6000ドンでホテルなんかも換算しているようだったので、
10ドルということで15万ドン払ったのだが、
意外にも漕ぎ手のおばさんはちっともうれしそうな表情はしていなかった。
売れて金を受け取ると大抵はおおはしゃぎして喜ぶものだが、
われわれは値切りすぎたのか、それともレート換算1万5000が気に食わなかったのか。
まあ私らはこれで何か買ったという義務感から解放されていた。

買ってちょっとすると来た場所に戻ってきた。
そこで思わぬダメオシがある。
「チップをくれ」というのだ。

まいったなー、バックパッカー時代だったら、
ここでうんとごねたりうんと騒いだりするんだろうなと思いつつ、
このような短い旅に来ている時は、
時間があって金のないバックパッカーと違い、
金より時間を大切にしたいという心理が働くために、
面倒だから払ってしまえ、どうせ日本円にしたらたいした額じゃないし、
それにどうもみやげ代はかなり不服だったみたいだしと思い、
一体チップにいくら払ったらいいんだろうと思いつつ、
2人分ということで2万ドン(約140円)を渡すことにして、
あっ、しまったと思った。
彼女らに2人分という概念がないのだ。

1人に2万ドン札を渡してしまったので、もう1人にも2万ドン渡すことにする。
するとみやげ代を払った時はものすごく不服そうな顔をしていた漕ぎ手が、
急に笑顔に変わって「バーイ」とにこやかに手をふってくれる。
なんだかなーと思いつつ、まあ楽しい旅をありがとうという意味を込めて、
また最後にうまいことしてやられたなと思いながら、
「タンビエット!」とべトナム語でさようならといってわかれた。





4:ニンビンのみどころ
のぞかな田園地帯が広がるニンビンは、ハノイより前に都があったという意外な場所である。
川下りだけじゃなく、古都の面影を偲ぶことができるのも、この町の大きな魅力の1つだ。

・タイヴィー祠






・古都ホアルー




・ビッグドン