西部大開発  かさこワールド  チベット目次

チベット文化圏の入り口の1つ、
標高2200mの西寧(シーニン)は今、
中国の高度成長に伴い、大開発ラッシュである。
このように古い建物をぶっ壊して、
30階建てぐらいのビルやマンションを建設している。
(無論、この光景は中国全土で行われていると考えていい。
実際に私が目にした場所は、北京、上海、青島、大連など、
大都市は数年前から町を歩くとこんな光景ばかりだ)












写真左:現在使われている掘っ立て小屋のような西寧空港。/写真右:その隣に新たに建設された西寧新空港。

西寧の中心部だけに開発はとどまらない。
写真左は、西寧とチベットタウン・湟中のちょうど中間地点にある、
(どちらの町からも10kmぐらいか)
だだっぴろい野原に建設されている新しい町である。
看板のキャッチコピーは「西寧に上海風情的町完成!」。
写真に見える多分7階建てのマンションが、
ざっと見でおよそ50棟ぐらいは建っている。
まだ誰も入居していないようだが。

中国でビルを建てる場合、7階までならエレベーター設置が免除されるので、
新しいビルは大抵7階で、
それ以上はどうせエレベーターをつけなくてはならなくなるので、
30階とか40階とかになる。

旧来の町と町との間に造られている新興ニュータウンは、
上海旅行の際にも何度も見た光景だ。
上海と水郷村の間にこのような大規模開発が何ヵ所もあった。


上の写真は西寧から5時間ほど行ったところにあるチベットタウン同仁である。
同仁もこうして小さな町をどんどん拡張し、道路を作り、
ビルやマンションを作り、近代化が急ピッチに進んでいる。
中国開発の嵐は、上海のような大都市から、西寧のような中都市へ、
さらにはその郊外へ、そして同仁のような小さな町にもどんどん波及している。
これが中国の高度成長の今である。

チベット旅行を終えた後、私は仕事の出張で、
東海道新幹線、山陽新幹線、上越新幹線、長野新幹線に乗った。
その際、地方都市の中心部はどこに行っても、
「東京」とあまり造りが変わらない光景だった。
マクドナルドがありコンビニがあり武富士があり吉野家があり、
駅ビルがあり、オフィスビルがあり、マンションがある。

利便性と機能性を考えた場合、
このような造りにならざるを得ないのは致し方がないが、
旅行に行きたいとかこの場所に泊まりたいとは絶対に思わない。

ふと、それと同じことが中国でも起きていると考えると、
これはえらいことだよな。
私が中国を何度も訪れるのは、その地方、その省によって、
気候も文化も人も違うからであるけど、
それが数年後、日本と同じようになるかもしれない。

そう考えるとヨーロッパはすごいかもしれない。
ヨーロッパの中心都市は100年前の町並みがきちんと残されていて、
その中にホテルやコンビニやマックが入っていたりする。
だから町に行っても旅行気分になれるし、
それぞれの町に独自性がある。

旅行者のために町があるわけではないし、
生活者にとっては便利な機能的な町の方がいいに決まっているかもしれない。
でもなんだかそれはとても残念なことだ。
どんな地方都市にいってもどんな奥地にいっても、
現れる町の風景が同じではな・・・。

旅行者としては中国の開発で道路が舗装されたりして、
便利になる恩恵もすごく受けるが、
なんだかとても残念な気がしてならないけど、
まあそれは旅行者というアウトサイダーの人間の勝手な言い分なのかもしれない。

ただ思うのは、風景が変わると、それによって人の生活スタイルも文化も、
そして心も変わるということ。
それを忘れてほしくないなと思う。