犬島(銅精錬所廃墟)

かさこワールド



















































































































岡山県の犬島に行ってきました!
犬島といっても犬が多い島という意味でもなく、
犬撮影が目的でもなく、銅の精錬所廃墟跡が目的で訪れました。

廃墟といってもここも軍艦島方式で、
きちんと廃墟が管理されていて、
ツアー参加という形で廃墟となった遺産をめぐるもの。
合法で廃墟を見れる安心感ある場所のせいか、
岡山からもかなり遠いにもかかわらず、
若いカップルや老夫婦などもツアーに参加してました。

さてこの廃墟。およそ100年前のもの。
1909年、銅の精錬所として犬島に建設され、
周囲3.6kmという小さな島に、
最盛期にはなんと3000人が暮らしたが、
銅価格の暴落によりわずか10年で操業停止になったという。
現在の人口はわずか50人ほど。
海水浴場やキャンプ場もあるが、
寂れていて観光客がわんさか来る感じはまったくない。
小さな集落を歩いていても大半が廃屋だった。

実は私にはもう1つ目的があり、
犬島に猫が多いということで猫も期待していた。
しかし私はほとんど猫を見ることができなかった。
廃屋が多い、人が少ない集落に、猫は住み着かないのではないか。

先日も松山から島を2つ訪れたが、
猫が多かったのは活気ある島。
もう1つ訪れた島はやはり廃屋ばかりで、
活気がなく、そこにはほとんど猫がいなかった。

しかしこの犬島にも再生のきざしがある。
軍艦島と同じく、廃墟を観光地化したのである。
それが2008年4月のこと。
打ち捨てられた廃墟をきちんと管理し、
ツアーガイドのもと案内をする方式にした。

それだけでは単なる廃墟ツアーだが、
それともう1つ工夫を行った。
この廃墟の周囲に建築アート施設を作ったのである。
近代化遺産+建築+アート+環境という4つのコンセプトで、
アートプロジェクトと題し、
廃墟ツアーだけでなく不思議な建築&アートも見れるというものだ。
そのせいか若いカップルなどもツアーに参加していたものと思われる。

ただこの工夫は微妙だ。
私のような人間からしたら、
せっかくの貴重な廃墟=産業遺産に、
有名なんだか知らないけど、
いらん建築家や芸術家がその遺産を台無しにするような、
いらん施設をよりによって廃墟の前になんか作るなと。
十分、廃墟だけで美しいし、
廃墟には日本の近代化を問う歴史に教訓があるのだから、
余計なものはいらんと。

余計なことをと思っていたが、
実際に見学するとそれなりにおもしろいものではあった。
なぜか三島由紀夫をテーマにしていて、
それをアートで表すというのは非常に斬新だし、
近代化を考えるという意味でもリンクしていて、
なかなかよかったはよかった。

単なる廃墟だけでは廃墟好きぐらいしか集まらないから、
本当の意味で寂れた島が再生するには、
このような仕掛けは必要なのかもしれない。
また飽きられないようにまだまだ箱物を建設する予定らしい。

そのおかげでアクセスが不便にもかかわらず、
ツアー客が大変多く、事前ネット予約制だが、
わりと休日は早くうまってしまうみたい。

ただそれは島の再生とは関係ないのでは、との疑問もある。
この施設だけは観光客でにぎわうかもしれないが、
島の集落への経済効果や雇用創出という意味では、
ほとんど波及効果はなさそうという感じはした。

まあ別に島の再生が主眼ではなく、
廃墟をうまく活用し、建築やアートの良さを知らしめる、
というのが目的であればそれはそれで立派な取り組みだとは思うし、
そもそも島の再生なんて、
誰がやったってそう簡単にできるものではないから、
こうして何か実際にアクションを行い、
観光客を一定程度集客しているだけでもすごいことだとは思う。

というわけで日本全国の島々を訪れている私としては、
今後この犬島がどうなるのか、非常に興味深いところではある。
このアート施設までもがバブル遺産のごとく、
廃墟となってしまうオチもあるかもしれないし。

いずれにせよこの精錬所廃墟はすごい!
このためだけに来た甲斐はありました。
これで猫がいれば、それこそ島の民宿に1泊しよう、
なんてことにもなるんだけど、残念ながら猫は少なく・・・。

というわけで長くはなりましたが、
非常におもしろい島なので、
機会があったらぜひ訪れてみるとよいと思います。


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