哀愁の町、ブダペシュト かさこワールド 写真貸出


・ハンガリーのスープはうまい!/グヤーシュの違い/炭酸水
ハンガリーではハンガリー料理を、チェコではチェコ料理を主に食べていたわけだが、
まあそのほとんどが肉料理だ。
両者とも海のない国ゆえそれは致し方がないこと。
特に物珍しい料理とか特に美味しいとかそういう特徴的な料理はそんなになく、
逆にいえば普通に日本人も食べられる料理だ。

そんな中でとびっきりおいしくて
記憶に残っているのがハンガリーのスープだ。
ハンガリー料理といえばグヤーシュを思い浮かべることも多いと思うが、
グヤーシュは代表的なスープの1つ。
簡単にいえばビーフシチュースープみたいなもの。
私も旅行者もバカの1つ覚えのごとく
「グヤーシュ」という単語が脳裏にやきついているから、
ツーリスト向けのレストランでは、ランチのセットメニューで、
グヤーシュとパプリカチキンのセットで1500ft(約800円)といった具合に、
とにかくグヤーシュが出てくる。
グヤーシュなくしてハンガリー料理なし、
といっていいほどグヤーシュは欠かせない。





しかししかし、グヤーシュよりもっと日本人の口の合いそうで、
実においしいスープが、魚のスープ、ハラースレーだ。
魚のダシがじっくり煮込んだスープに染み込み、
これが実にうまいんだな。
グヤーシュばかりに気を取られず、
ぜひこのハラースレーをお試しいただきたい。
ちなみにブダペシュトで旅行者が目につくようなレストランには、
大抵英語メニューがあるので、
「ハラースレー」というより「フィッシュスープ」と頼んだ方がよく伝わる。

ブダペシュト滞在中は日中はかなり暑く、
半袖でちょうどいいぐらいの気候だったが、
このおいしいスープ文化に慣れ親しむと、暑かろうがなんだろうが、
とにかくメインを食べる前にスープが欲しくなる。
必ずグヤーシュかハラースレーを頼んで、
熱いスープをぐぐっと飲み干すこの快感がたまらない。

現地在住の方に聞くところによると、このスープ依存症的症状は、
ハンガリー人でもそうなのだそうだ。
ハンガリー人にとってスープのない食事は信じがたいとのことらしい。
ハンガリーが外国を旅行してまずレストランで、
「スープはないのか」と聞くらしい。
いかにハンガリーでスープが根付いているかを物語るものであり、
またそれだけにいかにスープがうまいかがわかる。
ちなみにレストラン取材で厨房をのぞく機会があったが、
グヤーシュはたっぷり作り置きしてあるので、
スープを注文するとほとんどの場合、すぐ出てくるだろう。
元共産圏のたらたらとしたスタッフの遅さは差し引いて「すぐ」に。

思えば、昨年同時期に取材したポーランドも実にスープがおいしかったのを覚えている。
町の「造り」ではなく雰囲気もポーランドとハンガリーはよく似ている。

・チェコとハンガリーにおけるグヤーシュの違い
さてさてこのスープ文化に慣れた私がチェコにいってスープを頼もうとすると、
これがほとんどない。
チェコにもグヤーシュがあるのだが、ハンガリーのようにスープとしての料理ではなく、
パンにつけて食べるビーフシチュー的なメイン料理としてのグヤーシュなのだ。
チェコといえばビールというぐらい、ビールが食事に欠かせないのだが、
ビールを出す居酒屋兼レストランのビアホールでは、
ビールとグヤーシュという組み合わせがゴールデンコンビらしい。

チェコ人に聞くところによると、ビールとグヤーシュ、グヤーシュとビール。
これは必ずセットだ、とのことだ。
ハンガリーのスープ文化に慣れた私にはスープがなくって、
しかもシチューのごときさらっとしたものがメインになってしまうと、
食った気がしないし、あとでお腹が空いてしまうのだが、
だからこそチェコ料理にはビールが欠かせないのだと思う。


私はビールを飲んでも1杯しか飲まないが、彼らはグヤーシュやつまみ的料理で、
ビールを何杯も飲むことによってお腹を膨らましているのだろう。
ビールでお腹が膨らむから本来スープ料理がパンをつけてメインになってしまうのだろうし、
逆に料理が乏しいからビールでお腹いっぱいにしているのかもしれないし、
いずれにせよこの国では食事はビール中心に考えられている。
そのぐらいビールがあちこちで飲め、食事に欠かせない当たり前の存在になっている。
ちなみにビールは100〜150円ぐらい。
思うに、ミネラルウォーターを頼むのとたいして変わらない値段だ。

誰かが非常に興味深いことをいっていたのを思い出す。
「ワイン文化のあるところは料理がおいしく、ビール文化のあるところは料理が発展しない」。
確かにそうかもしれない。
ワインはビールと違ってがぶ飲みするものでもないし、
(最近の日本人は居酒屋でビール感覚でワインを飲むが)
ワインは料理に合わせて何を飲むかが決まってくるところからしても、
ワインは料理を引きたてる補助的な役割に過ぎないのだが、
これがビールとなると、ビールを飲んでしまうと料理の方が補助的な役割に回ってしまう。
ハンガリーとチェコの料理の違いはこの辺にあるのかもしれない。
ハンガリーはワイン文化、チェコはビール文化だ。

・炭酸入りミネラルウォーターがくせになる!
欧米を旅した方ならご存知かと思うが、欧米では、
ミネラルウォーターといえば炭酸入りが普通だ。
いってみれば炭酸水なわけだが、はじめてヨーロッパを旅した時、
レストランでミネラルウォーターを注文するとこのくそまずい、
世にも信じられない奇妙な飲み物が出てきた時のことを苦々しく思い出す。
以来、ヨーロッパやアメリカではミネラルウォーターを注文する時には、
必ず「without gas」=ガスなしと一言添えなくては悲劇的な思いをすることになる。

ところが今年6月のサンフランシスコ取材でもそうだし、
今回のチェコ・ハンガリー取材でもそうなのだが、
ガス入りが普通に感じられるようになり、しまいには炭酸入りでないと飲む気がしないようになったのだ。
あれほどまずいと感じた炭酸入りミネラルウォーターだが慣れると断然こっちが飲みたくなる。

ビールやコーラを飲むのと同じ感覚で炭酸水があってもおかしくはないという論理が、
やっと飲み込めた。
ビールと違ってアルコールがないから酔わないし、
コーラと違って甘さがないので料理と一緒に食べれるし、
特に暑い季節はこの炭酸入りがビールを飲むのと同じように、のどごしの快感があるのだ。
というわけで、「あんなくそまずいものを」と思っていた炭酸水が、おいしく飲めるようになった。
もちろん、日本で飲む気はしないが、
郷に入れば郷に従えのごとく、ヨーロッパやアメリカでは炭酸水を飲むことをおすすめする。

ちなみにガスなしミネラルウォーターが妙にまずいことも炭酸水をすすめる所以である。
あっちのガスなしミネラルウォーターはなんかまずい水道水のごとくまずい傾向がある。