哀愁の町、ブダペシュト かさこワールド


・世界遺産ホッロークーの生きる道
ブダペシュトからバスで2時間ほどのところにある小さな村、ホッロークー。
ずっと首都での取材をしている身にとって、取材とはいえ郊外の町にいけるのは、いい気分転換になる。
バスに揺られてハンガリーののどかな平原を眺めながらホッロークーをめざした。

ホッロークーは予想通りほんとに小さな村だった。
特に観光客が見て回る通りは600mぐらいなのと、特にみどころがあるわけではなく、
昔ながらの伝統家屋が残っている村を眺めるだけなので、あっという間に見終えてしまう。
それでもとても雰囲気がよくって何もしなくてものんびりできるようなところなら、
ひょっとしたら泊まってみてもいいんじゃないかと思ったが、泊まるのはちょっと厳しいな。
みんな日帰り観光客で、数少ないレストランや店も16時ぐらいになると店じまいしてしまうし。
でも逆にいうと、日帰りでちょこっと訪れるにはとてもいいスポットであることには間違いない。

世界遺産に登録した以上、この村は観光で生きるしかないだろう。
というのも登録すると景観保護の観点からいろいろと規制があるらしく、
勝手に家を建て替えしたりとか景観にそぐわない建物とかは建てられないらしい。
そのせいか実に残念なことなのだが、観光客が昼間は大挙して押し寄せる、
わずか600mの通りにある伝統様式の家屋のいくつかが、空き家になっていることだ。
空き家になれば家はいたむだろうし、第一、村に来ても活気がなくなってしまう。
レストランはうまいこと観光客相手に商売して成り立っていそうだったが、
みやげもの店は苦戦しているようだった。
世界遺産で観光客が押し寄せるこの家屋が空き家なんて実にもったいないことだな。
何かうまいこと活用してほしい。
そうすると村の雰囲気のさみしさもなくなるだろうに。

あと非常にもったいないなと思うのが民族衣装を着た女性たちの扱いである。
伝統的な家屋とともにユニークな伝統的な民族衣装に身をつつむ女性たちもまた大きな観光の魅力なのだが、
それを着ている女性5人は完全に団体旅行用になってしまっているのだ。
午前中は日本人団体ツアーのために踊りを披露。
昼は外国人団体ツアーのために踊りを披露。
15時過ぎ、別の外国人団体ツアーのために踊りを披露。
屋外のレストランでやっているので遠目から個人の旅行者も見ることができるのだが、
完全に団体専用の見世物になってしまっている。
観光地として生き残る戦略として私は間違っているのではないかと思う。

せっかくのこの女性たち。ここに来た観光客は誰だって見たいと思うだろうから、
団体ツアーのためだけに接待するんじゃなく、村のどこかで定期的に踊りをやればいいのだ。
たとえば毎日11時と15時と18時に村の教会前で民族衣装を着た女性たちのダンスショーを開催、
といったような決め事にしておけば、観光客はそれ目当てに多く来ると思うし、
個人だろうが団体だろうがみんな見れると思うんだよね。
それこそ空き家をうまく活用し、宿泊客を増やし、できるだけ長い時間、この村に滞在してもらうよう、
この女性たちの踊りのショーを夜も開催したっていい。
もちろん有料だっていいと思う。
そうすることによって観光客はこの村の魅力に多く触れることができ満足するだろうし、
「ホッロークーはとてもよかったよ」と口コミで観光客も増えるだろうし、
世界遺産の村として生き残っていけると思うんだよね。

別に金儲けが目的じゃない、観光ビジネスなんてどうだっていい、というなら、
世界遺産なんかに登録しなきゃいいわけだ。
でもそうではなく、世界遺産というブランドを取得したからには、
なんでもかんでもビジネスで観光地化しすぎてしまってもその本来の魅力がなくなってしまっては意味がないだろうけど、
今のままの非常に中途半端な観光地ではなく、観光地として観光客を多く呼び寄せ、
来た人も村人も満足できるような村つくりをしていく必要があるんじゃないかなと思った。

せっかくいい村なのにもったいないなと思ったのでこのような苦言をあえて呈す。

ことのついでにいっておくと、バスを降りた村の入口が非常にまずかった。
村の入口にあるカフェには昼間っから地元の若者なのか10人ぐらいがたむろして、
酒をあおって大騒ぎしていて、とてもツーリストが入れる雰囲気ではなく、
村の入口にある村の地図が描かれている看板のすぐそばには、
物乞い的な酔っ払いじじいがいて、通り過ぎる観光客をかなり強引に呼び止めたあげく、
とっても下手くそな笛をふいて金をせびるという行為をしている。
ほんとせっかくいい村なんだからもったいないよなと思う。
こんなことでマイナスイメージを与えていたとしたら。

ちなみにこの村のすぐそばの丘には城跡があり、そこから眺める景色はとっても素晴らしい。
ところがこの城跡は私がいった折、「ファイト・マスター」とかいうオランダの映画撮影隊が来ていて、
観光客を完全にシャットアウトしていた。
私は強引に城跡のそばまで山道を通っていったので城を見ることはできたが、
中には入れず、城からの素晴らしい景色も眺めることができなかった。
映画撮影隊の警備員にあの手この手を使ってとにかく5分でいいからガイドブックのために、
写真を撮らせてくれといったがまったくだめだった。
何度か別の山道を通って撮影隊からばれないように城に侵入しようと思ったがだめだった。
そんなこともまた、上記のようなことと重なってしまうと、村のイメージは不幸な結果になってしまうよな。