シャーロックホームズ・グラナダTV制作
全23巻ビデオ・41作品一覧
 かさこワールド

イギリスで制作されたビデオによるホームズ作品を一挙紹介。
小説の60事件中、42事件を映像化した名作。日本ではNHKで時々放映されているものだ。
シャーロックホームズ役にはまさしくはまり役のジェレミー・ブレッドが演じている。
作品中の名言を中心に、事件の概要を紹介しよう。


第1巻
まだらの紐
悪のはびこる世だが、頭のいい男が悪事に頭を使えばまさに最悪だ
謎の死を遂げた姉の部屋に移った途端、姉と同じ「口笛のような音」を聞いた妹がホームズに相談。
両者に共通する結婚前の時期と母の莫大な遺産から、義父に疑いをかける。
姉が殺されたのは完全な密室かつ死因も不明。「まだらの紐」という謎のメッセージを残して。
現場調査から、隣の部屋につながる不自然な通風孔と、鳴らない呼び鈴の紐、そして固定されたベットから、事件を解明する。
劇的な結末もみものだ。

まがった男
俺の恐ろしい形相が、奴の良心を撃ちぬいたのだ
夫人と口論となった末に死んだ大佐の死。嫌疑がかかる夫人は意識不明。
現場での足跡と大佐の人柄、そして当日様子のおかしくなった原因と思われる奉仕活動での出来事から、一挙に謎の男に辿り着く。
そこには30年前のインド連隊時代での恋と、そして裏切りの物語があった。
憎しみがどんな辛酸な目にあっても殺させず、復讐の炎に燃えた男。
しかしそれもすでに消え去った30年後の偶然の出来事に、運命を感じる。

第2巻
青い紅玉
既に忌まわしい歴史の主だよ。殺人2件、硫酸事件、自殺、窃盗…この炭素の塊のためにだ
拾った鵞鳥から盗まれた宝石が出てくるという特異なストーリー。偶然持ち込まれた鵞鳥と帽子が、大きな事件に結びつく。
「賭けをしている」ととっさの判断によって、言わない相手から情報を聞き出すすべは見事。
人間の心理をついた捜査で、犯人を見つけ出す。たかだが炭素の塊が人々を狂わせる原因になるとは。
宝石への人間の執着心が事件の原因となる。

入院患者
卑劣な男でも法の盾に守られて生きてきた。今回は盾で守りきれなかったが、正義の剣が必ず復讐したはずだ
若い医者に突然、開業の話。そのうまい話を持ってきた主人が極度の恐怖におびえ、捜査を依頼するが、
事件の真相を話さなかったがために、未然に防げず殺されるはめに。
犯罪史に精通している知識と、仮説を立てて推理し、あるべくして証拠が見つける捜査力によって、
15年前に起きた銀行強盗の仲間割れからの復讐劇であることをホームズは見抜く。

第3巻
ギリシア語通訳
心の冷酷さは犯罪とはいえんからな
ホームズの兄マイクロフトの初登場で、物語のおもしろさが倍増。不思議な体験をした通訳の話から事件の臭いを嗅ぎとるホームズ。
事件の確信はするが、家宅捜査の礼状がなかなか出ないことに、法の迅速さを求めるホームズが苛立つ。
通訳は危機一発で助けだすが、監禁された男は殺されてしまった後だった。
兄を見殺しにしてまで愛に走った妹に、「心の冷酷さは罪にならんからな」というホームズの最後の言葉が印象的。

ノーウッドの建築士
預金通帳はその人を語るよ
謎の火災死に、前日訪れた若き弁護士が逮捕されるが、彼の話や現場の調査から不審な点を感じるホームズ。
浮浪者に変装し事件の情報を集めるのは、よくみる必殺技。
現場から発見された作為的な証拠から、ホームズは自分の推理に確信を抱く。
隠し部屋に隠れた犯人を、わらを燃やしておびき寄せるシーンは奇抜でおもしろい。巧妙な手口による一方的な恨みからの犯行。

第4巻
ぶなの木立
ロンドンのどんな裏町より、美しい田舎の方が凶悪犯罪の巣だ
家庭教師に対する奇妙な条件。髪を切ることと、青い服を着て指定された場所に座ること。
田舎屋敷で起こる奇妙な出来事。垣根からのぞく男の存在、屋根裏部屋の秘密、切られた栗毛の髪がもう一つ。
不可思議な出来事の連続にホームズが急行。監禁されていたのは実の娘だった。
娘に前の奥さんの莫大な財産がいってしまうことを恐れた犯罪。突飛なことから事件につながるミステリーだ。

赤毛連盟
異様な事件ほどからくりは単純だよ
極めてユニークなトリック。高額報酬が支給される赤毛連盟の欠員補充に、質屋のおやじが選ばれる。
毎日、百科事典の筆写を頼まれるが、突然の打ち切り。不思議な出来事に調査に乗り出すが、その裏には大規模犯罪が。
最近、安い給料で雇われた質屋の店番に注目。銀行への地下道を掘っていたことを発見。容易周到な銀行強盗事件だった。
質屋のおやじにホームズからの忠告「人はまともな給料で雇う事」というオチもまたよし。

第5巻
最後の事件
知っての通り僕は臆病な男ではない。だが危険を無視するのは勇敢ではなく愚かだ
ルーブル美術館より盗まれたモナリザの事件を見事に解決。
その事件を指揮した凶悪犯罪の源となっているモリアーティー教授一味を逮捕できるところまでこぎつけた。
それに恨みを持った教授がホームズに何度となく刺客を送り込む。一味逮捕までスイスで休息するホームズに教授自ら追ってくる。
スイスの大滝で教授と格闘の末、滝に落ちて転落してホームズは死んでしまう。

空家事件
わが変貌自在の才は朽ちることなし
ホームズが亡くなってから3年後、ワトソンの前に変装姿から突如として現れた、実は生きていたホームズ。
宿敵モリアーティー亡き後、居残る残党との決着をつけるべく帰ってきた。
ホームズの家にある真向かいにある空家で、ホームズ狙撃を狙う犯人を現場で取り押さえる。
家にホームズがいると思わせるために精巧なロウ人形を設置し、ハドソンさんに動かしてもらうという念の入れよう。
ホームズ復活の記念すべき作。

第6巻
プライオリースクール
君の見えるものへの観察力は鋭い
名門学校から公爵の息子が行方不明に。消えたドイツ人教師に疑惑がかかるが、ホームズは否定。
消えた1台の自転車から事件の真相を推理していく。自転車の跡を辿って発見した牛の足跡から、一挙に事件の謎が解ける。
謎が深まれば深まるほど、ホームズの頭は冴え、その事実から正しい方向性を導き出す。
公爵の秘書が実の息子であるという驚きの事実が、事件の原因となっていた。多額の謝礼に大喜びするホームスの姿が印象的。

第二の血痕
いつだって女の考える事は不可解だからな。些細な行動に意味があり、ヘアピン一本が動機にもなる
ホームズの物語の中でも、実に痛快で示唆に富むもの。重要書類の紛失の捜査を依頼する首相と外務大臣。
その直後、大臣の奥さんの謎の訪問。犯人とおぼしき人物の殺人事件。
現場に残る敷物の血痕と床の血痕が不一致。次々と起こる不思議な出来事を見事に読み解くホームズ。
発見した書類を、そっと状箱の中に戻すホームズの粋な計らいで、円満解決する。

第7巻
マスグレーヴ家の儀式書
執事の知恵を測ったうえで同じ立場に身を置く。自分ならどんな風に行動するだろうかを想像するのだ
由緒正しき家柄の主より、家の歴史に詳しい博学の執事。
失職の危機を犯してまで調べていた紙切れこそが、代々伝わる謎の儀式書だった。
執事と執事の婚約者の失踪を辿るため、ホームズも謎解きに挑戦。
儀式書が指し示す場所を突き止めるとともに事件は解決に至る。
「執事は頭は良いが、唯一の欠点は女たらしである」という主の言葉通り、婚約者の嫉妬で命を落とす結末はよくできている。

僧房荘園
今までに一度か二度、罪を暴いて必要以上に犯人を苦しめたことがある。
今では分別を学び、良心よりは法律に背きたいと思っている
夫が殺された事件に妻が強盗を目撃したと証言。
しかし現場に残された3つのワイングラスから、それが嘘の証言であることを見抜く。
「夫人の美貌に惑わされていた」。なぜ妻とメイドは嘘をつかなければならなかったのか。そこから一挙に犯人解明に至る。
「良心より法律に背きたい」というホームズの倫理観が犯人を救い、幸福の一役に買った。

第8巻
四人の署名
莫大なインドの財宝をめぐる争いが、子供の代に及んだ。父の死から毎年つぐないのように送ってくる宝。
送り主の父の死から子らが接触するが、現場にいくと一人が殺されていた。完全な密室でおこなれた毒矢による殺人。
ホームズの地下世界の人脈をフルに使って、動物商から犬を借りて足跡をたどり、ベーカー街遊撃隊を使って船を発見。
さらには得意の変装を使うホームズ。謎の犯人はアンダマン諸島の小人だった。

9巻
のねじれた男
男の人っていつまでも子供のままね
アヘン窟の通りにいた夫を、たまたま発見した夫人。
しかし建物の中に入ると夫の姿はなく、服だけが残されていたことから殺人事件として発展。その場にいた物乞いを逮捕する。
しかし死んだはずの夫から手紙が。生きているとすればなぜ家に帰ってこないか。
知的な物乞いの破格の収入。そして被害者=容疑者という構図は実におもしろい。

六つのナポレオン胸像
些細な事から手掛かりは得るものです。観察して学ぶのです
次々と狙われるナポレオン胸像の破壊。単なる偏執狂かそれとも無政府主義者の仕業か。
そこに殺人が加わり、事件は深刻さを増す。あくまで事件の手掛かりをナポレオン胸像に求めるホームズにより、見事犯人を逮捕。
最後の胸像を買いとったホームズが胸像から発見したものは、黒真珠の宝石だった。
手品とも思える手さばきに思わずレストレード警部もホームズに脱帽する。

第10巻
銀星号事件
私はこいつを探したから見えたのです。まず仮説を立てて、それに従って真実を探り当てた
強豪の競走馬の失踪と調教師の死。事件当日に現れたさぐりやを警察は犯人と断定するが、ホームズは違う線を追う。
馬番を眠らせたカレーに入ったあへん。事件当夜犬が吠えなかったこと。
調教師の服から出てきた勘定書から犯人を推理。その証拠となるものを現場から次々に発見する。
高慢な馬主は自分の馬を見分けられなかったが、
顔を洗うとそこから見事にその馬のトレードマークである白い文様が出てくる。

悪魔の足
恋愛経験はないが、愛した女性があんな死に方をすれば、私だって同じ行動をとるだろう
療養先で狂い死事件に立ち合う。生き残った兄弟の一人の微妙な発言の食い違いに、あやしむホームズ。
しかしその男も全く同じ死に方で翌日に亡くなった。2つの事件の現場での共通点を発見したホームズは、
燃焼によって発生する毒であるとの確信を得る。
しかし犯人は別々。犯人に対するホームズの見事な裁きぶりで終る。

第11巻
藤荘
君が世間を悩ませた数々の物語を思い起こせば、「グロテスク」がいかに犯罪と密接なものかがわかる
泊めてもらった家が翌日もぬけの殻になっていたという不思議な体験をした依頼主。
しかしその家の主人が殺され事件へと発展する。家庭教師の失踪。巨大な男の出現。
すべてはかつてアメリカで暴君であった人物に結びつく。
犯人が列車で逃亡するも、復讐を果たすべく残った人が銃で射殺して終わるラストシーンは印象的。

ブルース・パーティントン設計書
兄には軌道がある。家とクラブと役所の循環だけ。どうして脱線など。マイクロフトが軌道を外すとは
列車から転落した死体から、国家の重要機密である設計書が発見されたことにより、事は重大に。
兄マイクロフトが直接依頼に来るほど。切符がないこと、転落現場のポイントとカーブから、別の場所で殺され、
列車の屋根の上に死体が乗っけられたことを解明する。
スパイの場所を発見し、犯人をおびき出し、見事に犯人を逮捕する。
細部こそが重要というホームズの理論を裏付けるような事件。

第12巻
パスカヴィル家の犬
自らに資質がなくとも人に刺激を与えてくれる
魔犬伝説に怯える人々。パスカヴィル家の主の死と、アメリカから帰った若き相続者。
ワトソンを現場に残して、事件の究明のために隙をうかがうホームズ。脱走犯と執事の関係が事件を混乱させる。
主を当日呼び出した女性の存在から、犯人が明らかに。兄妹のはずの昆虫学者が実は夫婦であること、
そして彼もまた莫大な家の財産を相続する権利のあるパスカヴィル家の人であることがわかる。
魔犬の解明のためにおとり捜査を断行し現場を抑える。不思議な大地を舞台にした長編ミステリーだ。

第13
ソア橋の怪事件
人を愛しすぎては身の破滅だわ
金鉱王と二人の女性をめぐる事件。激情の妻と若き美人家庭教師。嫉妬した妻が家庭教師を呼びたした後、死亡。
家庭教師が容疑者として逮捕される。容疑者に不利と思える状況証拠はおかしな点ばかり。
使用人の警告から、金鉱王が犯人とワトソンは見るが、真相は違った。
現場の検分から橋に傷跡を発見。そこから恐るべき被害者の自殺落とし入れ実験を、見事に解明させた。

フランシス・カーファックス姫の失踪
百の死に対して生は一つしかない。結果が悲劇では報酬はとれんよ
魅力ある姫の失踪。謎の男の出現に疑いをかけるワトソンだが、真犯人は慈悲活動を行っている少佐だった。
宗教心につけこんで女性を騙す詐欺師。令状が間に合わず「規則を犯して武運を試す」と敵地に乗り込むが、失敗。
翌朝あわてて気づいて、墓地での埋葬中、墓を暴いて、死者の下に隠された姫を発見する。
しかし時既に遅く、墓の恐怖を味わってしまった彼女は廃人同然になってしまった。
「僕の負けだ」と嘆くホームズ。

第14巻
高名な依頼人
令嬢に嫌悪しても男爵の出鼻はくじく
女収集家の毒牙にかかろうとしている令嬢を助けることを、高名な依頼人より受ける。
完全に男にたぶらかされている女性の心を変えるのは大変。「殺人は許しても、意外とつまらぬ事に気を掛けるかもしれない」。
かつて犠牲にあった女性を連れてきて硫酸をかけられた後をみせても動じない。
相手の陶器収集という趣味を利用して館に潜入。
しかし事件の結末はかつての恨みを持った女性が、男爵に硫酸をぶちまけて終る。

ボスコム渓谷の惨劇
言葉に表れた自責と悔恨が精神の健全を物語っている
見事な事件さばきに目を見張る傑作。都合の良い解釈しかせず、自分のわからないところは考えようとしない法廷。
愛し合う二人に結婚を強制する父と反対する息子という奇妙な構図には深い理由が。
「方法は些細な観察の積み重ねに過ぎない」とするホームズの徹底した観察眼から一挙に事件の真相は明らかに。
容疑者を無実にし、依頼人の心を悲しませず、犯人の気持ちを汲んだ見事な解決ぶりは見事だ。

第15巻
這う男
自然を越えんとすれば打ち負かされる
ホームズでよく出てくる動物を使った犯罪。動物の人間にはない特殊な能力を利用。
絶対に人間では登れない3階に何者かが現れたことから事件がはじまる。
主人に向って吠える犬に「犬は家庭生活を映す鏡だ」と注目するホームズ。
犬が吠えた日付と、不定期に送られてくる小包との関連。そして新聞に出た猿の盗難事件で一挙に真相を解明する。
老教授が動物の体液を注射して若返ろうと試みていたというすさまじい事件。

シェスコム・オールド・プレイス

犬は人違いはしない。別人だと知っていたのだ
馬主が借金で首が回らなくなっていた矢先に、借金取りの失踪、家から発見された人骨から殺人事件に発展。
事件解明のポイントは家を追い出された犬。姉の死を隠して、屋敷や馬がすべて差し押さえられてしまうのを防いでいた。
レースまで秘密にすれば馬が勝って借金が返済できるという見込みだった。
借金取りも借金から逃れるために逃亡していた。「借金取りにも債務がある」というホームズの言葉は至言。

第16巻
ボヘミアの醜聞

彼女に愛を抱いたわけではない。彼の冷徹さと愛は相反する。だが彼女の写真を大切に保管した
一国の王にとっては男女の仲も政治問題に発展しうる。
二人で写った写真を取り戻すため、変装を駆使するホームズ。
手伝いとして潜り込み、聖職者に扮し、火事騒ぎで写真のありかを示させたが、一枚上手をいく女性に裏をかかれてしまう。
しかしその結末に陛下は満足。お礼にと高価な指輪を差し出されるが、ホームズはその女性の写真をもらいうける。
女性嫌いのホームズには極めて珍しい行動。

踊る人形
秘密はいつか必ず解かれる
子供じみた絵に怯える妻。それを暗号であると考え、その解読に乗り出すホームズ。
暗号についての論文も書いたことのあるホームズいわく「法則があれば必ず解読できる」。
そのためには例文が必要。しかし悲劇は起こってしまう。
暗号の解読に成功し、最後の文に危機を感じて現場に急行したが、すでに依頼者は殺されてしまった後だった。
しかし暗号の解読と推理した上での現場調査により見事に事件を解明させる。

第17巻
海軍条約事件
予想はしていたが無理な方法は好まん。彼に示させて面倒をさけた
国家機密に関わる重要書類が一瞬の隙に紛失。しかも盗んだ時になぜか犯人が呼び鈴を鳴らすという暴挙に。
しかし2ヶ月たっても流失していないこと。自宅に泥棒が入ろうとしたことから、ホームズはすべてを悟る。
条約のありかを犯人に指し示させるために、巧妙な罠をしかけ、見事に条約を取り戻す。
依頼人へ、朝食の皿に隠して驚かせるあたりが、ホームズのおちゃめなところだろう。

あやしい自転車乗り
希望と予想は違うからな
寂しい道で男につけられる自転車乗りの家庭教師。そこを退職する最後の日に悲劇が起こった。
誘拐され、無理やり牧師の前で結婚させられようとした。莫大な財産を引き継ぐことを知らない娘をめぐって、
本当に恋をしてしまった男と、その相棒である男との三角関係が事件を複雑にさせた。
恋に落ちてしまったことが事件をたくらんだ犯人側の大いなる誤算だった。

第18巻
恐喝王ミルヴァ−トン
50人の殺人者と対決したが、最も凶悪な奴にしても、これほどの嫌悪を感じなかった
男女の手紙を使って莫大な金をゆする恐喝王。許しがたき犯罪に、得意の変装で配管工として屋敷にしのびこみ、
召使いに恋をされてまでも悪事を暴くために必死になる。しかし恐喝王の魔の手は次々と忍びより被害は拡大するばかり。
「推理の出番がないから困る」と「頭脳より棍棒」を選び、盗人になって屋敷の金庫に忍びよる。
恐喝王は思わぬ悲劇にあい事件は終るが、
「誇れる点はない」と持ち前の頭脳を使った解決でなかったことをホームズは嘆く。

第19巻
サセックスの吸血鬼
吸血鬼が存在しないなら関連の文献が膨大なのは?人間が恐怖を釈明するのに必要だからさ
村に伝わる吸血鬼伝説。次々に起こる奇異な事件をすべて奇妙な男のせいであると誰もが信じて疑わないが、
事件調査中に不慮の事故をとげる死亡。しかし怪異は続く。
彼の死後、吸血鬼を継いだ情緒障害のジャック。
毒をメイドに注射したのを母が発見し、母が首筋にかみついて毒を出そうとしている姿がまさしく吸血鬼に見えて混乱。
事件は吸血鬼と信じ込んだジャックが二階から飛ぼうとして死んで終わる。
奇妙な事件はすべて科学的に説明できたが、
あまりに偶然として重なったこと、村人の根強い伝説へのこだわりと偏見が悲劇を生んだ。

第20巻
独身貴族
妻をひとり失うは不運とみなされる。3人失うものは行いを疑われる

独身貴族で有名な男がついに結婚。しかし結婚式当日、花嫁が失踪する。
元愛人であった女優の存在がちらつきながら、ホームズに機知にとんだ謎かけをする謎の女性から、
独身貴族の過去二度にわたる結婚詐欺をつきとめる。花嫁が残したF.M.のメモから、事件の概要が明らかに。
すべての秘密は独身貴族の城に隠されていた。
詐欺の男は家畜同然にあつかって監禁した元妻の復讐によって最後を遂げる。
次々と起こる展開に目を奪われる長編作。

第21巻
三破風館
私には地位による安定が何よりの幸せなのよ
老女一人住む家を、家具も身の回りのものもすべて破格の値段で買い取るという奇妙な話から事件はスタートする。
そこには病死した息子の秘密が隠されていた。
男をたぶらかす熟女にはまって捨てられた息子が書き上げた小説は、殺人の証拠になる可能性が。
若い男爵の母の反対を意に受け、婚約破棄を条件に女を逃がしてやるホームズ。
女の幸せとは何かを問う。

瀕死の探偵

名優は役になりきるものさ
ある銀行家の熱病死。それはいとこの専門分野だった。しかもその財産は妻に渡らずすべていとこへ。
この不自然な成り行きにホームズが乗り出す。容疑者はホームズにも罠を仕掛けた箱を郵送。
ホームズは熱病にかかったと見せかけ、犯人を誘い出し、事の真相を暴き出す。
ホームズの熱病にかかって死にかけた名演技が、事件を解決に至らしめた。

第22巻
赤輪党
正義の達成は法の遵守以上に難しい
全く家から出ない下宿人。高額な支払いゆえに事件の臭いを嗅ぎ付ける。事件の背後に赤輪党の存在が見え隠れする。
2人のJが一人の女性をめぐる争いが、イタリアからアメリカ、そしてイギリスへ舞台をうつした。
2人のJの対決は正義の勝利に終わるものの、殺害容疑で逮捕されてしまう、その悲劇的な事件の結末に涙を流すホームズ。
アメリカの探偵も「アメリカ全国民が彼に感謝するだろう」と言った。

ボール箱
惚れられちまった。それがこの結果ですわ
遺体盗難事故続発の中で起こった、クリスマスプレゼント箱で発見された2つの耳。
医学生で家を追い出された下宿生が真っ先に疑われるが、
箱につかわれた糸と、耳からホルマリン臭がしないことから、ホームズは全く違った線を辿る。
そこには姉妹をめぐる愛と罠による殺人があった。
「惚れられちまった。それが原因ですわ」という船員の言葉が印象的。
「これがフランスだったら情状酌量の余地もあるのに。愛ゆえの罪だからな」とホームズ評。

第23巻
金ぶちの鼻眼鏡
不可能を消去して残るものが怪しげなものだとしても、それこそが真実なのだ
動機なき殺人にとまどいを見せる警部から依頼を受け、兄マイクロフトも伴って事件現場に。
現場に残された鼻眼鏡から犯人の痕跡をたどる。事件解決は実にドラマチック。
家の構造と眼鏡をなくしたことを考えるに、犯人がまだ家から出ていないことを推理する。
この事件の裏には、今から20年前のロシアでの因縁が隠されていた。
犯人は毒薬で自殺。家の主は最後に復讐にあって死を遂げる。

マゼリンの宝石・三人のガリデブ
炭素が結晶化したものが、人間の泣き笑いのたねになるとはな。美しい物はなぜか邪悪なものへ手に入る
ホームズの静養中。二つの事件を、兄マイクロフトとワトソンそれぞれが担当。
二つの事件が結びつき二人で解決するという異種的な作品。
悪行を重ねてきた伯爵と対決するマイクロフトは、得意の変装を使って伯爵の正体を暴く。
一方、ワトソンには3人のガリデブ姓に遺産が分けられるという奇妙な話が持ちこまれる。
二つの事件が結びつき、ホームズ不在で事件解決が行われるのは、最終話にふさわしい。