椎間板ヘルニアドキュメント かさこワールド

腰痛とは全く無縁だったかさこが、2002年2月(27歳)、突如、腰痛に。
しかも日に日に悪化し、4月レーザー手術。 しかし効果なく2週間の寝たきり生活。
その後復活するも、6月末、またしても腰痛悪化する・・・。
かさこの腰痛は治るのか?
椎間板ヘルニアドキュメントをリアルタイムでお届けします。

・ドキュメント5:手術後完全寝たきり入院生活(7/5〜17)
7・5:5日目
1日ぶりにめしが食えるようになったものの、ベッドから起き上がれないから、
寝たまま横向きで食べるという、なんとも情けない状況。
まあでも食べれるだけよしとしなくてはならないのかもしれないが。
でも寝ながら食べるほどまずい食事はないですよ。

起きあがれないから何もできない。テレビを見るのも辛い。
いよいよこれからが勝負だな。
といって、ワープロを自分で持ち上げて入力するというかなり強引なことはしているが。
とにかく寝ていること。
これが僕にとっては一番辛いことかもしれない。

病人より周囲の家族の負担が計り知れないと感じる。
患者よりその世話をする家族がストレスでまいって病気になっちゃうよ。

手術をした腰の部分にはじめて痛みが走り、夜中の3時に痛み止め(座薬)を使った。
不思議とすぐに効いた。座薬ってすごいんだな。

7・6:6日目
寝たきり生活に飽き始めている今日このごろ。
テレビも見にくいし自分じゃなにもできないし。早く起き上がれるようになりたい。
看護婦さんに体をふいてもらい、着替えをしてもらった。
すごいよ。えらいよ、看護婦さんは。

この寝たきり生活が普通になる、その恐さ。
やっぱり起き上がれないこの状況下で一番の暇つぶしはゲームかな。
ゲームさえあればまたたくまに時が過ぎるかもしれない。
ゲームボーイを買うか迷うが、いくらするのか、どんなソフトが出ているのかすらわからない。
やっぱり日頃から何事にも興味を持って遊んでおくことは必要なんだな。

7・7:7日目
単調な毎日。これこそが入院というもの。
これでも迅速な対応なのだと思うと、よほどの大病を患ってしまったとあきらめるしかない。
会社を辞める覚悟で入院しているから、仕事のことは気にならないが、
もしそうでなければ、入院していても気が気でなかっただろう。

ゲームボーイの迷いはあったが、妻がわざわざ遠くから運んできてくれた、
図書館の本を見て、「これを読破しよう」と考えた。

7・8:8日目
●レーザー手術の無意味性 ヘルニアだけでなく痔や腸の手術などでも、レーザー治療は「日帰り」手術で人集めしているようだ。
そのことをたまたま隣の病人を見に来た内科の先生の会話から聞いた。
「彼らは絶対にレーザー治療の欠点はいわないですよ。
日帰りで帰れるとか、入院しなくてすみますよとか、そういう良いことばっかしか言わない。
でもレーザーっていうのは低度の患者に効く可能性はあるんですけど、
今言われているように誰もが簡単に効く治療ではないんですよ。
万一、レーザー治療を受けてから改めて手術してくれって来られるのが一番困るんですよ。
だって中をレーザーで焼いているわけだから、効果がでなくても体になんらかの影響を与えてる。
その部分を今度は病院の手術でってなったら、レーザー治療で変ってしまっている部分のリスクが発生してしまうでしょ。
だからレーザーなんかやらずにすぐ手術した方が一番治りはいいんですよ」

これは僕に向けられた言葉ではなく、かつ椎間板ヘルニアの話ではないから恐ろしい。
ようは他の痛みでも「日帰り手術」を謳い文句に無責任な治療が罷り通っているということだ。

●寝ながらうんこはできねえよ!
汚い話で申し訳ないが、ほんと寝ながら大便はできないっす。
下剤を飲まされ、座薬に浣腸をつっこまれても、 あおむけになったままでは力が入らず、
でも4日間も便秘して腹は苦しく、 もうそれが何より一番辛かった。
2時間奮闘したあげく、それでもでない。
そこで僕はウルトラCを使った。
起き上がるなといわれたにもかかわらず、これ以上寝たままでは出ないとあきらめ、
起き上がってしまったのだ。
そのおかげで無事出ることに。
幸いにして起き上がっても痛くなかったので、
今度も大便する時は看護婦に内緒で起き上がってしてました。
ほんとこれが辛かった。
数ある欲望の中でも排泄欲を満たせないほど苦しいことはないですよ。

7・9:9日目
待ちわびたミスターチルドレンの新曲「Any」を入手。
一曲がこれほどの勇気を与えてくれる、その素晴らしさに感動。
・新曲「Any」の魅力

7・10:10日目
動けない僕を移動ベッドにのせて、ヘルパーさんが頭を洗ってくれた。
いや、ほんと人間っていうのは何かと手間がかかるんだなあと思うと同時に、
それをやってくれるヘルパーさんにいくら仕事とはいえ感謝。

7・11:11日目
前回と同じく排便に苦しむが、今回は2回目とあって、
早々と浣腸をうち、早々と立ちあがってケリをつけた。
それにしてももう1週間。
今日抜糸もしてもらったし、早く動かないと違う病気になっちまう。

7・12:12日目
●エアポケット
もうかれこれ1週間ベッドの上から動いていない。
太陽も見ていなければ、外気にもふれていない。
仕事をしなくなってから3週間がたち、わが家に帰ることすらできない。
完全にプリズナーになってしまったな。

7・13:13日目
手術後1週間がたち、同じ寝たきり状態でも、かなり動けるような気がしていて、
もう今にも起きあがりたくて仕方がない。
ほんとテレビはつまらないし、本も読む態勢がつらく、
せめてノートパソコンさえ使えればと、元気なことをいいことにトライしてみるが、
寝ながらではとても長文を打てるような状況ではない。
早く起きあがりたい。

●ゲームの効用
両親に来てもらっても意外と話すこともなく、
ただ買い出しに行ってもらうだけで終わってしまう場合が多く、なんだか悪いなと思っていた。
何事もなければ半年ぐらいは会わないことも多いのだから。
しかし、今日、わざわざオセロと将棋を持ってきてくれた。
こんなもの持ってきてもらっても・・・と思ったが、いやいやこれが大活躍!
将棋4戦・オセロ4戦、約2時間。
この入院生活で時間を忘れた数少ない一瞬だった。
たかがゲームではあるが、それが真のコミュニケーションとは言い難いかもしれないが、
親子が互いに楽しい時を過ごしたのであれば、それはそれでいいのではないかと思う。
こうして親子を結びつける共通項は、何でもいいからあった方がいいのだな。
やっぱりコンピュータ相手より、またオンラインでやるより、
面と向って人間と対戦するのがおもしろいよな。

●スター不在のオールスター
野球のオールスターなら寝たきり生活の僕にいい暇つぶしになると期待したが、それほどでもなかった。
巨人ー阪神、西武ー近鉄の方がおもしろいんじゃないか。
バカみたいなホームラン狙いの空振りフライばかりのオールスターより、
継投や作戦・駆け引きがあるペナントレースのチーム決戦の方がはるかにおもしろい。

それと何よりイチローがいないこと。
どんなメンバーだろうが、イチローだけいればそれだけで楽しいし、
だからメジャーをみてしまうみたいな、ようはスーパースターの不在が原因だな。
サッカーでも中田のいない試合を見るのがつまらないのと同じ。

●お金は大事
なんだかんだいって、この世で金は大事だよな。
突然のヘルニアで働けず入院生活。やっぱり金がないとどうしようもない。
その点、今回は両方の両親に多大な援助をしてもらった。
金だけあっても幸せになれないが、金がなければやはり不幸なのだと痛感した。
幸い僕も、旅行後マック&松屋の食事や風呂なし生活し、地道に貯金してあってよかったと思う。
でなければ、退院した後また猛烈に働かなきゃあかんのだからな。

7・14:14日目
●悪癖絶てず・・・ポテチ三昧
ポテトチップスの悪癖を絶つはずだったが、一度買ってきてもらったら病みつきになってしまった。
ベッドから動けず楽しみがあまりないし、病食の味気なさに嫌気がさしはじめた僕にとって、
塩気たっぷりのポテチは乏しい入院食生活にあって、救世主的存在となっているのだ。
やはり現代社会に生きる以上、欲望の誘いから完全に逃れることは無理のようだ。

●寝ながらうんこは不可能と決定
ここ最近、大をする際は、寝ながらなんてことはせず、
勝手にベッドから起きあがってりきんでいる。
そんなことしても、最近ではちっとも痛くないし、
やはり寝ながらなんて、毎日下剤を飲まされても不可能だ。

●看護婦の条件
看護婦さんは入れ替わり立ち替わり、毎日いろんな人がいる。
患者となってみると、担当する看護婦さんが単に若いとかかわいいとか、
そういった次元ではあまり見ないんです。
テキパキとし、頼りになる人がいい。気が効いて、患者の要望を先回りしてくれる人がいい。
そういう人はやはり経験が物を言うのか、ある程度年をとった看護婦さんの方が頼りになり、
若くてかわいいのはあまり役に立たないことが多い。

一つには単に看護婦としての経験だけではなく、
母親であるかといったことも重要な指標になり得る。
患者とはいってみれば何も自分じゃできない子供なわけで、
看護婦の主たる仕事は、食事や排泄や身の回りのお世話になるとすると、
自分の子供がいない若い看護婦と、子供や介護が必要な親のいる年配看護婦との間には、
どうやっても埋めることのできない経験の差があるのは仕方がないことなんです。
もちろん、若い人でも気が効く看護婦さんもいるし、年配の看護婦でもどうしようもない人もいますが。

またこの病院には僕と同じぐらいの年齢の、男性看護婦がいるが、
たとえばその人が、排便をした後のケツをふいたり、老人の体をふいてあげたり、
尿の処理をしたりするってことが、どうも僕には本能的に理解しがたい。
男女差別をするわけではないが、
やはりこういった仕事は明らかに女性が向いているのではないかとつくづく思うわけです。

信じられない医療ミスが多発する日本。
3Kといっていい、この辛い仕事だからこそ、単なる憧れや消去法による職業選択ではなく、
本当に適性と情熱のある人に看護婦になってもらいたいと思うしだいです。

7・15:15日目
手術から10日。じれてきましたよ。
早く動きたい。早く退院したい。早くいろいろなことに決着をつけたい。
とにかくやることはいっぱいあるのだ。
ほんとに今日あたりから厳しい。
おもしろい本がないというのも大きな原因だが、もう動けるのにという苛立つが募っているのだろう。
オーダーメイドでコルセットもできあがったし、せめてベッドから起き上がりたい。

7・16:16日目
●病室引越
退屈の絶頂期にささやかな変化が。
病院の他の患者の都合で、病室を移動することになったのだ。
窓側になれたわけでもなく、今までと反対向きになったぐらいで、病室の構造に何ら変わりはないが、
若干の変化でも、退屈の極みに達していた僕にとっては、ありがたかった。
それほどまでに入院生活というのが単調なのだ。

●やっぱり2週間
手術後2週間は寝たきり・・・
そんなの最長期間で10日もすれば大丈夫だろうと思っていたが、やっぱりだめみたいだ。
まあ仕方がない。
退屈で不自由だが、日にちは確実に過ぎ去っている。
もう少しおもしろいテレビ番組さえ多ければいいのに、
ほんとつまらん、くだらん番組が多いことに改めて気づく。
ニュースでさえも結局朝・昼・夜と同じことの繰り返し。
入院が1ヶ月早ければ、サッカーたっぷり見れたのになあ。

●監獄と病院
病院を時折監獄にたとえたが、どちらも体なり精神なりに病を患った人を治療させるわけで、
そのために世間と隔離するわけだが、日常生活に戻っていくには、
隔離された特殊空間の中にも、日常性を取り入れることが大事だなと感じた。

僕は腰痛で入院し動けない状態でいるわけだが、入院している約1ヶ月の間、
外を見ることもなければ、陽の光にあたることもなく外気にふれることもない。
これじゃあ、せっかく治療して悪い所を直したとしても、他の病気になってしまう。
ましてこれが内科的な病気ならなおさらだ。
「病は気から」であるなら、外も見れずに病室におしこめられていたら、治るものも治らなくなるのではないか。

テレビで東京拘置所の様子をやっていたが、まああんな独房に入れられたら、
更生なんてできず、余計神経ひんまがるよ。
独房にはトイレがついてるんだけど、しきりがない。
つまり毎日トイレを見ながら生活してる。
死刑とか終身刑の人にはいいかもしれんが、
他の人は悪いことしたのはわかるけど、何年かしたらまた社会に復帰するわけじゃないですか。
そんな劣悪な環境に入れられて健全な精神が育まれるかは、非常に疑問なわけです。

劣悪な環境にぶちこんでおくことが罪の償いになるとは思えない。
別に悪いことやった奴に快適な環境を提供しろといってるわけじゃない。
犯した犯罪に見合った償いをさせて、それが社会にプラスになればいいわけで、
そういう罪の償わせ方をさせれば、トイレにベニヤ板1枚でもしきりをつけてあげればいいし、
防犯面で難しいのかもしれないが、外が見える窓も必要なんじゃないか。
でなければ、単に独房に入ることだけが罪の償いになり、
その行為は何ら社会的なプラスにならないばかりか、
余計に彼らの精神を陰気なものにさせるだけであって、彼らが出所した時のことを考えると、
絶対にふさわしくない更生環境といえるのではないか。

●ぷよぷよ
足のふくらはぎがぶよんぶよん、たるんたるんなのに驚いた。
まあ当然の帰結なんだけど。だって1ヶ月近く歩いていないし、ここ2週間は立つことすらしていないのだから。
今、中国のダイエット食品が問題になってるけど、僕のこの事例を見ればわかるように、
ようは食べて運動しなければ、脂肪が増えてぶよぶよになるということだ。
へんちくりんなダイエット法やダイエット食品によるダイエットではなく、
ようは食った分だけ動けばいいんだ。
「運動」なんていうから大変そうだけど、歩く距離を毎日増やすだけでも全然違う。
涙ぐましい食事制限やまやかしのダイエット法に時間を割くなら、
通勤・通学で一駅でも歩いてみるとかすれば、毎日のことだから効果的だろう。
まああのダイエット食品の問題は、太ってもいないのに「ダイエット」と騒ぐ、
アホな女性を逆手に取った事件という側面もあるけど。

●虚
今日もまた、ただ何もせず寝ているだけの時が流れた。
世間ではとんでもないスピードで物事が流れていて、
僕もその流れにかなりのスピードで突っ走ってきたけど、もうそれははるか昔のこととなった。
普段では考えられない21時消灯という毎日の中で、僕は暗闇の天井をじっと見つめている。
こんなところで何やってるんだろうか・・・
一日も早く普通の生活に戻りたい・・・

夜になるとなぜか眠れなくなる。
いろんなことが頭をよぎり、静寂と暗闇に反比例するかのごとく、頭がどんどん冴え渡っていくのだ。
今日もまた眠れぬ夜を過ごす。
入院生活が1日1日と伸びるにつれ、焦りや不安ややるせなさや苛立ちが募っていく。

すっぽりとはまってしまった虚ろなエアポケット。先の見えない暗闇のトンネル。
僕はいつこの悪夢から逃れられることができるのだろうか。

7・17:17日目
もう入院して17日が過ぎた。
確かに退屈ではあるが、こんなに日がたつと、この怠惰な入院生活に慣れてしまったようなところもあり、
意外と月日がたつのも早いなとも思う。
手術後最大の懸案事項であった大便も、
今じゃちゃっかり看護婦に内緒で起きあがりすんなりできるようになった。
2時間あまりも苦しみ、座薬に浣腸に、それでもだめで起きあがってしまった頃の僕とはもう違う。
不便なら不便なりに、そこでの容量のいい方法を覚えてしまったからだ。

まあでもうれしいことに、明日が起きあがっていい約束の術後2週間。
何も明日まで待たなくてももう大丈夫かと思われたが、
抜き打ちで、しまも熟睡してる時に限って先生が来て、自分のいいたいことだけいって、
僕が何か言おうとすると、それを先回りするかのごとく、
「しばらくこのままでいてください」
と捨てゼリフをはいて去ってしまう先生に何もいえなかったからだ。

でも僕はどうしても「立ってみたい」という衝動を抑えられず、
看護婦の目を盗んでちょっと立ってみようと試みたが、足が震えて立つことはできなかった。
一刻も早く日常生活に戻りたい。
そんな気持ちでいっぱいだ。


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