EVERYTHING ミスチルトップ かさこワールド

EVERYTHING(92.5.10)
ミスターチルドレンの記念すべきファーストアルバム。
売れてからのミスチルしか知らない人にとっては「これが同じバンドか?」と思えるほど、曲調や詩の内容が違う。
甘く切ない恋を、軽妙なリズムと日常のさりげないシーンで歌い上げる。
ある意味では、今このアルバムを聞くと新鮮かもしれない。

なお「深海」以後のミスターチルドレンは、このファーストアルバムを原点として回帰しようという試みが見られる。
深海発売後のシングルが、このアルバムと同名であることや、長期休養中、なぜかよく聞いたのがこのファーストアルバムであること。
「Q」発売以後のポップ感を全面に出したシングル発売などは、その表れといえる。


●ロード・アイ・ミス・ユー
この胸のRain drops まだ降りやまない
ミスチル初期作品によくみられる恋の歌。この曲は失恋を歌ったもの。
失恋の内容とは裏腹に曲がリズミカルで解放感がある。
ポップ感があり、かつ工夫された楽曲であるように思う。

●Mr.Shining Moon
水たまり 月に片想いしてるよ
若かりし甘酸っぱいような恋の歌。
恋人のドライブに行くときに、BGMとしてかける音楽にはいいかもしれない。
軽妙でリズミカルで、歌詞が重くなく、ノレル曲。

「水たまり 月と話してる」「水たまり 月に片想いしてるよ」
「水たまり」を擬人法的に使うあたり、桜井君の初期の詩っぽい。
同じ「水たまり」という言葉でも、「DISCOVERY」に出てくるような、
「水たまりに自由を写して」という実に重い意味深な使い方とはまるで違う。
作詞家はよく好む言葉をよく使うが、
これほどまでに同じ言葉で使い方が違う作詞家は珍しいのではないか。
このミスチル(桜井君)の変遷が、このバンドの奥の深さを物語っているのではないか。

●君がいた夏
おもちゃの時計の針を戻しても 何も変わらない
記念すべきファーストシングル。
夏だけの一瞬の恋を描いた歌。初期作品に多く見られる、
恋の歌をあるシーンを思い描いて作り込んでいった曲。
全体的にほのぼのとした曲にしているのは、スローなテンポだけでなく、
「キリン」や「おもちゃの時計」「ラクガキ」「ひまわり」といった歌詞の役割は大きい。
ベストアルバムにも第1曲目に収録されているが、今あらためて聞くと、
「ミスチルがこんな歌を歌っていたのか」と驚きを感じてしまう。

●風〜The wind knows how I feel〜
いつかは僕も君のような優しい風になれるかな
ファーストアルバムの中で、この曲と「CHILDREN'S WORLD」が、
非常にその「子供心」を感じさせる、懐かしい詩に満ち溢れた曲に仕上がっている。
高音で優しく歌い上げるボーカル。子供が書いたような優しい詩。
楽曲としても非常に完成度の高さを感じられる。

●ためいきの日曜日
退屈なTVショー おしゃべりなラジオ 飲みかけのソーダ 星の降るハイウェイ
何もかもが全て僕を狂わせて行く

遠距離恋愛を歌った曲。
会いたいけど会えない。そんなはかなさを歌っている。
"別々の場所で暮らす二人の距離が、
心のその中まで変えないように"というのはまさしく遠距離恋愛。
はかない恋心、募る想い、狂ってしまいそうなほど退屈な日曜日。
そんな想いを見事に曲に表している。

●友達のままで
いつの間にか立てられたルールを壊してたのは君の方なのに
軽いテンポの明るい曲調ながら、歌詞の内容は明るくはない。
友達という関係を破ってしまったものの、恋人にはなりえない。
そんなはかない恋の歌。
でもそんなシチュエーションを軽く歌い上げるところに、初期ミスチル作品の特徴がある。
深刻さのない軽いポップ感が音楽的には聞き心地が良い。

●CHILDREN'S WORLD
何か大きな事をしでかしたくてウズウズしている
これこそミスチルの初期作品の真髄。
子供心に満ち溢れた歌詞。ギターサウンドのシンプルな響き。
「風〜The wind knows how I feel〜」と並んで、
いつのまにか大人になってしまった自分が、
純粋な子供時代の夢を思い出すような、そんな曲だ。