Kind of Love ミスチルトップ かさこワールド

Kind of Love(92.12.1)
ファーストアルバムに見られるような、無邪気な子供心を歌った曲や、はかない恋をポップ感たっぷりに歌った曲もあるが、
全体的に曲も詩も表現力がアップし、曲に奥行きが加わった印象を受ける。
メリハリのついた曲がそろい、いろいろな曲が入ったアルバムとして楽しめる。
「深海」を思わせるような、シリアスさやダークさが、所々に現れているのが、今から振り返ってみるとよくわかる。

●虹の彼方へ
じっとしてたらショートしそうだ
突き抜けるような解放感に満ちた曲。
リズミカルな曲は、自然と元気が出てきそうな感じだ。
アルバム1曲目にふさわしい曲。
コンサートツアー「空」では、この曲が一発目だった。はじまりを予感させるような歌だ。
歌詞では、「廻り続けるこの世界で」あたりに、
どんどんダークになっていく桜井君の詩の片鱗が表れている。

●All by myself
誰のためでも誰のせいでもないから今はAll by myself

桜井君が徹底的に自分と向き合い、心の底から紡ぎ出した「深海」を感じさせる詩ではあるが、
リズミカルな曲調が、それほどまでに自分へ自分へと沈み込まなくなってはいる。
「から廻り」「消え果てた」「遠ざかる」「引き返せない」「全ての痛み」「からくり」
マイナス的な言葉がずらりと並ぶ。
「Atomic Heart」発売後の、売れ過ぎて虚像を見た桜井君ではなく、
まだあまり売れていないセカンドアルバムでこれだけ自分の内面に向かっている詩を
書いているところを見ると、「深海」が花開いた桜井君の早くから根付いていた、
世界に対する「虚」の萌芽が見受けられる。

「傷つくたびに失うたびに問いかけてるよ」
「誰のためでも誰のせいでもないから今はAll by myself」
まるで自分の将来を予測しているかのような曲だ。

●BLUE
待ち合わせの場所へ向かう車の中で君の好きな曲あわてて探した

タイトルとおり、せつない恋の歌。
にもかかわらず、曲としては、しっとりとしてしみじみした曲だか、
決して暗さはなく、ゆったりとしたスローペースが聞くのに心地よい。
詩も自然で、どこにでもあるような男女の恋をうまくつづった感じ。
初期作品ぽいというか、深海以後の悲壮感漂うような歌ではないし、
詩もその分、普通。

●抱きしめたい
形のないこの想いは今はもう消えはしない

セカンドシングル。ミスチルの名作中の名作でもあるラブバラード。
切ない微妙な恋心を、サビで「抱きしめたい」と歌うそのストレートさが、
逆に聞き手にすっと入ってくるのだろう。

●グッバイ・マイ・グルーミーデイズ
留守番電話に名前をただ告げるだけ


●Distance
臆病だから?それとも今でも愛しているから?

すれ違う恋人同士を描いた歌。
まるで結婚した桜井君がいつしか離婚へと踏み切る胎動のように聞こえなくもない。
ファーストアルバムの失恋の曲とは違い、
詩も曲もシリアスな感を漂わせている。
それは桜井君の表現力がアップしたのか、それとも現実の心境が変わったのか。

●車の中でかくれてキスをしよう

いたずらにただ傷ついていくだけ

甘く切ない恋の歌を、実にシンプルに歌うことによって、
聞き手にダイレクトに届いてくる。
「抱きしめたい」を感じさせるような手法の曲。

●思春期の夏〜君との恋が今も牧場に〜
桜井君のダークな面が見え始めたアルバムで、その幅を広げようと、
無邪気な詩に単調な曲で、そしてそれを桜井君が歌わずドラムの鈴木が歌うという、
一体この曲を入れた真意は何なのか。

●星になれたら
長く助走をとった方がより遠くに飛べるって聞いた

セカンドアルバムの中でも名曲の一つ。ベストアルバムにも収録されている。
「別れ」を歌った歌にもかかわらず、曲調はどこか明るい。
「さようなら会えなくなるけどさみしくなんかないよ」
というサビのフレーズがそれを物語っている。
「別れ」は終わりなんかじゃない。
新しい始まりなんだ。そんなことを感じさせる曲だ。

●ティーンエイジ・ドリーム(T〜U)
少しは大人になっていろんなことが変わった 愛すべき人に出会って

子供心を思い起こすような、ファーストアルバムの「CHILDREN'S WORLD」をほうふつさせるような曲。
歌詞の優しさ、懐かしさが、誰にでもあった学生時代を思い出させる。
「かさばった部屋の荷物を一日中片付けていると
隠れてた想い出たちが引き出しからそっと顔を出した」

●いつの日にか二人で
本当の気持ちが恥ずかしくて騒いで気を引くだけ

「Kind of Love」〜いろいろな恋のアルバムを締めくくるエピローグ的曲。
片思いの歌。
失恋や切ない恋をよく歌っているのだなと、
こうしてアルバムを振り返るとよくわかる。