・優勝を逃したものの別格の存在感、教育を変える事業に邁進する保手濱彰人レポート
(2007.2.4up)
ホリエモンの元かばん持ちにして、
現役東大生、ホットティー株式会社代表取締役社長・保手濱彰人氏が、
2007.2.3に行われた第三回TRIGGERビジネスコンテストに参加した。
その時の模様と彼の現在をレポートしました。
最終選考4組に残った保手濱彰人氏。
さて、いよいよ賞金100万円の優勝発表ということで、
1組数人×4チームの出場面々が出てきた時、
私が真っ先に気づいたのはこのことである。
「おっ、さすが保手濱氏。ネクタイをしてないのは彼だけだな」
会場には着慣れないスーツを着た大学生がいっぱいいて、
出場チームの人たちはみんな当然スーツにネクタイといういでたちだったんだけど、
保手濱氏だけはスーツだけどネクタイはしていなかった。
別にネクタイの有無だけですべてを判断するわけじゃないけど、
着慣れないスーツに新品ネクタイをつけている、
社会人からするとかなり痛々しく見える学生姿より、
違和感なくジャケットを羽織っただけといった感じで、
ネクタイをしていない保手濱氏は別格だなと思っていた。
IT、ベンチャー、若者だからといってすべてのビジネスマンが、
ネクタイをつけないラフな格好をしているわけじゃないけど、
ほとんどが現役大学生でこれから起業しようっていうんだから、
別にネクタイしなくても、スーツじゃなくてもいいのになと思いながら、
若者の保守化傾向、特に高学歴者の安全志向を垣間見た中、
保手濱氏の堂々たる姿を見て、
「また、保手濱氏、優勝しちゃうかな」と思っていた。
しかし、優勝したのは私の中で最もあり得ない、
具体的なビジネスプランが皆無だった社会人の4組目の人に決まって、
「なんともしょぼい大会だな」と思いつつも、
「保手濱氏にとってはこの大会で優勝しなかったことはプラスだったのかも」
という思いが不思議とすぐに湧き上がってきた。
私が多少のひいき目をさっぴいたとしても、
4組の中で保手濱氏はダントツかなと思ったぐらいだから、
多分、本人はさぞがっかりだったと思う。
しかも、まだ1組目、3組目の学生のビジネスプランには、
具体性があったから、彼らが選ばれたのなら、
まあそれは仕方がないと思うのだが、
最も具体性がなく、自民党の政権公約みたいな抽象的ないいことを掲げた、
社会人の優勝には、多分、彼も納得いかないのではないかなと思った。
他の2組の学生はあまり自信がないのか、
優勝への執念みたいなものがそんなに感じられなかったせいか、
表彰中にそんなに悔しそうな表情はしていなかったけど、
優勝当然のつもりで、常に優勝しか頭になかった保手濱氏は、
壇上でかなり無念そうな表情だった。
でもこの結果は全然、というかまったく関係ないから、
がっかりしなくていいと思う。
優勝という肩書きはビジネスをする上でいい宣伝材料になるけど、
勝ち続ける保手濱氏に、ここで勝ちがつかなかったことは、
なんかむしろ彼のためにはよかったのではないかとも思った。
別に彼は天狗になるような人ではないし、自分を客観視できる人だけど、
絵に描いたようなコンテスト優勝続きはよくないんじゃないかなと。
現に、なぜあり得ない社会人を優勝にしたのか、
審査員のコメントを聞いて納得した。
どれもビジネスプランとしては今一歩。
だから、崇高で壮大な理念があり、
プレゼン中に運営側のトラブルで中断しながらも動揺せずプレゼンした、
社会人を優勝させることが無難という判断だったんだろう。
審査発表後の懇親会で保手濱氏に話を聞く時間があった。
「具体的なビジネスプランの方がいいと思ってプレゼン内容を具体的なものに絞ったんだけど、
その先のビジョンや理念がいいというならそっちをもっと入れればよかったな」
確かに今回のビジネスコンテストと審査員の傾向と対策からは、
その方がよかったのかもしれないが、私はむしろ、
保手濱氏や3組目の大学生のように非常に具体的なビジネスプランを語る方が、
ビジネスコンテストにはふさわしいと思っていたし、
優勝した4組目の社会人のプレゼンを聞いて真っ先に私が思ったことは、
「政治家の選挙をやってるんじゃないんだから、
いいこといえばいいってもんじゃない。ビジネスプランを語る場なのにな」と思ったが、
まあ審査員に見る目がなかったということで、
今回の保手濱氏のプレゼン内容やビジネスプランを否定する結果ではないと、
私は強く思っている。
審査員の中でベンチャーキャピタルの方が実におもしろいことを言ったのが印象的だった。
「金を出す投資家の立場から言わせてもらえれば、
今回のビジネスプランに金を出したいというものはなかった。
ただどの方も人柄がいいしビジョンがある。
特に保手濱さんなんかは政治家になったらいいんじゃないかな」
そうか、その手があったかなんて私は妙に関心してしまった。
保手濱氏の醸し出す他の人にはない圧倒的なパワーと人を引きつけるカリスマ性は、
確かに政治家向きかもしれない。
ということは、今は保手濱氏とは、
取材をする側、される側の関係性だけど、
もしかしたら、15年後ぐらいには、一緒に手を携えて、
日本の社会を、教育をよくするために、政治を行っているかもしれないと思うと、
なんだかワクワクしてきた。
でもそうなったら私なんかより彼の方が党首向きだなと(笑)。
それはともかく、1年前に取材した時は、会社を設立しただけで、
まだ事業をはじめたばかりの保手濱氏だが、
さすがにホリエモンのメディア露出の減少に伴い、
マスコミ取材も減ったようで、塾経営を軌道にのせているようで何よりだった。
久我山で塾を1校スタートさせ、そこで確実にビジネスをやっているという意味で、
私からするとこれからビジネスプランを携えて、
何かはじめようとしている他の出場者と保手濱氏とでは立ち位置がまったく違うなと。
だからこの結果はまったく関係ない。
彼が塾経営という事業をしながら、その中でさらなる展開をしていく、
新事業のビジネスプランなのだから、
コンテストの結果いかんに関わらず、着実に進めていけば、
彼のビジネスプランはビジネスになるんじゃないかな、そのうち。
塾経営をしている保手濱氏に私はどうしても聞いてみたい質問があった。
彼自身は社長でありながら講師も勤めているようなのだが、
講師をせず経営や新事業などに集中した方がいいのではないかと、
私は思っていたからだ。
しかし彼から、私の浅はかな考えを一笑される明快な答えが返ってきた。
「僕は教育を良くしたいという想いで教育事業をやっているから、
自分自身が教育の現場から離れてしまうと、
文部科学省の教育改革みたいな、現場を知らないおかしな改革論になってしまう」
さすがは保手濱氏だなと改めて感心した。
彼にはビジネスプランどうのこうのという以前に、
教育を変えたいという信念がしっかりある。
それに基づいて行動している限り、
ビジネス上の多少の失敗があったとしても、
彼は大丈夫だろうなと思った。
そしてもう1つ、私はいつか保手濱氏にやってほしいと思っていることがあった。
それは受験勉強だけでなくさまざまな社会学習をしていくこと。
これはなかなかビジネスになり得ないので難しいと思っていたが、
最近ではCSRと称して企業が大学生、高校生に向け、
実際の社会体験を話す講義などを行っていて、
そこに大きな金が動いているのを、
私は日経新聞の1/4に掲載された日経CSR取材で体験していたので、
彼が今回提案した「モバイル高校」の長期的な展望の1つとして、
大学と高校生のマッチングだけでなく、
企業と高校生のマッチングもできるのではないかと。
それについて、保手濱氏はまさにそれ!といった具合で、
こんな話をしてくれた。
「起業とか社会の仕組みを高校生に教えたい!
そういうこともどんどんしていきたい。
というか、もし自分が高校の時に起業について知っていたら、
誰かが教えてくれていたら、
大学なんかいかず、速攻、起業してましたよ」
優勝を確信し、ベストを尽くして望んだにもかかわらず、
結果がついてこなくて多分、意気消沈というと大げさだけど、
多少、残念な思いをしていたに違いない彼が、
目を輝かせていつも以上の早口で言う姿に、私はとてもうれしくなった。
保手濱氏にとって起業という選択肢は、
本当に自分に合った最高の道だったんだろうなと。
大学生の起業に対するブーム的憧れとゲーム的要素を先日につぶやきで解説したけど、
彼はまったくそういうものとは一線を画している。
彼は誰よりも早く大学に起業サークルをつくり、
彼は実際に会社を設立し、机上のプランだけでなく塾経営も行っている実績がある。
でもそれにとどまらず、さまざまなアイデアをビジネスに移行し、
日本の教育をよくするために自分ができることは何かを真剣に考えている。
だからこそ、彼が私には他の学生とは違い、別格と映り、
これからいろんなことをしてくれるんじゃないかという期待感があるのだろう。
今後も随時、保手濱氏の動向をレポートしていきたいと思っている。