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・音楽でメシを食う〜ドラマー海保けんたろーインタビュー第一部〜(2007.2.20up)

好きなことでメシを食いたい奴はいっぱいいる。
特に「音楽でメシを食えたら」と思う人も多いのではないか。
しかし実際にはごくわずかしかいないが、
25歳にして音楽を仕事にしているドラマーがいる。
私がはじめてライブを聞いて大絶賛した
(2006/12/4のつぶやきかさこ)
メリディアンローグ(略:メリログ)のドラマー、
海保けんたろーさんだ。
好きなことでメシを食える奴と食えない奴の違いはどこにあるのか、
彼に話を聞いた。(2007.2.20)


●1:みんな勝手に夢を諦めていくから自分が残っただけ
「多くのライバルが音楽の道を諦めてくれて、
結果残ったやつらがプロになった、みたいな。
気付いたら、自分はドラムで稼ぐようになってました」

ライブで一度しか見たことがない彼の、ミクシィのこの日記を見て、
私はピンと来て、すぐにインタビューを申し込んだ。
「夢」を語りながらもウジウジしているだけで何も行動しない、
今の多くの若者に彼の話が参考になるのではないかと思ったからだ。

彼はメリログというバンドのドラムをしている。
私はマイミクで一度も会ったことのない、
メリログのボーカルである涼さんから、2006年12月のワンマンライブの誘いを受け、
彼らのライブを聞いて衝撃を受け、瞬く間に好きになったほど、
素晴らしいバンドである。
中でも目立っていたのは天性の歌声を持つボーカル涼さんの際立った存在。
それを支える一員としてのドラムという認識しかなかったが、
彼のこの日記を見て「この人もすごい!」と思ったのである。
この人はわかっている人だ。きっとおもしろい話が聞けるに違いないと。

彼はメリログ・メンバーとしての活動をメインにしつつ、
他バンドのサポート活動も行っている。
そのサポートで収入を得ているというのだ。
同年代のインディーズバンドの多くは、お金は持ち出し、基本的に赤字で、
プロを目指していたところで現在は「趣味」にしか過ぎない。
しかし彼は音楽を対価を得る仕事にしている。
これはすごいことだ。

彼は「特別ドラムの才能があったわけではない」と日記に書いていた。
ドラムをはじめたのも高校からで決して早くはない。
ただ音楽活動を続けてきたら、みんないろいろな理由で音楽を諦めていき、
結果、残った数%が自分に過ぎず、だからプロになれたと。

私の好きな言葉に「才能は持続する情熱である」というのがあるが、
それをすぐに思い出した。
成功者に共通するものは継続力に他ならないのだなと。

●2:食うために何をしたらいいか逆算して考える
「好きなことをしてお金を稼ぎたい」と多くの人が思っていることだろう。
じゃあそのために何をするか、それが最も重要だ。
音楽に限らず、文章、写真、絵、デザインなど、
多くの若者に共通するのが、
「活動をしていればいつか誰かが注目してくれるんじゃないか」という待ちの姿勢だ。

彼が決定的に違ったのは、待ちの営業ではなく攻めの営業をしたこと。
「好きなドラム叩いてメシを食える方法を考えて、実際に行動すれば、
最低限の技術があれば食えるんじゃないですか。
ただみんなそれをやらないだけ。
やらないのは、プロ(音楽でお金を稼ぐ)へのこだわりが中途半端だからではないでしょうか」

高校卒業後の数年間、彼は音楽の道を目指す他の若者と変わらず、
アルバイトをしながらそのお金を音楽活動に注ぎ込む日々が続いていた。
どうしたら音楽でお金を稼げるようになるだろうと考えていた彼が、
ふと思いついたことがある。
「他バンドのサポートでドラムをすることでお金を得られるのではないか」と。

私は毎月ライブイベントに参加しているが、
ギター、ベース、ボーカルに比べ、ドラマーが圧倒的に少なく、
多くのドラマーがバンドをかけもちしている姿を見ていた。
他の楽器と違い、自分で保有し練習するということができない分、
ドラマー人口が少ないのだろう。
しかしバンドにドラムは欠かせない。
だから数少ないドラマーが多くのバンドをかけもちせざるを得なくなる。

「はじめはサポートとして無料でやっていましたけど、
ひょっとしてこれでお金をもらえるんじゃないかな」

当初は交通費+アルファ程度の料金提示にとどめていたが、
それでもサポートに入って欲しいという依頼は絶えなかった。
「無料でなくても有料にできるんだ」という確信を得て、
徐々に料金をあげていった。
また、積極的にネット掲示板での営業活動も行った。
メンバー募集の掲示板などに、有料でドラムサポートやりますの書き込みを続けた。
中には営利目的と判断され削除される場合もあったが、
ドラムのサポートの需要は多く、
有料であっても「仕事」はどんどん舞い込んできた。

「もしかしたらサポートドラムだけで食えるかも」と思ったのが、
2005年のはじめのこと。
彼はそれだけに専念するため、思い切ってアルバイトをやめた。
2005年の1年間、10〜15のバンドでサポートを行い、
150本以上のライブ(仕事)を行った。

ギャランティーはアルバイト程度の金額設定なので、
一人暮らしして一人でやっていくには厳しい収入かもしれないが、
多くの音楽を志す若者が持ち出し(赤字)でやり、
かつ音楽活動とは関係のないアルバイトに時間をとられて、
音楽活動をしていることを考えれば、これは画期的な大転換といえるだろう。

サポートドラマーだけでなく個人レッスンも開始し、今、数名の生徒を抱えている。
スタジオ代込みで1回4200円という料金でスタート。
サポートドラムの合間に仕事ができるので、新たな収入源になっている。

「音楽で食いたい。好きなことをしてお金を稼ぎたいという目標があるなら、
そのためにどうするかを考えて行動すれば、夢は叶うと思います。
でも多くの人ができないのは、
音楽活動を続けていくことを、親の反対や彼女の存在や安定的な仕事を求めて、
自分で諦めてしまうから。
音楽を続けている人でも『自分が楽しむ』ことを最優先にして、
音楽で稼ぐことを二の次にしているから稼げないのではないでしょうか」

ここに好きなことが仕事になるか、
それとも趣味で終わるかの大きな違いがあるように思う。
夢は「音楽で食うこと」といいつつも、
実際は自分が楽しむことを優先していれば、
それは仕事ではなく趣味になる。
もちろん仕事であっても自分が楽しめることは重要だが、
楽しむことだけを優先していたらいつまでたっても仕事にはならない。

とはいえ、何かと音楽性にうるさそうな、
さまざまなバンドを相手にサポートメンバーとして仕事をすることは、
折り合いが難しいのではないかと素朴な疑問をぶつけてみた。
すると彼はあっさりこう言った。
「僕自身、音楽性に対するこだわりはほとんどないんです。
音楽の質についての良し悪しは気にしても、音楽の好き嫌いは気にしない。
僕はドラムのプレイヤーとして、
そのバンド、その音楽に合った最高のドラムプレイを心がけるだけで、
音楽性の違いがどうとかいうことにあまり興味はないんです。
そんなことより自分の技術をいかに高めていくかとか、
自分が売れるために何をすべきかの方に興味があるんで」

この点こそ彼にできて他のドラマーにできない大きな違いなのかもしれない。
ドラムでお金を稼ぐというプロ意識があるからこそ、
音楽性という名の好き嫌いで「仕事」を選んだりしない。
だから彼は成功しているのだと思う。
趣味で音楽をするのではなく、仕事で音楽をする、
その意識を徹底しているからだ。

音楽を趣味にするならそれはそれでもちろんいいと思う。
ただそれを「あわよくば仕事に」程度の気持ちなのに、
「音楽でメシが食えたら」と夢を語るのは違うような気がする。
趣味でやるのか仕事でやるのか、自分の覚悟を決めずにやっていると、
自ずと音楽に対するスタンスのブレがでてきてしまうのではないか。

「本気でメジャーデビューしたいというバンドをでも、
何らかの理由で解散してしまうバンドも多い。
その時、自分はびっくりしてしまう。
『えっ、その程度のことでやめてしまうの?そんな中途半端な気持ちだったの?』」

自分探し/夢という言葉だけに憧れる人/フリーターというモラトリアム/音楽や文章への憧れ・・・
といったものだけが先行し、本気でそうなりたいと思っている人がいかに少ないか。

「『音楽で食えるようになりたい』と思った人の数に対して、
実際に音楽で食えるようになる人の数が1%だとしたら、
『音楽で食えるようになりたい』という気持ちが強い人の方から1%が、
実際に食えるようになる、そんな感じです」(海保さん日記より)
才能や技術の前に気持ちの強さの問題が指摘できるのは、
実際に成功しているからこそ言える言葉だ。

好きなことでメシを食いたいという人は多い。
しかし、それ、本気なの?という言葉を自分に問い返してほしい。
単にサラリーマンになるのが嫌だとか、
楽して食えそうだとかいうそんな気持ちではなれないことを肝に命じ、
自分の人生観がそういうものを求めていないのなら、
何もわざわざ「茨の道」をいくより、
サラリーマンになった方が楽して安定した生活を送れると思う。
(もちろん将来的にはサラリーマンであっても、
プロ意識を求められることになると思うが、日本社会では大分先の話だろう)

今一度、自分の「夢」を問い直してほしい。
単にサラリーマンになりたくないだけのモラトリアムとかっこつけだけでやっているなら、
それは無駄だとは思わないけど、
趣味なら趣味とわりきってやることの方が、
自分や周囲を騙すことなく楽しく音楽ができるんじゃないか。

そして本気で音楽で食いたいと思うなら、
彼のように何をしたらお金をもらえるかを必死で考え、
失敗を恐れず行動してみることが大切ではないだろうか。

●3:基礎があるから成功する
彼が音楽でメシを食おうと思ったのは、高校2年生の頃だった。
幼少の頃から音楽漬けで音楽の道しかない音楽バカではなかったようだ。

そもそも彼がドラムに興味を持ったのは、
中学生の頃、好きな女の子が吹奏楽部でドラムをやっていたからという、
実に単純明快なもの。
それで高校入学後、軽音楽部ではなくブラスバンド部に入って、
ドラムをはじめたのがきっかけだという。

ブラスバンド部をやりながら、仲間を集めてバンドもはじめた。
高校の頃は、ドラム、ベース、ギターの3楽器をこなし、
複数のバンドをかけもちして、バンドごとに楽器を使い分けていたという。

高校2年の頃、そろそろ卒業後の進路を考えなければならない時期に来た時、
「やりたくないことで人生の時間を埋めてしまいたくない。
アフターファイブだけを充実させるのではなく、
ビフォアファイブも充実させたい」と思ったという。
楽しいことで人生を埋め尽くしていきたいと思った時、
彼が小さい頃から漠然と抱いていた、
「有名になりたい」「お金持ちになりたい」「モテたい」、
そして「人に影響力を持ちたい」という、
自分の欲求に正直に従った本心の夢を実現するには、
音楽が一番いい手段ではないかと思ったという。

3つの楽器の中でどれを選ぶか。
一番好きなドラムを選ぶことにし、
プロドラマーとして有名な榎本吉高氏に2年間、個人レッスンを受けることになった。

彼がドラマーとして食っていけるのは、
飛びぬけた才能の前にしっかりした基礎があったからだと、話を聞いていて思った。
軽音楽部でなくブラスバンド部に入ってドラムを習ったおかげで、
「きっちり基礎を教えてもらえた」という。
そしてプロをめざすならプロに習うべきという選択も、
今の彼の技術を支えている大きなバックボーンになっている。

特に榎本氏の個人レッスンより、
実際に榎本氏のライブについてサポートを行うローディーの経験が、
非常に勉強になったという。

「個人レッスンだと自分のレベルに合せてになってしまうけど、
実際のライブの現場についていけば、榎本さんのプロの技量を間近で見ることができる。
それがすごく勉強になりました」
師の技を見て盗むという昔ながらの徒弟的制度を経験していることで、
彼のドラマーとしての技量は確固たるものとなったに違いない。
ドラムでメシが食えるのは、彼にとびっきりの才能があったからというより、
プロになるために一番近い方法は何かを考え、
それを実行したからという側面が大きいのではないか。

●4:何事も極めたい性格〜小学生の頃のエピソード
彼のパーソナリティーを物語るエピソードがある。
彼は幼稚園から小学校2年生にかけて、もっとも読書をしたという。
本が大好きで毎日のように本を読む日々。
その時、読んだ本の中でも、
ネバーエンディングストーリーの原作「果てしない物語」がとにかく好きで、
当時、何度も読み返したという。

そんな彼が小学校2年生でぱったり読書をやめてしまうのは、
ある意味、「極めて」しまったからといえるかもしれない。
ちょうど小学校2年生の頃、本を読んだらシールをはって、
生徒同士で競争するものがあったという。
本が大好きな彼は普通の人の5倍以上のシールをはり、ぶっちぎりで優勝した。
「優勝したらそれで燃え尽きた感じがあって、
その後はぱったり読書をやめてしまいました(笑)」

小学校4年生の頃になると、中学受験のため塾通いに。
ここでも持ち前の負けず嫌いと極める精神を発揮し、
学校でもトップクラスの成績を収めていたのだが、
親の引越しの事情があって受験ができず公立に進学することになると、
ぱったり勉強へのモチベーションが途切れ、
「小学校の頃に猛勉強した貯金で高校受験にものぞみ、
ほとんど勉強はしませんでした(笑)」という。

目標を見つけるとそれに向かって極めるまでがんばりぬくという、
その姿勢が今、音楽になり、それに向かって徹底してやり抜いているからこそ、
多くの音楽を志す若者から一歩ぬきんでることができているのではないか。

バンドでメシを食う!〜ドラマー海保けんたろーインタビュー第二部〜
●1:1ドラマーからバンド活動に注力
音楽でメシを食うという夢を、ドラマーとしてある意味では半ば実現させた彼だが、
2006年、2007年からドラマーの仕事を減らして収入を減らしてまでも、
力を入れているものがある。
バンド・メリディアンローグの活動だ。

「『自分が売れたい』というのが一番の夢ですけど、
有名になりたい、人に影響力を持ちたいという夢を実現していくためにも、
自分の意見がものすごく反映できるメリログというバンドが売れることに、
今、最も力を入れています」

さまざまなバンドのサポートをしている彼がなぜメリログを選んだのか。
メリログを結成し、作詞・作曲を手がけるボーカル涼さんの音楽性に惹かれたのはいうまでもなく、
海保さんが考えているバンドの見せ方や売り方といった面で、
自分の意見がダイレクトに反映できるからだという。
メリログが結成されたのは2001年で、彼が加入したのは2003年だが、
ボーカル涼、ギター長田、ドラマー海保の3人体制になった2007年3月から、
海保さんはメリログのリーダーになっている。

メリログの音楽はすごい。
私がライブで一度聴いて感動したほどである。
でも「ただいい音楽を作っている」だけではメシが食えないのが今の時代。
メリログの音楽や社会に訴えていきたいメッセージなど、
アーティストとしての作品の完成度を磨き上げていく部分はボーカル涼さんにまかせ、
彼自身は、メリログの音楽を広めていくいわば「営業・宣伝活動」を担当し、
バンドを引っ張っていっている。

「音楽でメシを食いたい人たちが大勢いる中で、
頭1つ出るためには何をしたらいいか。
そのアイデアを考え、実行していく。
いい音楽を作ることは大前提として、
こうした宣伝部分など音楽以外の部分でいかに努力するかが、
バンドが売れる/売れないの違いとなって表れるんじゃないでしょうか」

好きなことでメシを食うためには何をしたらいいか。
1ドラマーとして何をしたらよいかを考え続けてきた彼は、
同時にバンドとして何をしたらよいかを考え続けて行動に移している。
それができるのは夢に対する気持ちが中途半端じゃないから。
本気で音楽でメシを食いたいと思っているからこそ、
音楽そのものだけでなく、売れるために何をしたらよいかという部分にも、
しっかり力を入れている。

音楽の世界だけでなく文章や写真や絵やデザインといった、
「クリエイター」的な憧れ職を夢見る人たちの多くが、
営業活動が弱い、というかなおざりにしている。
営業とか宣伝活動をするのを格好悪いと思っている節がある。
だから売れている人たちへのひがみが出る。
「あんな奴が売れて。俺の方がもっとすごいものつくってるのに」と。

自分がいいものを作っていれば、いつか誰かが見出してくれるという、
「王子様」をただ待っているだけ。
驚くべきことにホームページすら持っていず、
自分の部屋の中で作品をためこんだところで誰が見出してくれるのか。
営業活動の必要性を痛切に感じている海保さんの言葉は、
私の中にすっと飛び込んできた。

●2:ライブハウスではなく路上ライブでファンを獲得
では具体的にバンドが売れるために、彼を中心に、
他のメンバーがどんなことをやってきたのか。
2004年、彼らはライブハウスでのライブを一切辞めることにした。
「ライブハウスでライブをやっても、新しい人はほとんど来ない。
ライブハウスに金を出し、そのお金を補うために知り合いに声をかけて来てもらう。
来てくれるのは毎回同じ人がほとんどで、
それもそこそこの人数でしかない。
その繰り返しじゃ、ファンは増えないし、
自分たちのバンドを音楽を広めることができないと思ったんです」

ライブやってる、演劇やってるからチケット買って来てくれといわれ、
知り合いだから断れず、仕方なく2000〜3000円といったそこそこの金をとられて、
出演者の自己満足(マスターベーション)につき合わされ、
うんざりしている経験をしている人も多いのではないか。
もちろんメリログのような素晴らしい音楽なら話は別だが、
知り合いづてのそうした誘いはあまりいい営業方法とはいえない。
いわば保険のセールスマンが知り合いや家族から保険に入らせるような、
そういう営業方法がライブハウスでのアプローチといえる。

そこで彼らは野外ライブと路上ライブのみにすることにした。
「路上でやれば、僕らを知らない多くの人たちに音楽を聴かせられる。
知り合いではないまったく新しい人たちに音楽を宣伝できる。
ライブハウスに高いお金を払い、チケットノルマをこなすために、
知人に何度も声を掛け、お金を払ってもらう必要もないし」

彼らの狙いは見事に的中した。
路上中心でライブをすることで、
1日数人といったペースだが、着実にファンになってくれる人が増えていったのだ。
劇的に大量のファンが増えるわけではないが、
足で1つ1つ営業をして稼ぐように、
地道な泥臭い方法で新しいファンを増やしていったのだ。

路上活動を1年以上続けた結果、ファンは増えていったが、限界も感じていた。
「ある一定程度まで行くと、新たにファンになってくれる人の人数と、
ファンを辞めていく人の人数がトントンになってしまい、頭打ちになったと感じたのです」

そこで彼らは新たな展開を考える。
コンサートホールで200人規模のワンマンライブをしようと。
着実に路上ライブでファンを集めた結果、
2006年、ワンマンライブで200人をうめるというライブを成功させた。
路上ライブからライブハウス、ワンマンライブという順番の逆転。
その発想の転換が集客力あるバンドに彼らを変貌させたのだ。

海保さんのやりたいことの中に「会社経営をしてみたい」という思いがあるように、
彼はプロデューサー的志向が高い。
バンドの1音楽プレイヤーとして欠かせない存在であることはいうまでもないが、
営業・宣伝活動をどう戦略的に行っていくのか、考え、実行していくことにも向いているのだ。

路上ライブ以外にもさまざまな営業活動を行っていた。
「ネットを使った宣伝活動はコストもかからないし、魅力があると思っていました。
ミクシィをはじめたのもそうですし。
あとはCDを売るためにアフィリエイトも積極的にしました。
有名個人サイトにお願いしてメリログのCDを売ってくれた場合、
そのサイト管理者に一般より高いバッグをお支払いするとか、いろんな工夫もしました。
音楽サイトのダウンロード販売も積極的に活用しましたし」

インターネットの登場はほんと世界を変えたといってもいい。
ネットによって低コストで誰もが情報を発信できるようになったのだ。
ただあまりに膨大な情報群のために埋もれてしまう可能性があるからこそ、
ネットをどう活用するかがポイントといえるだろう。
彼らは試行錯誤を重ねながら、さまざまな方法を考え実践していっている。

「そのために常にアンテナを張っているようにしています」
今の社会、ただ漠然として過ごせば圧倒的な情報量に飲み込まれるだけだ。
意識的に自分にとって有益な情報をキャッチするアンテナを立てること、
そしてアンテナに引っかかったものを試してみることが重要だと思う。

2006年12月、彼らは2daysワンマンライブを敢行し、2日間で約400名を集客した。
「次の目標は3月のワンマンライブで1日で350名以上集めることです」
音楽に数値目標を課すことに抵抗を持つ人もいるかもしれない。
しかし「本気で売れることを考えているバンドは、
自分自身でサクセスストーリーを描いている。
いつのライブで何人集め、いつ頃、メジャーデビューし、何万枚CDセールスを記録するとか」

ただ漠然と過ごしていただけでは夢は実現できない。
いい音楽を奏でるという「過程」も大事だが、
それによって何人の人に聴いてもらえたかという「結果」も大切にする。
そこを意識するかしないかが、仕事か趣味かの境目なのではないか。

彼もボーカル涼さんもミスチルが好きだという。
こうした数へのこだわり、売れることへのこだわりは、
初期の頃のミスチルを彷彿とさせる。

●3:わかりやすい音楽を

営業・宣伝活動はリーダーの彼が、
音楽作品の完成度についてはボーカル涼さんがという、
メンバー間での明確な役割分業があり、そのどちらもいいから、
こうして一定の成果を収めてきているわけだが、
彼がまったく音楽についてノータッチというわけではない。
むしろいい意味で積極的に音楽についても口を出している。

私が驚いたのは、2006年のワンマンライブで流されたインタビュー映像の内容。
ボーカル涼さんの圧倒的な歌声ばかりが目立ち、
バンドというより涼さんだけの才能が引っ張っているのかと思いきや、
ドラマー海保さんの存在が大きいことをこのインタビュー映像で知った。

「わかりにくい歌詞がわりと多いのですが、それでは聴く人に伝わらない。
伝わらなければ意味がない。だから僕から涼さんにいって、
歌詞を書き直してもらうことも結構あります」

僕はこれを聞いた時、メリログはボーカルだけでなく、
ドラマー海保さんの存在が非常に大きいバンドなんだと思った。
そして歌詞について「もっとわかりやすく」といえるメンバーがいるというのは、
非常にバランスのとれたいいバンドだなと思った。

「音楽をやっているとどうしてもマニアックなテクニックとか、
難しいコード進行とかを使いたがってしまいます。
確かに同じミュージシャンが聞けばおっと思うのかもしれませんが、
聴く人にとってはわかりにくくなってしまいます。
もちろん、わかりやすさだけを重視して、
メリログとしての個性がなくなってしまったら意味がありませんが、
僕が聴く側の役目になり、歌詞や音楽がわかりにくくなっていないか、
チェックし、聴く側にできるだけ伝わりやすい音楽にしようと心掛けています」

僕がメリログが好きになったのはメロディの良さはもちろん、
社会的なメッセージ性のある歌詞の良さもその一因。
確かにわりと難しい言葉が多いかもしれないが、
彼の存在がバランス感覚を持ってうまく調整していることは、
とても大事なことだと思う。

音楽も文章も写真も絵もそうだけど、普通の人が見てわからないものを作って、
「わからない奴はバカだ」みたいな、そういう妙な「プロ」志向を持った誤解する人がいるけど、
僕はそれは違うと思う。
独善的な作品を作って一部にしかわからないものが必ずしも質が高いとは限らない。
そういうことをいう人はむしろ売れている人たちのひがみに近い。
たとえばモーニング娘とかスマップとか、小室哲也の音楽とかを、
バカにする人がいるかもしれないけど、
圧倒的なセールスを記録し、それを聴く人がいるという時点で、
それはそれで立派な作品だと私は思う。
作り手の押し付けにならず、音楽を購入してもらうお客様の視点を忘れない、
彼の姿勢はまさにプロデューサーであり会社の経営者の発想に近い。

「何をすれば売れるか、売れる絶対といえる方程式がないのが今の時代。
だからこそ売れるという確信を持って自分たちを信じ続けながら、
営業・宣伝面でのさまざまな工夫は続けていきたい」

「バンド=自分、自分=バンドでその境目がない」という彼。
サポートのドラマーとして音楽でメシは食えても、
自分の欲望に素直な「有名になりたい」「お金持ちになりたい」「人に影響力を与えたい」
という夢を実現するのはいわば他人任せになってしまう。
メリログなら自分の考えたことを実行していき、
いわば自分の将来を自分で切り拓いていける。
成功するのも失敗するのも、他のメンバーはもちろんだが自分次第によるウエイトが高い。
だからこそ今、彼はドラマーとしての活動は最低限にし、
メリログのバンド活動に注力している。

●4:売れた後は政治家になる?!

バンドで売れたら何をしたいかということについて、
時折ボーカル涼さんと話をするという。
「ミスチルがapbankfesとかをしているのはすごく共感を覚えます。
圧倒的なセールスを記録し、バンドとして売れたら、
僕らも世界をいい方向にしていけるようなそんな活動をしていきたいと思います」

そして売れた後の夢として彼から意外な答えが。
「政治家になって国家や世界をいい方向にしていくことも、
売れた後、何をするか1つの選択肢かなとも思っています。
かさこさんと共通する点かもしれない(笑)」

まさか「政治家」という言葉が出てくるとは思わなかったが、
メリログの社会性のあるメッセージを考えればごく自然なのかもしれない。

「涼さんと時折、資本主義的制度と社会主義的制度のバランスをどう取るべきかなんて、
そんな議論になることもあるんですよ。
涼さんはどちらかというと社会福祉政策を重視する方向性で、
僕はどちらかというと最低限の保障政策以外は競争重視の自由社会という方向性なんで、
政治家になったら彼とは政党は別になってしまうかもしれませんが(笑)」

「アーティスト」や「クリエイター」が政治という言葉を発すると、
引いてしまう人も多いかもしれないが、私はむしろ非常に好感を覚え、
そしてなぜ私がメリログの音楽に惹かれたのかもわかったような気がする。
私がミスチルが大好きなのもその理由だけど、
彼らは現実の社会ときちんと向かった上で音楽をしている。
音楽を通して社会をいい方向にしたいという根底の想いがあるから、
単なる現実逃避な娯楽の音楽だけではない引っ掛かりがあり、
そこに深みが魅力が増している。
「政治家になりたい」と普通にいえるバンドマンに私はより親近感を覚えた。

「『人に影響力を与えたい』という意味では音楽は素晴らしい手段なのかもしれない。
ホリエモンが人の考え方を変えていくことは難しいかもしれないけど、
音楽は人の考え方を変えていくきっかけになりやすいと思うのです。
そういう意味でもバンドで売れることは、
ドラマーとしてメシを食っていくこと以上に、
自分の夢を実現できると思い、バンドにとことん力を入れています」

ドラマーとしてメシを食い、
お金持ちになり、モテて、有名になりたいという夢をベースにしながらも、
バンドとして売れることで、人に影響力を与え、
世界をよい方向にしていきたいという夢も視野に入り始めた彼の、
そしてメリログの活動に今後も目が離せないなと改めて思った。

●5:夢を実現する方法
夢を実現するためには何をしたらいい?という質問に、
「明確なビジョンを持ってそれに直線的にいけばいい」と彼は答えた。
「自分の目的をまずしっかり持つこと。
それに向かって何をしたらいいか、何が必要なのか、
逆算して考えていき、実行していけばいいと思います」

会社の経営者にインタビューしているのではないかという錯覚を覚えつつ、
成功している人は必ずといっていいほど、
この考えに到達するんだよなと思った。
本気でこんなことをしたいという夢があるなら、
ぜひみなさんも、そのために何をしたらよいのか逆算して、
やることをリスト化して実行していけば、
必ず夢は実現すると思っている。

私も「まじめな人が損をしない社会をつくりたい」
という夢の実現のために毎日を大切にしていかなければなと、
海保さんの言葉を聞いて奮い立たされた気持ちだった。
そして彼となら10数年後に一緒に政党を組めるなと、
ひょんな収穫も得られた(笑)。

それにしても彼はほんと柔らかな物腰で腰が低くフレンドリーな人なのだ。
音楽をやって売れていることで傲慢になったり、
アーティスト然として「一般人とは違うんだぜ」みたいな、
妙な気負いがまったくない。
それがとても好印象なのだが、
「実はあんまり腰が低すぎても、ファンから憧れる存在になりにくくなってしまうので、
もうちょっと堂々としていてもいいんじゃないかといわれているんです。
それが今、重要な課題でして(笑)」

そんなことが課題になるほど、とても優しい好青年の印象を持つ彼らメリログだからこそ、
余計に私は好きになり、密にコミットして、
もっと彼らの音楽を広める手伝いができればなと思うのかもしれない。

●取材後、海保さんからみなさんへのメッセージ
今までもこれからも、自分の夢を叶えていくのは
「自分の行動力」と「人との出会い」だと思います。
この記事を読んで、僕に興味を持ってくださった方がいらっしゃいましたら、
どんどんmixiや公式サイトから僕にコンタクトを取ってください!

売れようと活動しているミュージシャンの方、
メンバーを探しているバンドさん、
ドラムで食えるようになりたいと思っているドラマーさん、
音楽関係じゃなくても何か頑張っている方、
自分が何をしたいのか分からない方などなど・・・どんな方でも大歓迎です!
繋がっていきましょう!あなたのコンタクト、お待ちしております!

●海保けんたろーミクシィ
http://mixi.jp/show_friend.pl?id=456363
●海保けんたろー公式サイト
http://www.venture-tips.com/music/
●メリディアンローグ公式サイト
http://meridianrogue.com/

●メリディアンローグワンマンライブ2007【3 to One】
2007年3月21日(水・祝) 表参道FAB

開場 17:00/開演 18:00
前売 \2500/当日 \3000
メリログ・ワンマンライブ、これマジおすすめです!
私もライブ撮影しますが一ファンとしてチケット購入しました。
ぜひ一度、このライブ、おすすめです!
チケット販売
チケットぴあPコード:252-675
ローソンチケットLコード:36560