ビジネス書書評By 書評ランキング

・2006年12月13日 くず本「国家の品格」は読む価値なし
今年227万部も売れたというベストセラー「国家の品格」ですが、
どうしようもない内容ですので、まったく読む必要はありません。

発売されたのは1年前で、その当初、まったく読む気がしなかったが、
国粋主義者安倍晋三総理が誕生して以来、
日本が急に右旋回するようになったせいか、
今年のベストセラーということで大々的に売れているので、
これは無視するわけにはいかないと思い、昨日買ってきて読んだのだが、
まあほんとこれだけひどい、いいかげんな内容を本にするということが、
犯罪じゃないかと思えるほどひどく、
昨年ベストセラーになった「下流社会」と同根である。
第一章のはじめに「身近で見ている女房に言わせると、
私の話の半分は誤りと勘違い、残りの半分は誇張と大風呂敷」といったそうだが、
まさにその通りの本だった。ほんとひどい。

そのひどさをここで簡単に列挙しておくが、その前になぜこの本が売れるのか。
それは、下流社会やホリエモン批判と一緒、
新しい時代についていけない、古い価値観に縛られた連中が、
このような古い価値観万歳!新しい価値観にまったく価値はないといったような本を、
溜飲を下げて読む世代が多いからだと思う。
ようは団塊世代以上の高齢者をターゲットにした、
時代についていけない一部の彼らの世代の不満代弁書というものだ。

彼の言いたいことはわかる。
簡単に言えば欧米化による資本主義化・アメリカ化で、
日本の良さが失われているからそれを取り戻すべきだと。
それはわかるけど、論理の展開の仕方があまりにお粗末だ。

・無意味な欧米批判
欧米化するから日本人古来の良さがなくなるというのはわかるけど、
それを批判するために「欧米は蛮族だった」だの、
日本はその間に万葉集、古今集、枕草子など文化的洗練度が高かっただの、
一体そんな昔の話を持ち出して、欧米が野蛮で日本が洗練されているから、
日本は欧米を学ぶべきではないというのはあまりに情けない論旨展開だ。
それがね、いきなり第一章から出てきてしまうからずっこけてしまう。
もっと説得力のある欧米主義批判っていくらでもあるでしょうに。

・欧米的=論理的→全否定
欧米は昔から野蛮である、今もろくなことはしていない。
彼らは論理的だな近代的合理精神、西欧的な論理の破綻。

だから論理は全否定で情緒が大事というが、
論理も情緒も両方大事という普通の意見がなぜ彼にはいえないのだろう。

情緒だけで論理がなければそれも破綻する。
もちろん情緒がなく論理だけでもうまくいかない。
だから両方大切といえばいいのに、過激な言動で読者の興味をひきつけたいのか、
論理力に欠ける読者の共感を呼び寄せたいのか、
論理を全否定するというお粗末さ。だからどうしようもない本になる。

・株主会社批判
これは発売当初、まだホリエモンが逮捕前だったからだろう。
「会社は株主のもの」という論理は、私には恐るべきものに思えます。
会社は、言うまでもなくそこで働く従業員のもの


こいつ、バカじゃないのか。
会社が従業員のもので株主のものでないとするなら、
それは株式会社ではなくサークルか何かの間違いだろう。
ようは発売当初のホリエモン、村上ファンド批判にのっかる言動で、
若者に批判的な読者を取り込もうという情けない文章が、
今読むと実に情けなく思える。

じゃああんたが100万円出資して株式会社をつくって飲食店を経営したとする。
自分は株主で店舗で働く社員を雇ったが、
その社員がろくに働かないせいで赤字が続いている。
それでもあんたは自分が100万円出資した金のこの従業員につぎ込むのか。
「会社は従業員のもの」であるなら、あんたは金だけ払って口は出せないことになる。
会社は従業員のものなんていい加減なことをいう輩が、
国家の品格を語る資格はないわけです。

・英語を教えると亡国?
小学校から英語を教えることは、日本を滅ぼす最も確実な方法。
もう開いた口がふさがらない。
あのね、日本語を全部禁止し、国語の授業もなくして、
英語だけを勉強しろというなら日本を滅ぼすといってもいいだろう。
しかし別にそういっているわけではない。
国語もしっかりやって英語もしっかりやればいい。
ただそれだけのことなのに、英語を全否定して国語が素晴らしいと持ち上げることで、
ろくに英語を話すことができず、
時代についていけない世代から歓心を買おうというわけだ。

・人を殺していいかどうか
「人を殺してはいけない」ということだって、論理では説明できない。
人を殺していけないのは、「駄目だから駄目」ということに尽きる。
もっとも明らかのように見えることですら、論理で説明できない。


こういう怖ろしい言動を平気で書いてしまう恥知らずさ。
駄目だから駄目ってことに尽きる?
ほんとかよ。論理で説明できない?ほんと?
そもそも駄目だから駄目って誰が決めるんだよって話。
まったく意味不明な言動だ。

・頭の良い悪い
非常に頭の良い男の論理が正しければ正しいほど、結論は絶対的な誤りになります。
あまり頭が良くない人なら、途中で論理が二転、三転して、
最後には正しい結論に戻ったりもします。


こんな記述を平気で書く本が日本中に200万部以上出回っていると思うと、
私は恥ずかしくて全部回収したいぐらいだ。

とまあこういう話を延々とするわけですよ。
ほんとどうしようもないくず本です。
これがベストセラーなんてそれこそまさに「国家の品格」が落ちた証拠だろう。

こんな情けない「教養書」が今、乱発されている。
「下流社会」「人は見た目が9割」「99.9%は仮説」といった、
センセーショナルなタイトルをつけて中身がまるでない新書が、
手頃な価格と手頃サイズと教養のない日本人が、
「教養をつけなきゃ」「バカになりたくない」「みんなと同じ知識を持ちたい」という、
「バカの壁」的強迫観念から、ろくに読まないのに思わず買ってしまう。

それがおいしいドル箱儲けになかったからと、
新書に参入する出版社が増え、朝日新聞や幻冬舎まで新書創刊した。
書店は似たようなテーマで似たようなタイトルの、中身のない新書であふれかえっている。

ほんと残念なことだと思う。
新書といえば一昔前は確か岩波新書と中公新書の2つぐらいしかなく、
大学教授なり専門家が、専門書よりも多少わかりやすく書いた専門分野の入門編的本で、
よく大学の頃、愛読したものだが、最近の新書はほんとひどい。

そのくせこういう輩がネットのブログ文化とかを批判するけど、
「下流社会」にせよこの「国家の品格」にせよ、
その辺のブログより内容はずさんでひどい。

もちろん中には良書もある。
最近では「若者はなぜ3年で辞めるのか」は非常によい本で、
いずれ紹介したいと思っているのだが、
悪い本が多すぎて選べなくなってしまっている。

悪貨が良貨を駆逐するがごとき、かつ悪貨にもかかわらず、
タイトルと売れているという理由だけで買ってしまう人がいるせいで、
こんな情けない本が堂々と売られている。

というわけで、ぜひみなさん、新書を買う時は、
ちょっと立ち読みして検討してみましょう。
はじめの4〜5ページ読めば、だいだいわかりますから。

・「臆病者のための株入門 」橘玲著、文春文庫
証券会社が客を煽るためにまずいうことは、
「株はギャンブルではない」「投機と投資は違う」=だから株をやるべきだと。
それをのっけから、見事な説得力とわかりやるいレトリックで、
「株はギャンブルである」ということを説明する。
というか「株はギャンブルである」と考えないから、みな株に失敗するのである。

株は偶然性に左右される確率のゲーム。
だから確実に儲かる方法や本などない。
事実、金融のプロですらそのほとんどはインデックスファンドより成績が悪い。
デイトレで大儲けできるのは1万人に1人ぐらいの確率。
というか9999人の損があるから大儲けできる1人がいる。

株の仕組みを非常にわかりやすく、そして非常におもしろおかしく、
実に説得力のある軽易な文章で明らかにしていて、
「こんな本が読みたかった!」と感心してしまうぐらい。
ほんと素晴らしい。難しい用語を極力使わずすらすら読める。

ぜひ資産運用をはじめる前に、株をはじめる前に、
この本を読んでみてください。
きっと目が覚めるはず。



・「「投資バカ」につける薬」山崎元著、講談社
すごいですよ、この本。
今ある金融商品をほぼ全否定している。
保険商品も投資信託もみなぼったくり。
こんなに高い手数料とられてはまともな資産運用はできないと、
金融商品の儲けの構造を解き明かし、
金融機関のセールストークのおかしなレトリックを、見事に論破している。

これだけ本音を書けるのはすごいんですよ。
というのはね、エコノミストも評論家もファイナンシャルプランナーも、
みんな今、金融機関の片棒担ぎをして、金儲けしているから、
現金融商品を否定したくても誰も否定できないわけですよ。
しかしこの人、ほぼ全否定している。
これはすごい勇気ある発言。

金融機関が「これが儲かるからぜひ」と勧められたら、
「なぜあなたは儲かるのに買わないのか?」と聞いたらいいという一言が、
すべてを物語っている。
金融機関は手数料で大儲けしている。
その金融商品のパフォーマンスがどうなろうが関係ないわけです。

特に団塊世代は、金融機関からこの本に出てくるような、
さまざまなセールストークで愚かな資産運用をして、
引っかかってしまっているに違いない。
ぜひこの本、読んでみてください。
いかに今の金融商品がぼったくりであるかが明確にわかります。

ただこの本の著者は「だから、国債と個別銘柄の株式投資をするべきだ」というのが、
結論らしいが、それはちょっとどうかと思うけど。



・ベストセラー「下流社会」はほんとにひどい本だ
50万部も売れているという光文社新書「下流社会」三浦展著だが、
読んでみたがとんでもなくムチャクチャでどうしようもない本だ。
タイトルにインパクトがある。
しかも便利な言葉だから、雑誌とかで使われだした。
だから売れた。中身ははっきりいって小学生の作文以下。
こういう本を出すこと自体、犯罪じゃないかと思えるほどひどい。

この本は「所得が低いやつは希望や意欲がない」という決めつけのもと、
延々ただ最近の若者批判をしているだけの老害の本だ。
この本がいかに適当でひどいかは写真とそのキャプションを見てもらえれば一発でわかる。
街角で勝手に写真を撮って、若者が倒れこんでいる写真とかに、
「希望を失った若者が街中に倒れ込んでいる」と書く。
こいつ、バカじゃないのか。この三浦という奴は。
世間に自分の恥をようさらせるよな。
この倒れ込んでいる若者に話をしたわけでもなんでもないのに、
それどころか無許可で撮影している風で、
ただ酔っ払って倒れ込んでいるだけなのに「希望がない」と決め付ける。
そんなの、若者じゃなくたっていっぱいいる。
終始、こういった偏見写真と文章が、もっともらしいデータをつけて展開されているだけだ。

たとえば、高所得者より低所得者の方が「自分らしさ」を大事にすると答えているにもかかわらず、
希望がないと勝手にねじまげる。
低所得者層の方がインターネットばかりやっているだとか、
(まるでホリエモンを批判したフジテレビ社長のごときアホずら偏見だな)
高所得者層は100%結婚しているだとか、どうしようもないデータをもとに、
ようは自分がムカついている若者批判を繰り返しているのだ。

このバカ振りを端的に現しているエピソードを若者批判にかえて展開している、
実に滑稽な記述がある。
「ある大企業のデザイナーや商品企画の担当者を連れて、下北沢の街を歩いたことがある。
(一文略)
ところが、その企業のある人が突然怒り出したのだ。
下北沢という街は、店が始まるのが遅い。
(中略)
それでその人は頭に来たのだ。
おれたちは毎日夜遅くまで残業しているのに、こいつらは一体何だ!」

これを下流社会と名づけ、所得が低いだけでなく希望もない若者馬鹿者と切り捨てる、
このバカっぷりはほんとどうしようもないのに、 若者にこそ「バカの壁」があると批判している。
三浦君、君が「バカの壁」を張り巡らしているんだよ。

こういうどうしようもない高所得者層賛美と、なんでもかんでも、
若者が悪い、ニートが悪い、フリーターが悪いという、
きちんと社会を見ない輩がいるからこそ、
耐震偽装問題にしても、みずほ証券の誤発注につけこんで何十億も儲けた証券会社とかがいるわけで、
そういう「上流」社会の拝金主義と不幸を感じ取った若者が、
正社員になることを拒否しているわけで、それは積極的に選び取った道なのに、
「希望がない」と決め付ける、硬直化した大人がいる。
この「下流社会」を書いた三浦君のような大人がいるからいつまでたっても社会はよくならんのだよ。
ほんとに、ひどい本だな。
これがベストセラーなんて、世も終わりだな。

・2006年12月25日 超おすすめ本「若者はなぜ3年で辞めるのか」光文社新書・城繁幸著
中身のないくだらない新書が多い中、この本の内容は秀逸!
素晴らしい内容でぜひみなさんに読んでいただきたいおすすめの書。
これから就職を考える学生。
就職して「何か違うな」と思っている社会人。
そして若者批判を繰り返す世代にぜひ読んでいただきたい本です。

ここ数年、「ニート」「フリーター」「ひきこもり」という、
まったく別問題の人種を一くくりにして批判するだけでなく、
「若者が悪い」さらには若者の代名詞としての「ホリエモンが悪い」みたいな、
非常に画一的な若者批判が蔓延し、団塊世代をターゲットにした、
若者批判本が売れている中、それに対する真っ当な正論本がこの本だ。

しかもこのタイトル。まったく誇大ではない。
ほんと、みんな辞めていきます。
苦労して就職した会社を。しかもごく短い間に。
理由はさまざまだけど、私はミスマッチと閉塞感の2つがキーワードだと思っていたが、
この本は、さらに年功序列というキーワードを軸に加えて、
見事に若者が辞める原因を解き明かしている。

年功序列が崩壊しているのに、既得権益者を守るために、
若者が仕事のやりがいでも給与面でも搾取されている。


→社会は少子高齢化でいびつなピラミッドができあがっている。
年金もしかり。税負担しかり。そして企業もしかり。
そんな中で、高齢世代の既得権益を維持するために、
そのしわ寄せが若い新人に押し付けられているから、
みんなそれに気づいて辞めてしまうというのは興味深い指摘だ。

社会の二極化が叫ばれるなか、より安定したレールを目指す風潮は強まっているように思う。
そう、昭和的価値観の復権だ。
2005年度の新入社員を対象とした意識調査では、
就職先として「年功序列制度を維持している企業」を挙げる人の割合が42%を超え、
過去10年間で最高を記録した。


→だから、若者も年功序列の恩恵に預りたいと思っているわけで、
年功序列志向が高まっているのだが、
いびつな人口構成でできあがっている企業や、社会、時代の変化に伴い、
年功序列は維持し得なくなっている。
ここにギャップが発生する。
年寄りだけは年功序列を維持するが、
若者には実力主義的賃金を押し付け、早い見切りをつけられる。
自分たちは年功序列の恩恵を受けられそうもないと、
会社に入って気づいて辞めていくんだろうな。

辞められる側の論理〜わがままで我慢できない若者たち
なぜわがままになったか。
企業が大量採用から厳選採用に変わり、
採用時にやりたい仕事を事細かく聞くようになったから。
にもかかわらず、入社するとそんな仕事は与えられない。
だからギャップがある。


この指摘も実におもしろい。
昔は大量採用だったから、やりがいなんて聞かれない。
誰でもとまではいわないけど、まあ簡単に会社に入れた。
だから新人もそんなに仕事や会社を選んで入ったわけじゃないから、
入ったところで与えられた仕事で満足していた。

ところが最近はやれやりがいだの仕事の内容はどうだの、
より実践的なことを面接で聞かれ、厳選採用されるから、
若い人はすぐやりたい仕事ができると期待するが、
実際には上の世代が詰まっているからそうはいかない。
そのためギャップが生じて辞めてしまう。
それを「がまんができない」というのは一方的ではないかという、
著者の指摘は見事だと思う。

日本企業でのキャリアはまったく評価しない。
マックのアルバイトと同じだから。
そういう仕事を自分の意志で何十年も続けてきた人間は、
同情はしても評価はできない。(大手外資系コンサルタント会社の言葉)


→確かにそういう面もあると思う。
これまでの日本企業のスキルって終身雇用を前提にしているから、
その会社でしか通じない仕事能力しか身につかない。
だから急に終身雇用をやめてリストラされると困ってしまい、
タクシー運転手とかに流れていくんだろう。

それは「サラリーマン」と「ビジネスマン」の違い。
会社の仕事をするサラリーマンと、ビジネスをするビジネスマンとでは、
そもそもやっていることが違い、
これまでの日本企業で働く人たちは、
ビジネスマンではなくサラリーマンにしか過ぎないというのはなるほどと思う。

年功序列:キャリアパスが一本しかない:序列が上がらないとキャリアアップはのぞめない

→これに若者が悲鳴をあげている。
なぜなら上が詰まっているのに、自分たちが年老いても、
自動的に序列が上がる仕組みになっていないのだから、
不公平感を募らせるのは当然だろう。

30代が壊れている。
心の病の最も多い年齢層が30代。
なぜか。モチベーションの喪失。 年功序列のレールがぷっつりと途切れる。


年功序列にしがみついてきて、そろそろ勝手に昇進できると思っていたのに、
時代・社会が変わってしまった。
だから右往左往している若者が多い。
そういう30代を今の20代は見知っているから、
すぐに会社を辞めて別の道を模索するようになってしまうのだろう。

しっかりした企業に入りさえすれば、必ずゴールまでたどり着ける。
勝ち負けの差がより鮮明に出る格差社会の到来で、
学生も自分の入社するグレードには敏感になっているのだろう。


→年功序列は崩壊しているからこそ、
若者は中途半端な大企業ではなく、
まだ年功序列が崩壊しない超大企業志向へと走る。

高校生の半数が公務員志望?!
若者が公務員に憧れる理由は、学校教育システムにある。
日本の教育システムは節目節目で受験というフィルターにかけられ、
その成績によってランクづけされる。
よりよいランクに進むためには
与えられる問題に対し、いかに効率的に引っ張り出せるか、という一点だ。
そこには「どんな問題も必ず正答が一つだけ存在する」という大前提がある。
これはそのまま、人生に対するスタンスに大きく影響する。
リスクのともなう結果の不透明な挑戦より、
確実な答えのあるレールを選ぶ気風を、知らず知らずのうちに育んでしまう。


超大企業志向も公務員志向も安定志向も年功序列志向も、
結局はね、今の教育が悪い。
今までは教育システムと企業システムがマッチしていた。
高度成長期で個性なんかより金太郎飴的兵隊がいればよかったから、
言われたとおりやる人間を作る試験至上主義教育システムはよかったけど、
社会が成熟して、経済が飽和してしまっている今、
試験に答えるだけの人間では、ビジネス社会に生き残っていけない。

自分で問題を発見し、自分で試験を作れるような、
そんな人間が今、必要とされているのに、
相も変わらず今の教育は与えられた試験問題への正答率を競うだけ。
だからおかしなことになっている。
そんな能力ではもはや役立たないことを知った若者が、
会社を辞めて資格試験や公務員試験へ逃げていく。

横並びで詰め込み型教育システム→均質で従順な労働者の大量供給
→年功序列型企業の原動力→年功序列崩壊の危機に瀕しながら、
それを守るために若者を搾り取る


→教育システムから変えないと今の社会に順応できる若者は育たないだろう。
それを若者のせいだけにするのは酷だし、おかしい。
教育システムを変え、年功序列・終身雇用を望む若者が約半数という、
そういうとんでもない考えが生まれない育て方、教育をしなければ、
若者が今の社会で「挫折」して当然だと思う。

欧米の有給休暇消化率はほぼ100%に対し、日本は50%弱、
しかもその理由が風邪がほとんどだが、
欧米は体調不良は別枠で処理するのが一般的
日本においては休暇は「会社の恩情によるサービス」であり、
労働者の権利とは認知されていない。
こんなむちゃくちゃな労働環境でも黙々と働く日本人は、たしかに勤勉には違いない。
だが、それを美徳と呼ぶには強い違和感を覚える。


→豊かになっただの経済大国だのと騒いでいるけど、
未だに過剰労働が強いられている。
昔の物不足に育った世代なら、仕事だけをがんばり、
豊かになろうというモチベーションは働くけど、
物にあふれ金に困らない今の若者が、
そんな環境で働き続けることができるかという話。

本書はすべての若者に「年功序列への反乱」を促すものではない。
年功序列とその崩壊に関する事実を話すと、なんと夢のない話だと悲嘆にくれる人が多い。
とんでもない!これほど希望に満ちた明るい書はないだろう。
ひと言でいえば「自分で道を決める自由」である。


→そう、これを読んで若者が社会や企業のせいにするんじゃなく、
もう時代は変わってるんだから、それを前向きに捉えてチャンスにすべき、
という結論は私も大賛成だ。
ただ残念なことに、若者の大半は未だ「年功序列」と「終身雇用」を夢見ているし、
社会の体制も未だそれを中途半端に引きずっている面もある。
時代・社会は変わっているのだから、
それに合わせた人事制度、採用制度、教育制度、社会制度に、
早急に変わっていくべきだと思う。

若者の意識も変わる必要はあるが、
若者が辞めるのをすべて「最近の若い者は」で一言で片付けていた連中も、
企業のあり方、働き方、社会のあり方を見直す必要があると思う。
そうすれば、私はとてもいい時代になると思う。

働くことだけが人生ではない社会。
アホみたいに会社に滅私奉公しなくてもいい社会。
人々が幸せになれる健全な社会のチャンスだと思うので、
それに合わせた価値観を変えた若者と大人を育てていくことが重要だなと思う。

若者が会社にノーをつきつけ、様々な働き方・生き方の選択肢が多様化することで、
年金制度、社会保険制度、退職金制度は根本的に変わっていくだろうし、
転職・起業・第三の道(フリーランス)という働き方の多様化が当たり前の時代になる。
ぜひ日本全体が「年功序列」「終身雇用」からの卒業を考えるべきだと思う。
この本を読むとそれがよくわかる。



・言葉を欲する〜「探究T」柄谷行人〜
物を書くということを本格的にはじめるにあたり、とにかく毎日書くことを一つの課題としているが、
もう一方でとにかく本を読むこと、「乱読」を課題として取り組んでいる真っ最中である。
去年旅先で出会った人たちが読書好きが多く、いろんな本をすすめてもらったこともあり、
また自分がいかに本を読んでいないかと実感させられたので、とにかく今年は先入観で作家や本を判断せずにとにかく読もうと決めた。
今年に入ってから読んだ本は69冊に達した。

今まで本を読んでいなかったわけではないが、ジャンルが偏っていた。
特に最近のベストセラー作家の小説というものは読んだことがなかったので、とにかく今読みまくっている。
小説であれば、言葉は平易だし会話部分も多いし、物語の流れに沿って読んでいけばあっという間に読み終えてしまう。
ところが小説という柔らかな文章ばかり読んでいたせいか、時折、難しい論文のようなものを読みたくなるという欲求が出てくる。
そこでこの「探究T」柄谷行人著という本に挑戦してみたのだ。

「今日言語(形式的差異体系)に固執することは、「意識」をこえているかにみえて、「意識」に固執する独我論の変型なのである。
つまり、いわゆる”唯言論”(丸山圭三郎)とは、”唯我論”の再版にすぎない。」とこんな感じの文章がずらっと続く。
200ページちょっとの本であり、とりあえず全部読んだが、この本が何を言いたかったのか全く理解できなかった。

それもそのはず、出てくる人物といえば、ウィトゲンシュタイン、ソシュール、フッサール、ラッセル、スピノザ、マルクス、カント、
デカルト、フロイト、キルケゴール、ヘーゲル、ボードリヤール、ハイデガー、ドストエフスキー、柳田国男、プラトン、ニーチェ・・・など。
出てくる学問は、論理学・現象学・言語学・心理学・精神病理学・古典派経済学・数学論・哲学・物理学・宗教学・幾何学などなど。
もちろんそれに伴って、出てくる単語は、モノローグ、ポリフォニー、コード、観念論、唯物論、超越論、弁証法、物象化、実存・・・。
もうはっきり言って何を言っているのかさっぱりわからないのは当然なのである。
ただここに出てくる単語や人物は「現代思想を読む辞典」に載っていて、ほとんどが学術的には常識であり基礎知識なのである。

読んで意味がわからない。読み返そうがゆっくり読もうがさっぱりわからない。
にもかかわらず、なぜか僕はむさぼるように文を読みつづけた。難しい言葉に飢えているかのように。
結局意味はわからなかったが、なんか読後感は満足するものがあった。
たまにはこうしてわけのわからない難しい単語の集合体を読んでみることも、何の役にも立たないとは思うが、いいのかなという気がした。

言葉に飢えているあなたには、ぜひこの一冊をおすすめする。
この本の言わんとしていることがわかったら誰か僕に教えてほしい。
しかし全く意味のわからない本を、むさぼるように読み終えてしまうという衝動は一体どこからくるのだろうか。
※ということで、かさこさんは日々勉強の毎日なので、大学生のレポートをお手伝いすることはできると思います。

アツイコトバ 杉村太郎
「絶対内定」で非常におもしろく就職活動に対して熱いメッセージを送ってくれた、
彼の言葉を集めた本ということで探し回って大いに期待していたのだが、
まったく情けないほどたいしたことのない内容。
まず圧倒的にページが少ない。
それとこれのためにとってつけたような軽い内容を無理やりアツイコトバにした感があって、
まったく響いてこない。
それだったら「絶対内定」に書かれている言葉の方がよっぽどもじんとくるし、インスパイアされる。
非常に残念。
こんな情けない本、誰がそそのかして作ったんだろうか?
疑問でならない。

質問力 齋藤孝
質問する力は大切というそのメッセージ1つにはふむふむと思うところも多いし、
前段の質問力全般についての論旨展開は感心できる部分も多いけど、
後半になると著名人対談から抜き出した文章を抜き出して、
「これだからこの人の質問はすごい」みたいな解説文主体になっているんだけど、
1:本になった対談は、まるっきり言った言葉そのままになっているとは限らず、
もしかしたら多少、流れがいいように文章を変えている可能性があり、
その文章を引用して「すばらしい質問だ」というのは無理がある

2:お互いビックな著名人対談では、一般人の質問の参考にならない。
著名人はその人のパーソナルな情報が世間にいっぱい出ているわけで、
そういったところを調べてインタビュー(質問)できるけど、
一般人が想定する質問力というのは、
相手がどんな人かわからない場合が多く、
少ない時間でいかに効果的な質問をするかという意味での参考例にならない。
3:一般人の質問力を高めるというより、取材記者のインタビュー術的な内容に近い。

以上のような内容なので、普通の人が普段の日常生活にこの質問力を応用しようとしても、無理だと思う。

話題になったが、たいしたことない本「社長をだせ!実録クレームとの死闘」川田茂雄著

「社長をだせ!」という本が数年前に話題になり、その文庫本が出た。
しかし読んで見てちょっと驚いた。
これを読んで真っ先に思ったことは「クレームつけたらこんないい対応してくれるんだな」ということだった。

確かに、最近、クレームをつける人も非常に多いが、
とはいえ、まだまだ日本的な「恥」の文化みたいなものがあって、
実際に欠陥があっても文句をいわない「サイレントクレーマー」が多いのも事実だろう。
しかしこの本を読むと、欠陥でもなんでもなく、
自分のミスをたてにとり、いろいろごねると、
企業のクレーム担当者は随分いろんないいことしてくれるんだなという感想だった。
クレームとの死闘というより、クレーマーとの妥協じゃないか。

どうもカメラ会社らしく、クレームのパターンもはっきりいって何度も同じ。
ようは製品の欠陥ではないが、なんらかのミスでゴミが入ったりとかして、
せっかく写したものが写っていないというクレームがほとんど。
てっきりいろんな種類のクレームがあるのかと思いきや、
パターンは同じで死闘というより妥協の連続で、
交渉術をそこから学べるような実用的要素もない。
はっきりいって期待はずれかな。
ただ一点、クレームはごねれば企業はあれこれいいことしてくれる。
そんなどうしょうもない結論だけがわかるだけだな。