トラベルライターになるには かさこワールド プロフィール 仕事の依頼

旅行が好きでトラベルライターになりたいという人も多いはず。
でもどうしたらなれるかというのはなかなかわかりにくい。
トラベルライターといってもいろいろな媒体によっても違うが、
私がやってきた海外ガイドブックの経験から参考になることを列挙しておきたい。

1:トラベルライターになるには
旅行が好き。それを職業にしたいという人も多いことだろう。
旅行会社とか添乗員になるにはどうしたらいいかということは、容易に想像つくかもしれないが、
「トラベルライター」ないし「トラベルフォトグラファー」になるにはどうしたらいいかというと、
これは一般にはわかりにくい仕組みになっている。
私は5年前、消費者金融をやめ、トラベルライターになりたいと思い、
なるための本をいろいろ読んだりメールでその著者に質問したりとかして、
それから3年後にやっとトラベルライターになれた。
まあ本当になりたい人はいっぱいなるための本が売られているのでそれを参考にしていただければと思うのだが、
私自身の体験談から、多少のアドバイスができればと思う。

旅行記事を書くのは単発の雑誌の特集記事を書く場合と旅行ガイドブックの記事を書く場合とに大きく分かれる。
一番てっとり早いのは旅行ガイドブックを実際に取材して作っている会社に入ることだ。

ここで大きな勘違いがあるのだが、基本的に出版社の人間は編集を担当するだけで取材はしない。
地球の歩き方のダイヤモンドビック社とかその他、旅行ガイドブックを作っている出版社に入っても、
一部の例外をのぞき、一般的には取材はない。
出版社の社員の仕事は「編集」であって書き手ではない。
自社のガイドブックを何冊も抱えて、形に仕上げていくための最終的な制作責任者であるから、
彼らが取材そのものに携わることは仕事の範疇ではないのだ。
小説で考えてみればわかるけど、出版社の社員が小説の著者になることはないのと同じように、
旅行ガイドブックの取材・執筆は担当しない。
それが本来の出版社の編集という仕事になるので、旅行ガイドブックには携われるが、
実際に取材に行きたいことが目的ならあまりおすすめはできない。

どの旅行ガイドブックでもそうだが、実際に取材に行き制作しているのは、
多くの場合、編集プロダクションである。
出版社の下請けで、本を作る実作業を担当する。
だから、もし取材に行く仕事をしたいと思うなら、
本の奥付を見て、編集制作している会社名を見つけ、
そこに電話をかけて雇ってもらうのが早道だ。

このような編集プロダクションはほとんどが2〜20名ぐらいの超中小企業であるので、
たとえば学生とかが会社名を聞いただけでは知らないだろうし、
当然、大企業と違って待遇はあまり良くない。
給料が少ないわりに長時間労働、徹夜も土日出勤も当たり前、
でも好きな仕事ができる、ないし、大企業と違って小さな組織で仕事ができるという人が集まってくる。

奥付をみて会社名を調べてそこに電話をかけるか、
毎年、創出版から出ている「マスコミ就職読本」の新聞・出版編に、
編集プロダクション100社以上の連絡先、会社概要が載っているので、
それを参考にするとよい。
ただここに載っている以外にも無数にあるので、やりたい本の奥付を見るのがてっとり早い。

このような小さな編集プロダクションは中には、リクルートや毎日コミュニケーションズの、
人事募集ネットサービスを使って求人を行っている会社もあるし、
朝日新聞の朝刊に載っている求人募集の欄に掲載している会社もある(他の新聞は少ないので絶対朝日新聞がいい)が、
みなどこも小さな会社なので、大々的に社会的に求人を行っているところは少ない。
ただきつい仕事ということもあり、若いスタッフが多く、たいがい2〜3年ぐらいでやめていく人が多いので、
そこに直接、電話をかけて、やりたいという熱意を伝えれば、雇ってくれるチャンスはある。
そこにうまいこと入り込めば、晴れてトラベルライターになれるわけである。

ただ何の編集・ライター経験がないまったくの未経験の場合は、
アルバイトからスタートないし、アルバイト並の給与しかもらえない可能性があるので、
これで食っていこうと思うとなかなか苦しい(そのせいか親と同居している若い女性が多い)。
学生時代からアルバイトとして会社に入り込んでしまうとわりにあとがスムーズではある。

・私の場合
1.消費者金融退職後の転職活動
私は25歳でそのような旅行書中心の編集プロダクションに転職しようと思ったが、だめだった。
編集や旅行とは何の関係もない、それどころか金融という最もかけ離れた世界と思われる業界にいたと思われたので、
まず募集している企業に履歴書を送ってもまず間違いなく書類で落とされる。
そこで私は旅行書編集プロダクションにこだわらず、
なんでもいいから制作物を作っている編集プロダクションに枠を広げて転職活動をしたのだが、
やはり上記のような理由でほとんど書類で落とされるばかりだったが、
面接を受けさせてくれたところがあり、そこにたまたま熱意を認められ、
また多分、クレジットカードのDMをやるということもあって入れてくれた。
とりあえずそこで編集・ライター経験を積んでからトラベルライターになろうと思った。

2.広告系編集プロダクション退職後
広告系編集プロダクションをやめると上記のような方法で旅行書編集プロダクションに直接電話をかけ、
雇ってくれるよう転職活動をしたのだがこれもなかなか厳しかった。
年齢がもう27歳ということもあったし、結婚していたことも敬遠される原因になった。
(ようは給料が安いので、所帯持ちや高年齢者は雇えないというわけだ)
しかし何社か電話をかけている中で、今の会社に雇ってもらえることになり、
晴れてトラベルライターになれたというわけだ。

おかげで、そこに就職後は、
ラスベガス、シアトル、オーストリア、ポーランド、上海、サンフランシスコ、チェコ・ハンガリーと、
約2年で7度の海外取材に行けることとなったのだ。

2:トラベルライターになるために必要な技術とは
●必要そうであまり必要ないもの
1:文章力
文章力はあったにこしたことはないが、別にそれがなければなれないということはない。
書く内容は主にレストランやショップ、ホテルの紹介やみどころ紹介がほとんどで、
特別な専門知識を必要とする文章を書くわけでもないし、
インタビューなど長い文章を書くわけでもない。
小説を書くような想像力もそれほど必要としない。
どちらかといえば短い文章で事実を端的に伝える文章が主眼となるので、
文章力があるかないかに捉われる必要はない。

ただ分野が幅広いのでいろいろなことに興味を持っていることが必要だ。
イタリア料理にだけ詳しければいいというわけでもないし、
シャネルにだけ詳しければいいということもない。
歴史的な知識が必要な場合もあるし、最近の新しい情報に目を向ける必要もある。
できるだけ浅く広く知っている人の方が向いている側面はある。
ただし、特定地域に詳しいというのは大きな武器になる。

2:英語
海外を専門とするトラベルライターをしていると必ず聞かれるのが、
「英会話力が必要ですか?」ということだ。
もちろん必要最低限は必要だけど、語学のプロフェッショナルなごとくの語学力は、
あるにこしたことはないが、そんなものはなくても大丈夫だ。

近年、語学ブームというか英会話信仰みたいなものがあって、
英語ぐらいできなくてはと思う人も多いが、
英語はあくまで手段であって目的ではない。
最近の人は英会話スクールないし英会話本で勉強することが目的になってしまい、
それを使って何かをするという目的意識が欠けている場合が多い。

トラベルライターで使う英会話というのはそんなに複雑なものはない。
もちろん話せるに越したことはないが、片言程度でも別に問題はない。
「取材」というと大層難しそうな作業に思えるが、
聞くことといえば店の営業時間だとか電話番号だとかそういったものが多い。
別にその人の生い立ちを聞いたりとか、社会構造を聞いたりとか、
専門的な趣味についてとか特定の分野とかを聞いたりするわけではないので、
旅行英会話力があれば十分で、そのために英会話スクールに通う必要はない。

また旅行している人ならわかると思うが、
何もコミュニケーションの手段は英会話だけではない。
ゼスチャーとか紙に書いたりだとか、指差したりだとか、
そういったボディラングエッジ的なコミュニケーション能力も重宝する。
あくまで旅行するために必要な最低限の情報さえ聞いてこれれば、
英会話がトラベルライターになるための必要条件にはならない。
ただ、もちろん、英会話力があればあるに越したことはないが。

●必要なこと
1:旅好き・旅慣れ
当たり前のことだけどトラベルライターになるのに一番重要なのは、
自分自身が旅行が好きでかつ旅慣れしているということだ。
取材時に必要とされるコミュニケーション能力も、
取材時に起こるさまざまな突発的な出来事やトラブルも、
旅慣れしていないとしんどいものがほとんどだ。
文章力や英会話力の前にとにかくこの旅慣れしている経験がないと、
取材できないことはないが、現地でのパフォーマンスが大幅に落ちてしまうだろう。

また旅行前に内容を考える企画や構成案にしても、
ガイドブックを使う側の立場に自分が置かれていた経験があることと、
取材前から想像しうるその国の旅行感覚みたいなものは、
旅好きでアンテナを常にはっていて、旅慣れしていていろいろなところにすでに行っていないと、
いざ仕事でしようと思ってもなかなかうまくいかないことが多い。

当たり前だけど旅が好きなことと慣れていることが大前提だ。

2:写真撮影
「ライター」といいながら、写真撮影を兼ねる場合が圧倒的に多い。
というのも少ない制作費の中で莫大にかかる取材出張費用を抑える、
最も手っ取り早い方法は、ライターとカメラマンを兼ねることだ。
これで出張費用が半分になるし、外注費用も半分になる。

広告主体の女性誌や旅行誌などなら、広告収入で贅沢な制作費があるから、
編集も行き、ライターも行き、カメラマンも行くという、大名取材ができる場合もあるが、
ガイドブックではまずそれはない。
なのでトラベルライターになるなら撮影技術があるかないかが大きなポイントとなる。

もちろんプロのカメラマンレベルに撮れる必要はないのだが、
いわゆる素人旅行スナップ写真ではなく仕事用としての写真撮影知識と、
一眼レフカメラをわりに使いこなしていること(自分で持っていること)が求められる。
カメラができないとトラベルライターとして現地取材することは難しく、
旅行誌専門の編集プロダクションに入れたとしても、
カメラができるフリーのライターに外注して、
自分は取材せず、行ったこともない国のガイドブックの編集作業を、
お留守番でやることになってしまう。

以上が、トラベルライターになるために必要なことです。

3:旅行ガイドブックの仕事の現場:取材なしの場合
旅行ガイドブックの仕事は大きく分けて、取材なしパターンと取材ありパターンとがある。
「旅行ガイドブックにもかかわらず取材がないの?」と、
取材がしたくてトラベルライターになろうと思っている人にとっては不満かもしれないが、
毎年たいして変わらない情報のために取材費を使っていたら金がかかってしまうので、
取材を行なわないでガイドブックを作ってしまう年もあるのだ。

国内でも海外でもそうだが、主な観光名所とか有名なレストランとかは、
たいして内容は変わらないわけです。
それをいちいち取材しなおすなんてお金をかけていたら商売にならない。
だから数年前に取材した写真や内容を基本的にそのまま「流用」するわけです。
こうすれば取材はいらない。

ただし、営業時間だとか若干の内容変更だとか潰れてしまった物件とかもあるかもしれない。
そこで1〜2年に1度、掲載している情報が正しいかチェックをする。
チェックするのは国内だったら電話とかファックスで確認してしまえばいいし、
海外だったら現地に住んでいる日本人などに電話してもらって確認してしまう。
そのチェック結果をもとに、去年掲載した情報に訂正の赤字を入れていけば、
「取材なしガイドブック」が見事に完成するわけである。
だから必ずしも旅行ガイドブックの制作の仕事に携わったからといって、
毎回、取材があるわけではない。

ただ当然、チェックした結果、掲載しているレストランが10軒つぶれてたとか、
新しい地下鉄ができたとか、新しいテーマパークができたとか、
どうしても新しい情報に差し替えしなくてはならない箇所が出てくる。
それがあまりに多い場合は短期取材を行なう場合もあるが、
ほとんどの場合は取材なしで済ませてしまう。
取材なしで新しい情報をどうやって掲載するか?
簡単なことである。新しく掲載する物件元に電話なりメールなりして、
情報と写真を送ってもらうのである。

大きなホテルやレストランなどはいい状態で撮った広告用の写真を持っていて、
それを貸し出ししてくれる。
もちろん情報についても「プレスキット」というのがあり、
営業時間からメニューについての情報からシェフのプロフィールから、
さまざまな情報が書いてあるものをくれる。
こうなるとまったく取材がいらない。
国内のガイドブックで有名レストランの料理写真だとかホテル内の料理写真とか見てもらえればわかるだろうけど、
違うガイドブックで同じ写真をよくみるのは上記の理由からだ。
取材元からの写真提供で取材なしでガイドブックを作っているからこのようなことが起こる。
当然、情報元も紙ないしPDFないしホームページからとった情報になるので、
文章も似たようなものになる。

別にこれが悪いといっているわけではない。
取材される側としても取材者やカメラマンの力量によって、
自分のところのおいしい料理がまずそうに写されたらかえってマイナスイメージになりかねないし、
間違った情報を載せられたら困ってしまうので、このような形をとる場合が多い。
ちなみに国内の場合だと、大概、店取材をした先に、
本になる前に原稿と写真を確認してもらうのである。
これは間違った情報を載せないための対策といえるが、
逆にいえば、こうして取材先に原稿を確認してもらうわけだから、悪いことは書けないわけである。

たとえば眺望を売り文句にしているレストランがあったとして、
でもそれは数少ない窓側の席だけの話であって、
ほとんどの席からはたいして眺望が良くないとしても、そう正直に書くことはできなくなる。
本来なら読者に誤認されないように、
「窓側の席からの眺めは非常によいが、ほとんどの席はあまりよくない」
と書いてあげればわかりやすいんだけど、取材先に原稿確認してもらうから、
「窓側の席からの眺めは最高!」という書き方になる。
もちろん嘘をいってはいけないけど、上の書き方なら嘘をついてはいないのでOKとなるわけだ。
中にはクレームを恐れる店側が、眺めのよい席は少ないので、あまり強調して書かないでくれといった、
リクエストがある場合もあるが。

海外は原稿確認は基本的にしないが、国内の場合は原稿確認が多いので、
たいしておいしくもない店が過大に書いてあったり、
ラーメン本のように300軒どこもすべておいしい店みたいな、
あり得ない本ができてしまうわけである。
もちろん味については人によって感じ方が違うので、一概にいうことはできないが、
明らかにスタッフの対応が悪いだとか店が汚いだとか、
客観的にわかることでもマイナス的なことは書けなくなる。
だから、「ガイドブックに載っていた店に行ったのにたいしたことなかった」と、
がっかりすることも多いわけだ。
※だからこそ私は個人的な感想であっても正直に思ったことを書く、
ラーメン探訪のようなコーナーを作っているわけだが。

多少、話は脱線したが、ようは取材なしパターンで作るガイドブックというのが結構多いことは事実である。
フリーでトラベルライターになれば、取材があるガイドブックの仕事をしている、
何社もの編集プロダクションに営業に行き、そこから仕事をもらえばいいわけだが、
特定の編集プロダクションに勤めている場合は、
担当している仕事が取材なしパターンの年かそうでないかによって、
自分が取材に行ける行けないが決まってくるというわけだ。

・4:旅行ガイドブックの仕事の現場2:取材ありの場合
先日「旅行ガイドブックの仕事の現場」で、あまり取材はなく、取材なし仕事が多いと書いたが、
もちろん、取材する機会もあるし、それがなければ、いい本は作れないだろうし、
安い給料で長い労働時間で働く意義がない。
今回は取材ありの場合の仕事の流れを紹介しよう。

まずガイドブックの仕事で取材ありの場合はどんな時か。
1:日本人観光客が大挙して押し寄せる地域で、広告もいっぱい入る場所
国内のガイドブックなどは2〜3年に1度の新規取材では読者から飽きられてしまうので、
書籍形式はともかくムック形式のものは毎年取材しなおし作り直すことが多い。
しかも見て分かるとおり、いっぱい広告ページが入るエリアは、
それだけ広告収入も入るので制作費が豊富なわけだ。

海外ガイドブックではなかなか毎年新規取材があるというのは非常に少ないが、
日本人が大挙して押し寄せるハワイとかパリといった場所は、
頭の巻頭ページを新規取材しなおして変えるといった場合が多い。
よく日本人が行く地域ほど、読者がいろいろ知っているので、
「多少でも現地取材をして新しくした感を出さなくてはまずい」という制作側の意図が働くからだ。

2:これまでに掲載されていない地域を作る場合
市販のガイドブックでまだ出ていない地域のガイドブックを作る場合は、もちろん新規取材がある。
出ていない地域といっても何も辺境エリア、辺境国に限らず、
たとえば、今まで「中国シルクロード」という本はあったんだけど、
カシュガルは載せてないからそこを追加しようとか、
「横浜・川崎」という本だったんだけど、川崎だけで1冊作るから、
川崎のページが大幅に増えるので取材をし直さなくてはならないとか、
そういった形での新規取材ができる可能性がある。
そのチャンスにうまく出会えれば自身が取材に行けるチャンスがあるのだ。

※私の場合でいうと、ポーランドはそのパターン。
これまでポーランドはなかったが、チェコとハンガリーとくっつけて、
新たにポーランドを紹介するということで、ポーランドへの新規取材にいけた。
ただしそこに加えたブルガリア、ルーマニア、スロヴァキアなどは、
わざわざ取材するほどのことでもなく、掲載ページ数も少なかったので、
観光局やカメラマンや団体などから写真と資料を借りて取材なしで制作した。

●取材の流れ
1:
まずどんなページを作るかイメージ(ラフ)を作る。
レストラン紹介ページが何ページあり、1ページに何軒紹介するのか、
特集は何にするのかといった大まかなページイメージを作る。
その上でそれに対応した取材すべき物件(みどころ、ショップ、レストラン、交通、ホテルなど)をピックアップし、
取材に出掛ける。

2:取材する物件のリストはある程度、自分でネットや観光局や他ガイドブックや旅行パンフを参考にして、
ピックアップするが、当然それだけでは情報としてあまり新鮮ではないので、
日本にある各国の観光局(または大使館)、国内の場合や役所の観光課や観光協会、現地の旅行会社など、
または取材する地域に詳しい人もしくは取材地域に住んでいる人をみつけて、
その人から情報を仕入れ、おいしいレストランやめぼしい店などをピックアップしてもらう。
そういった人に、取材のアポイントもしてもらう。
もちろん、取材先をリストアップしたりアポイントをとってもらうにはお金を払う場合が多い。

3:アポイントをとってもらった上で実際に現地取材に出掛ける。
媒体によっても地域によっても違うのだが、アポイントなしで、
現地で適当に店を見つけてそこを取材してしまう場合ももちろんある。
基本的にアポイントがなかろうがあろうが、取材先には掲載するということを断った上で取材なり撮影なりを行なう。
時と場合と地域によっては、掲載許可をとることなくそのまま勝手に取材して掲載する場合もある。

みどころの場合は、教会内とか城内とか館内の撮影には許可が必要な場合が多く、
無断で掲載するといった場合は少ない。
観光客の撮影が禁止されているところでもガイドブックに掲載するということで、
特別に許可をもらうことも多い。
そういった複雑な交渉はこちらではできず、上記の取材コーディネートをお願いする人に、
取材前に事前にお願いする場合がほとんど。

4:現地取材にはガイドがつく場合とつかない場合がある。
ようは制作費の予算次第ということもあるが、エリアによってどうしても必要なところとそうでないところがあるので、
それで現地ガイドのありなしを決める。
たとえばアメリカなどは英語が通じるのでまずいらない。西欧もしかり。
しかし中国だとかロシアだとか英語がまず通じず、
基本的に現地語でないと取材ができない場合は現地ガイドをつける場合が多い。

現地ガイドは、現地在住の日本人、旅行会社の日本語が話せるガイド、旅行会社の英語が話せるガイドといったパターンがある。
私の場合、中国東北地方取材では、日本語が話せる中国人ガイドについてもらって取材、
チェコでは英語が話せるチェコ人ガイドについてもらって取材、
ラスベガスでは一部だけど日本語が話せる現地在住の日本人ガイドについてもらって取材、
といったパターンを経験している。
ハンガリーやサンフランシスコなどではガイドなしで一人で取材した。

5:また現地取材の際、カメラマンと一緒に行く場合と一人で兼ねる場合とがある。
カメラマンと一緒に行く場合は、ライターとして取材しながら、
カメラマンに撮ってほしい写真を指示するといった編集的仕事もこなす。
予算がない場合、予算を節約する場合、ある程度写真が撮れるライターである場合、
それほどクオリティの高い写真を必要としない場合は、トラベルライターがカメラマンも兼ねる。
取材をして写真も撮る。旅行ガイドブック取材の場合は、当然、長丁場の現地取材になり、
一人で取材するか、カメラマンもつけて二人で取材するかで、取材費用は雲泥の差だ。
当然、一人で取材すれば取材費用を半額に抑えることができるので、
カメラがある程度撮れるライターが重宝されるというわけだ。
もちろん、カメラマンに行かせて、カメラマンがライターを兼ねるという場合もある。
それゆえ、この業界では「カメライター=カメラマン+ライター」という聞きなれない言葉がまかり通っている。

6:さてさて現地取材は楽しいな。現地で空いた日もあって遊べるんじゃないか、
なんてただで旅行ができてうれしいななんて動機だけでこの職種をめざすとえらいめにあう。
旅行ガイドブックは金がかかるわりに情報の更新頻度が高いために、
労多くして儲けの少ない類であるから、取材にいったらみっちり、
朝から晩まで、1日たりとも自由日などなく取材三昧となる。
しかも取材対象はいわゆる観光名所より、レストラン・ショップ・ホテルばかりになる。
(観光名所は毎年撮らなくても同じなので)
1日7〜10件ぐらいレストラン、ショップ、ホテルをめぐる日が、
1週間〜3週間ぐらい続くわけである。
これを楽しめないと、当然、仕事は辛いだけになる。

7:そして帰ってきてから、膨大な写真と資料と格闘し、
写真を選び、文章を書き、データをチェックし、実作業をする。
取材して仕事が終りではなく、その後もそれと同じぐらいの時間を、
原稿を書き、整理するという作業をしなくてはならない。
ここまで含めておもしろいと思えるなら、トラベルライターをめざすとよいだろう。

・「ただで旅行に行けるから」だけではトラベルライターになれない
自分に合った仕事は何だろうか?
きっとその答えが見つからないから、
フリーターとかニートとか増えてるんだろうし、
別にそうでなくて一応働いていても、どこか精神的に満足感を得られず、
なんとなくもやもやしたキモチを引きずったまま、
仕方がなく働いている人も多いと思う。
これがレベル1。

ところがもうちょっと自分の人生を真剣に前向きに考え出すと、
自分の好きなことを仕事にしよう!と思う。
はじめは好きなことなんて仕事にできないってあきらめてるんだけど、
社会のさまざまな仕事をいろいろと調べてみることと、
自分にとって好きなことをもうちょっとフラットな視線で考えてみると、
それに合致した仕事がおぼろげながら見えてくる。
そしてそれを仕事にするぞ!と思っている人がレベル2。

今回はこのレベル2に達した人へのアドバイスを、
「トラベルライター」という例をとって解説してみたい。

私もそうだし、多くの人がこういう。
「旅行が好き」=だから「トラベルライター」。
そしてそこには大きな「不純」ともいえる動機が含まれている。
自分がただで仕事で海外にいけるなんて超ラッキー。

もちろん、旅行を好きでもない人、旅行に行かない人、旅行慣れしてない人が、
旅行関係の仕事に就くことほど不幸なことはない。
だから旅行が好き。だからトラベルライターというのはまったく間違ってない。

でも、自分がただで旅行にいけるから。
それだけでは残念ながら仕事は成り立たない。
ここでしっかり頭に入れてほしいこと、それは、

金を払ってやるのが趣味。
金をもらってやるのが仕事。


という違いだ。

仕事というのは金をもらってやるわけで、
何もあんたの趣味のために誰かが金を払ってくれるわけではない。
金を払ってくれる人の役に立つから仕事が成り立つわけだ。
そう考えると「ただで海外に行ける」という動機だけでは、
トラベルライターになれるかもしれないが、
仕事が嫌になってしまうか、いい仕事ができないか、そのどちらかになってしまうだろう。

よくトラベルライターになりたい人から質問を受けるのは、
「取材時は自由時間はどのぐらいあるんですか?」ということ。
皆無に近いと答える。そうするとがっかりする。
それはトラベルライターの仕事をしたいから、ではなく、
単に自分が旅行に行きたいだけ、だからなのだ。

もし旅行に行きたいなら休みをとって海外旅行に行けばいいのだ。
仕事と違って自腹だとしても、自分の行きたい場所にいけ、
もちろん毎日が自由時間で、何かをやることに追われる必要はない。
旅行が好き=トラベルライターになりたいと考えたら、
まずこの問題を考える必要がある。
旅行は趣味なのか、仕事なのか。

トラベルライターがお金をもらえるのは、読者に役立つ情報を提供できるから。
だとするならば、取材時に自由時間で遊んでいる暇があったら、
よりもっと現地の情報を集めて読者が便利になったらいいなとか、
そういう行動を取れる人こそ、本当はなるべきなのだ。

だから多分、本当のトラベルライターになるべき志望動機としては、
「旅行が好きだから」だけでなく、
「旅行に行った時、ガイドブックが役に立たなかった。
もっといいガイドブックを作りたいとか、
ガイドブックがとっても役立ったから、自分もそれに恩返ししたい」。
そういう気持ちを持った人がなるべきなんだと思う。
もちろんこれはあくまで理想論で、私だってただで行けたらラッキーと思うし、
そういう動機からなったことには間違いない。
ただ今、トラベルライターをやってみて思うのは、そういうことだ。

こうなってくると旅行書の出版社に勤める編集者になりたいと思う志望動機も、
「旅行書担当になればただで旅行にいけるかも」ではなく、
「読者に役立つ旅行書を作るには、どんな情報が役に立ち、
どんな厚さや重さだと本が持ちやすいのか、どんなデザインにすると見やすいのか。
とかそういうことを考えたい」と思っている人なのであって、
旅行に自分が行きたいからという理由ではないはずだ。
だから、もちろん旅行書の出版社の編集担当者が取材に行く機会が、少ないのは当然といえば当然なのだ。

お金をもらって仕事をするということは、お金を払った人に役立つということ。
単なる自己満足で「自分が好きだから、自分が好きなことができるから」という、
浅い意味での「好きを仕事にする」と勘違いしてしまうと、
厳しい会社では当然、選考などで落とされてしまう。
会社が求めているのは金を払ってあんたの旅行援助することじゃなく、
読者の役に立つ旅行情報をかき集めることができる、情熱と技術があるかを求めているわけだから。

レベル1の段階の人よりレベル2の人の方が、
一生の大半を占める仕事選びにおいていい選択をしているわけだけど、
単純な自己満足的好きだけを押し通そうとすると、
趣味と仕事のギャップに悩むか、会社からノーをつきつけられるかになる。
だから、もう一歩踏み込んで、その仕事のことを考えてほしい。

やりたいことが自分が旅行に行きたいだけなら、趣味で旅行に行くことをおすすめする。
絶対にその方がいい。自由時間が皆無に近い取材で海外にいけても、
それをおもしろいと感じられないからだ。
なぜその仕事が仕事として成立するのか。
その仕事に金を払う立場に立って物を考えてみて、
それに対して自分が役立ちたいという意志と情熱、
転職者の場合にはその技術がある、
それならトラベルライターになればいい。
そこをぜひとも勘違いせず、自分が好きなことと仕事内容とのすり合わせをして、
仕事選びをしてほしいなと思う。

でないと、下手をすると好きを仕事にするというのは、
「天下りできて私腹をこやすことができ安泰な仕事だから」という、
今の官僚のような、本末転倒な腐った輩になってしまうので注意しましょう。

・海外情勢に左右される水商売トラベルライター
海外取材を主にしたトラベルライターおよび海外旅行ガイドブックの編プロは、
海外情勢に大きく左右されるということを、
これからなりたいと思う人は頭に入れておかなければならない。

たとえばアメリカがイラク戦争を開始した直後は、
一時的だがまたアメリカでテロが起きるのではという懸念から、
アメリカへの日本人旅行客が減ることが予想されたため、
アメリカ西海岸のガイドブックは、全ページ取材して新規作成予定が、
半分は以前のページをそのまま流用し、半分だけ取材という形になった。
その分、制作予算全体も減るし、取材班も減る。

戦争・テロはともかくとして、SARS騒動はほんと壊滅的だった。
香港、中国、ベトナムあたりのガイドブックがほとんど新規取材なしになった。
すでにある本を活かしたままで、ろくに新しく作り直すところもない。
こうなってしまうと旅行書編プロもトラベルライターも、
経済的に非常に苦境に立たされるわけだ。

インドネシアで起きた地震による津波被害もそうだ。
テロや戦争はある程度予測できるものの、
SARSだとか、地震・津波・火山爆発といった天災などは予測ができない。
でも予測ができない事態によって、自分たちのその年の仕事が大きく変わってしまう。
これはこれからなりたい人も肝に銘じておくべきだろう。

逆にいえば、世界的なビックイベント景気というのも起こりうる。
たとえばオリンピックの開催地がギリシアになったから、
オリンピック開催時期にあわせて新たにガイドブックを作り直そうだとか、
ワールドカップがドイツで行われるから、開催時期にあわせてガイドブックを新規につくろうとか、
そういった大きな行事のおかげで仕事が増えることもある。

つまりトラベルライターになりたいと思う人は、
世界のいいニュースも悪いニュースも常にチェックしておく必要があるということだ。
たとえば先日、ロンドンがオリンピック開催地に決定したことで、
「よし、ロンドンのガイドブックを大幅に取材し直して新たに作り直そう!」と考える人もいるだろうが、
イラク戦争で未だに事態の収拾がつかないなかで、
ロンドンなんかでオリンピックが行われるなら、テロの危険性が一気に増すから、
今年度版の取材はやめておこうとか、
そういう国際情勢の裏読みも必要になってくる。
それを読み誤ると、さんさんたる結果になるわけだ。

これから流行りそうな地域にも目を配る必要がある。
たとえば韓国ドラマが急にブームになったおかげで、
ふってわいたように韓国旅行ブームになることもあるし、
来年はモーツアルトの生誕250周年で、ゆかりの地でさまざまなイベントが行われるから、
密かなブームになるに違いないだとか、
そういう流行り廃りへの感覚も研ぎ澄ませておかなければならない。

そういうのをうまくつかんでおき、先取りすることができ、
自分で下調べとか行ったりとかして強くなっておけば、
仕事が舞い込んでくる可能性があるわけだ。

旅行そのものが水物で、どうしてもしなければ生きていけない生活必需品ではないので、
治安が悪くなったり、病気が流行ったりすれば、
日本人旅行者はすっと手を引いてしまう。
そういうリスクがある仕事だということを念頭におき、
国際情勢を新聞やテレビなどでこまめにチェックしつつ、
仕事ができるようになるといいだろう。
旅行は好きだけど、世界のニュースは知らない、ではだめなのです。

・トラベルライターの書く内容
●●ライターという場合、その●●の専門分野について書くことを仕事にする人のことをいう。
ところが「トラベル」ライターほど、書く内容が多岐にわたるものはない。
たとえば、スポーツライターだとか音楽ライターだとか、
ファッションライターだとかフードライターだとかは、
その分野だけを書いていればいいわけだが、
トラベルというと深い知識はいらない代わりに、
非常に幅広い分野について書かなくてはならないことを覚えておこう。
トラベルライターとは趣味で旅行した人が書く、
旅日記ないし旅行滞在記とはまったく違う。

トラベルライターが書くジャンルを列挙してみよう。
1:観光名所
観光する名所や遺跡などの紹介記事を書くには、歴史の基礎知識があるとよい。

2:レストラン
取材先に応じてイタリア料理だったりインド料理だったりするわけで、
料理についての基礎知識があるとよい。
ワインとかウイスキーだとかお酒の知識もあるとのぞましい。

3:おみやげ・ショップ
みやげについてはその土地の文化などが関わってくる。
お店については欧米などではブランド店紹介が非常に多くなるし、
ファッション関連の店紹介記事も非常に多い。

4:芸術・美術・音楽
美術館、音楽記念館などの紹介記事および有名画家、有名音楽家などの紹介記事も書く。

5:スポーツ
たとえばイタリアだったらサッカー観戦するためのガイド記事とか、
アメリカだったら野球観戦するためのガイド記事を書く必要があり、
ある程度、スポーツの知識があるとのぞましい。

6:ホテル
そんなに難しくはないが、ホテル紹介記事を書くのも非常に多い作業だ。

7:文化
かなり広い概念だけど、そこで暮らすための常識であるとか、
価値観であるとか宗教だとかそういったものを基礎知識として仕入れておく必要がある。

8:交通
「書く」というより「調べる」ことだけど、
旅行中の移動手段としての交通機関についての乗り方だとか調べ方だとかを、
つかむ感覚が必要とされる。この辺は知識というより旅行術に長けていること。

9:治安情報
旅行客として訪れた場合に気をつけるべき点についての、
滞在情報を書くのも旅行ガイドでは非常にウエイトを占める。
この辺も知識というよりは、旅行感覚に優れていることが必要とされるところだろう。

これ以外にもあるかもしれないが、とにかく「トラベル」ライターといっても、
他の専門ライターと違って書くジャンルが非常に多い。
しかしどれも専門ライターとは違って広く浅く。
とはいっても野球をまったく知らない人が、
シアトルやニューヨークの大リーグ観戦するための旅行ガイド記事を書こうとすると、
これはかなりつらいことになる。
いろいろなものに興味を持つ必要があるのだ。

トラベルライターは他の専門ライターとは違って、
広く浅い知識が必要とされることを覚えておこう。
もちろんすべてを網羅することは不可能に近く、
調べて書くというのが多くの作業になるのだが。

逆にある専門分野があると、それをテーマにした「トラベルライター」になれるという手段もある。
たとえばワインにめちゃくちゃ詳しいライターなら、
ワイン特集記事に関わるような海外地への取材にいける可能性は増えるわけだ。
ワインの産地なんて北米もあれば南米もあり、ヨーロッパもあるわけで、
いろいろな場所に取材にいけるチャンスは広がるというわけだ。

スポーツライターもそうだろう。サッカーに詳しいライターなら、
イタリア、スペイン、イギリスなどなど、プロサッカーリーグのある場所に、
取材に行く機会が増える可能性がある。

このようにある特定分野に強いライターとして出発して、
その結果、海外取材に行く機会が多くなる「トラベル」ライターというのはあり得ることなので、
「旅行が好き」もいいが、何か特定テーマがあると、
ライターとしてもくいっぱぐれないし、海外取材に行きたいという願いも叶う可能性がある。

・トラベルライター第二章(2009/10/19)
「トラベルライターになる」という夢を実現しながら、
3年で旅行ガイドブックの“トラベルライター”を辞めてしまった、かさこ氏。
しかし、かさこ氏を待ち受けていたのは、
新たなトラベルライターだった――。

写真が切り開いたトラベルライター第二章。

夢をあきらめたはずが、
さらなるトラベルライターとして飛躍を遂げた、かさこ氏の軌跡を辿る。

<1>旅行ガイドブック引退
トラベルライターになりたいと思い、
24歳でサラ金会社を退職。
4ヵ月の海外旅行に出た後、
編集プロダクションに転職し、
旅行とは関係ない制作物だが、
約2年、編集・ライターの経験を積んだかさこ氏は、
27歳の時に、晴れて旅行ガイドブックの編プロに転職でき、
年に4〜5回は海外取材ができる、
念願のトラベルライターとなった。

しかし、かさこ氏は30歳になると、
金融系編プロに転職してしまう。
念願のトラベルライターになったにもかかわらず、
自ら道を断念してしまったのだろうか?

かさこ氏は転職の理由を3つ挙げた。

・店取材ばかりの旅行ガイドブック制作を、
この先、何年、続けていても、
自分のなりたいトラベルライターにはなれない

・自分のしたい旅行記事は、
私的なライフワークとしてやっていけばいい

・給料があまりよろしくない

こうしてかさこ氏は、
トラベルライターから金融ライターに転身。
トラベルライターの夢をあきらめたかに見えた。
ところが、かさこ氏は、これまで以上に、
全国を飛び回るトラベルフォトグラファーになった。

<2>きっかけは、工場と猫
27歳で結婚をしたかさこ氏は、
今後、海外にそう多くは行けなくなると考え、
国内でテーマを持とうと考えた。
そこでかさこ氏が撮影を始めたのが、工場と猫だった。
それが「トラベルライター第二章」として結実する結果となった。

かさこ氏の初の著書「サラ金トップセールスマン物語」が、
30歳に発売されたのを機に、
「海外子供写真」や「猫写真」の売込みをしようと、
出版社を回っていたかさこ氏。

子供写真も猫写真も企画は通らなかったが、
そこで脚光を浴びたのが工場写真だった。

「工場写真集で行きましょう!」

その時、編集者から一言、
「京浜だけでなく全国も撮影してください」。

これまでかさこ氏は、京浜工業地帯だけしか視野になかった。
編集者の思わぬ一言で、
工場をテーマに全国への旅が始まる。

工場写真集は単発の企画ではなく、
シリーズ企画として発売されることとなり、
「洋館」「城」「歓楽街」「学校」など、
次々と続編が出版されることが決定。
こうしてかさこ氏は、ペンではなくカメラを持つことで、
全国各地を仕事で飛びまわれる、
トラベルフォトグラファーとなったのだ。

猫もまた旅が仕事になるきっかけとなった。
かさこ氏の家の目の前にある、
お寺の猫ばかりを撮影したかさこ氏は、
ノラ猫を求めて全国の島めぐりの旅をスタート。
島猫めぐりは猫雑誌の記事となり、
猫も、かさこ氏の「トラベルライター第二章」を支える、
大きな要因となっている。

<3>カメラが切り開いた新たな道
一度はトラベルライターの夢を断念したかに見えたかさこ氏は、
写真が撮れるということが武器になり、
旅行ガイドブックのトラベルライターから、
全国の建築物を撮影するトラベルフォトグラファーへと、
転身することとなった。

かさこ氏は今のポジションについてこう語った。
「旅行ガイドブックのトラベルライター時代より、
今のトラベルフォトグラファー時代の方が、
自分のしたい“旅”ができているので満足している」

かさこ氏はなりたい肩書きとしての「トラベルライター」から、
自分が本当になりたい「トラベルライター」へと、
転職を契機に転身することに成功した。

それはかさこ氏が、なりたかったトラベルライターとは何かを、
トラベルライターになって見つめ直し、
「これは違う」と転職を決意し、
分野は違えど、ライフワークで自分のしたいことを続けていた結果が、
トラベルライター第二章のスタートとなったのではないか。

かさこ氏は単に運が良かったともいえる。
しかし、運を引き寄せたのは、
かさこ氏が本当にやりたいことを見極め、
やり続けてきたからではないだろうか。

かさこ氏はこんな風に自己分析している。
「私が伝えたいのは旅の楽しさ。
それを表現する手段がライター=文章である必要はないのに、
トラベル“ライター”という肩書きに縛られて、
ライターであることに固執し続けていたのかもしれない。
旅の楽しさを表現するには、写真が重要。
だから自然に写真を撮ることに重点が移っていった。
そうしたらいつのまにかトラベルフォトフラファーになっていた」

なりたい肩書きや職種に縛られず、
何をしたいからその職業に就くのかを考え、
そのために行動し続ければ、
不可能な夢が現実に近づいてくるのではないのか――。

かさこ氏の軌跡は、
やりたいことを仕事につなげていく、
ヒントに満ち溢れていると思う。

・・・・・
やりたいことを見つけた人を少しでも応援できるよう、
今の私の現状を伝える「トラベルライター第二章」を書きました。

トラベルライターになりたい、
編集・ライター業をしたい、
カメラマンになりたい、
といった方で相談したい方は、
遠慮なくメールいただければ、
できる限り相談に乗ります。

私もそうした方と相対することで、
自分の歩んできた道を見つめ直し、
これからの道を考え直す、
とてもいい機会になるので。

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