中国東北地方取材レポート かさこワールド

2002/10/11〜21、日本がかつて占領・支配した旧満州地方を中心に訪れた。
大連・旅順・瀋陽(奉天)・長春・ハルピン・青島
日本が残した歴史の傷跡としての「過去」の教訓が残るとともに、
高層ビル群がバンバン建つ高度成長真っ只中のすさまじいパワーを放つ「現在」のこれらの都市を訪れた時、
僕はテロが席巻する現在の国際情勢の原因(過去)とそしてその解決法(未来)のヒントを感じた。

過去にとらわれることは愚かであるが、過去を知らなければ現在の正しい時代認識と未来はあり得ない。
多分この地域には「満州時代」を懐かしむお年寄以外は、観光で旅行することはあまりないと思う。
だからこそ、せめてこのレポートを読んで、過去を知り、現在を理解し、未来を考えてほしい。
それが自分自身が平和に暮らすための第一歩であるから。

・中国こばなし 中国東北地方写真


・731部隊とアメリカ


 <1>
 大連・旅順・瀋陽・長春・ハルピン・青島と11日間の日程で、
 取材のためにかなり精力的にあちこち見て回ったわけだが、
 訪れた数ある場所の中でも最も印象に残ったのが、
 ハルピン郊外にあった、日本の細菌・生物兵器開発部隊、
 「731部隊」の建物跡であった。

 ハルピンはロシアが建設した、非常にロシア的街で、
 ロシア国境の町へも列車でわずか8時間の距離にある。
 10月にもかかわらず、最高気温は4度。
 年間平均気温がわずか3.5度という極北の地である。

 こんなところにまで当時の日本が侵略し占領していた、
 ということ自体がすでに驚きであるが、それだけでなく、
 この地で日本が、大規模な細菌・生物兵器の開発、
 および人体実験を行っていたというのであるから、すさまじい限りである。

 もともと東京にあった細菌・生物兵器開発研究所を、
 何かあった時に危険であること、実験するための人間が必要であるということで、
 1936年、このハルピンに移された。

「人間を食らう魔窟」
地元の人からはそう呼ばれたという。
当時、地元の人々がこの731部隊に連れて行かれ、おぞましい人体実験がされて、
少なくとも3000人は実験のために殺されたという。
日本の敗戦が濃厚となると、証拠隠滅のために部隊は施設を爆破して、逃走したという。
そのせいで完全には残ってはいないものの、わずかだが、当時の実験施設が残っているのである。

たとえば人間の「冷凍実験室」があり、ただでさえこのくそ寒い場所で、
さらに急速に冷やすための扇風機のようなものを吹きつけて、人間の冷凍実験なども行っていたらしい。
その他、ペスト菌・コレラ菌・チフス菌にはじまり、
さらには昨年アメリカでニュースになった「炭そ菌」まで培養し、開発していた。
しかもそれをここでの研究成果をもとに実際に中国各地で使用したという。

日本の横暴さ・おぞましさはもちろんのこと、
なぜ人間はそこまでおぞましいことをしなければならなかったのか、
僕は絶望的な気分に襲われた。

「人間は愚かである」ということをこれほど思い知らされる場所はない。


ペスト菌をばらまいてまで他国を征服して、一体どうしようというのか?
それほどまでに戦争や侵略が大事なことになってしまう人間の愚かさとは一体何だろうか?
しかもそれを70年前の日本人がやったというのであるから、なおのこと考えてしまう。

<2>
そしてさらに驚くべきことだが、日本の敗戦が決まると、
この731部隊での研究資料を、アメリカに売った部隊長・石井四郎は、
軍事裁判を免除され、アメリカから保護を受け、生き延びたという。
またしても「アメリカ」である。
さらに1950年の朝鮮戦争では、アメリカがこの731部隊の生物兵器を使ったというのである。
アメリカの手段を選ばぬ横暴さと、それを歴史の表舞台から隠蔽する得意技は、 すでにこの頃から身についていたようだ。
実におぞましい限り。というか許されない罪だよこれは。

一体全体世界はどうなっているのか。
政治は人間の幸福のための手段であるはずが、
権力欲や支配欲や政争道具のために、無実の人々を無差別に殺し続けている。

たとえば北朝鮮の拉致問題を考える時、北朝鮮の核開発が無関係ではないように、
日本が第2次世界大戦中どんなことを朝鮮にしてきたかを知る必要があるし、
アメリカやソ連がどんなことをしてきたかを知った上ではじめて、
今、北朝鮮に対して何をすべきかがわかるのだと思う。

また、アルカイダ・ビンラディンの指示によるテロがどうのと騒ぐ前に、
「正義の戦争」を掲げ、世界の警察官ぶったアメリカが、日本731部隊の生物兵器を朝鮮で使ったという事実や、
ベトナム戦争しかり、イラクの湾岸戦争での放射能汚染ミサイルの使用しかり、
ソ連との代理戦争のために、莫大な資金を援助してテロ集団アルカイダおよびビンラディンを支援してきたことしかり、
フセインもビンラディンも殺せず(いや殺さず)、誤爆によって無実の人々を殺し続けていていることしかり、
そういったことの結果として、世界貿易センタービルにいた何千人もの犠牲者を出し、
バリやフィリピンや世界各地で起こるテロのすべての原因となっているということを考えねばならない。
そうしたら単に「テロはいけない」だとか「フセインやビンラディンを殺せば済む」といった、
短絡的な考えはなくなるはずだ。

<3>
細菌・生物兵器開発施設跡を歩いているのが、ここで行われてきたことを考えると、
なんだか実に恐くなった。
ある種、放射能汚染をしたチェルノブイリ原発跡を歩いているのと同じことではないかと思ったのである。
しかしこの施設跡の目の前には普通にアパートが建っていて暮らしている人々がいる。
「ここで住んでいて大丈夫なんでしょうかねえ?」
と中国人ガイドでさえ、そのアパートを見てつぶやいたぐらいだ。

僕が訪れた時、ここに60歳過ぎの日本人3、4人が来ていて、
こんなところにまで足を伸ばし、歴史を探求しようとは実に素晴らしいことじゃないかと思ったものの、
施設跡の看板の前でみんなそろってにこっと笑って記念撮影をした時、僕は同じ日本人として恥ずかしくなった。
日本人がここで何をやってきたかを考えれば、
スマイルして記念撮影する神経はどう考えても信じられない。
僕でさえ、3年前に中国のデパートで買った、中国人民服風上着をはおり、
少しでも日本人に見えないような工夫をしつつ、ここに来て、じっとこの施設跡を凝視していたというのに・・・。

過去は過去だが、歴史は形を変え、品を変え、そして人を変え、繰り返す。

このハルピンの731部隊址に、観光で自分の金払ってわざわざ来る人はなかなかいないだろうから、
修学旅行とかでくればいいんだよな。
何の目的もなく、シンガポールだのオーストラリアだのにいっているバカチャン高校があるぐらいだから、
そんな意味のない修学旅行ではなくハルピンに行って、あのおぞましい施設後を覗いたらみたらいいんだ。

多分、あの施設後を見れば、たとえ普段の生活がどうしようもないヤマンバ女子高生だって、
いろんなこと考えると思いますよ。
それこそ大学入試のくだらん暗記試験やるぐらいなら、
ハルピンに行かせてレポート書かせるのが試験とかにしたらいいんだよ。

ハルピンは新潟と友好都市だとかで、
ハルピン市内の公園に「友好の証」として無駄に金かけて日本庭園とか造ってるんですよ。
きっとそこには、もうそれこそ死語になった「鈴木宗男」みたいな政治家がしきり、
丸紅や三井物産など、外国での事業を不正な行為で食いものにしようという、薄汚い日本企業がからんでいて、
そういう税金を自分の懐に収める仕組みとして「友好都市」なんていうのを利用して、
無駄なはこもん作ってるんだろうけど、
そんな金あるなら、歴史の勉強のために互いの高校生を互いの国に招待してやって、
ことに日本人にはこの731部隊址に連れていってやればいいわけですよ。
それが本当の意味での「友好都市」っていうんじゃないだろうか。

<4>
歴史を学ぶことによって、単に「過去の反省」をしろなんてくだらんことを言ってるんじゃない。
歴史を知ることで、今の時代が透けてみえるようになる。
今の暗雲立ち込める国際情勢を考えるためには絶対に歴史・過去の出来事の清算が必要になる。
僕の今の時代認識としては、あの昨年のテロを契機に、
テロと恐慌とそして自然大災害という3本柱の超暗黒時代が始まったばかりだと捉えている。
アメリカが戦争をやめればテロは半減すると書いたが、
そんな矢先に、今度はロシア・モスクワで、劇場にいる800人を人質に取るという大事件が発生した。
またしてもその原因は、これまでアメリカとやりあってきた「大国」の強圧的仕業であった。

チェチェン紛争について詳しくは知らないが、構図としては独立した地域を、
大国の論理でロシアが戦争して封じ込めようとした反発行為として、
大国とは違って戦争では勝ち目のない人たちが、唯一自分たちの主張を広く世界にアピールすることができる、
テロに訴えたということと思う。
考えてみれば、アフガニスタンの問題にしても、
もとはソ連が侵攻し、それを阻止しようとしたアメリカが、
自分たちの部隊を出すのは嫌だし、またその口実もないので、
テロ集団アルカイダに莫大な資金援助をさせて、ソ連に対抗させたという、
結局は、アメリカとロシアという2大軍事大国の勝手な思惑のせいで、
世界がはちゃめちゃにされているという、言ってみればただそれだけだ。

731部隊址を訪れ、この悲哀に満ちた場所が放つ瘴気に触れたことによって、
実にいろいろなことを考えさせられた。

・2角(3円)と200元(3000円)

 この取材旅行で最も印象深かった場所の一つが、ハルピン郊外の田舎町の畑。
 なぜ畑になんか分け入ったかというと、
 世界史で習った「金」の都跡が畑のど真中にあったからである。

 ハルピンから20km郊外に来たということで、
 運転手は200元(3000円)の特別料金を請求したわけだが、
 (ちなみにタクシーの初乗りは7元(100円))
 この運転手、畑で農作業している農家の人に何を思ったのか近づいていった。

 地元の人でもやはり都会の人間には田舎の人間が珍しいのかと思いきや、
 この運転手、農家から赤大根(もしくは赤かぶ)を買いつけていたのである。
 「農家から直接買えば安いんですよ」とガイドが説明する。

 なるほど。そういえば、今日ハルピンの町を朝歩いていると、
 あちこちからキャベツやら大根やら野菜一杯つめこんだトラクターみたいなのが、
 町に売りに来ていたな。
 きっとこの辺から都会に出て売りに行くのだろう。

 運転手はトランクいっぱいに詰めこめるだけの大根を買った。
 20個はゆうに越えている。
 これでいくらなのかと聞くと、
 「だいたい5元(75円)、1つ2角(3円)ぐらい」だというのだ。

 うへー、信じられない安さ。
 そりゃ、日本が中国野菜の輸入を制限するわけだ。
 日本の農家が作る高い野菜とは比べ物にならない。

それにしても、安すぎはしないか。
10月でもうすでに最高気温4度のこの極寒の地で、
一生懸命肉体労働してやっと育てたこの野菜が、1個2角(3円)だというのだから・・・。

確かに中国の目まぐるしい経済成長とともに、
辛く苦しく大変な農業なんかやめて、サラリーマンになろうって人が増えるわけだ。
この運転手、旅行会社依頼の日本人旅行客とはいえ、半日で200元も荒稼ぎしてしまうのだから。
(ま、もちろん元手となる車を購入するのは大変な金額なのだろうが)

こうしてこの中国にも農業から足を洗って、
とにかく都会に出て何かしようという人が増えてきて、
そのうち田舎は過疎化に悩み、都会への一極集中は加速化する、
いわば、日本が戦後辿ってきた道を、今まさしく辿ろうとしている。
その「先」を行った日本では、都会生活の荒廃や行き詰まりから、
逆に「田舎暮らし」や「農業生活」が静かなブームとなっているにもかかわらず・・・。

中国の生活は大きく変わろうとしている。
ハルピンも長春も瀋陽も大連も青島も、バンバン建物が建っていく。
あるガイドはこう言っていた。
「建設ラッシュの中国ですが、デパートやスーパーマーケットもいっぱい建てられていますよ。
老人は利用しませんが、若者の買いものはデパートやスーパーマーケットです。
老人はいまだに自由市場で物を買いますけどね」

デパートの1階には必ずといっていいほど、ブランド品コーナーが幅をきかせ、
もちろん日本とたいして変わらない値段で売られている。
まだ一部の金持ちにしか手の届かない品物のはずだが、
一般市民のブランド品や外国製の家電製品や車などに注ぐ視線は熱く、
携帯電話は高いにもかかわらず、若者の必需品となっている。

今まさに中国は「眠れる獅子」が目覚めたがごとく、
社会主義から資本主義経済への大移行が始まっているかにみえる。

でっかい高級デパートの脇には、おんぼろ平屋で、
毎日毎日、刀削面を4元(60円)で作って売っているわけだが、
「フィアンモーニング!」と快活な声を出すケンタッキーフライドチキンでは、
コーヒー1杯がラーメンより高くだいたい70円ぐらいする。

今、大都市は平屋を標的にどんどんぶっつぶして近代的高層ビルをバンバン建てている。
たとえばラーメン屋がぶっつぶされて高層ビルが建ち、
そこにラーメン屋がテナントとして入ると、きっと日本と変わらぬ値段になるんだろうな。
そういう現象が、今中国のあちこちで起きている。 ほんとものすごいパワーですよ。

しかし心配なのは日本と違って中国は多種多様な民族と多種多様な地域を抱えていること。
日本のように狭ければ、みんな「都会化・近代化・西欧化」してしまって、
それほど都会と田舎の貧富の差は拡大しないだろうし、
生活スタイルもそんなに違わないだろうが、中国はそうはいかない。

上海・香港を筆頭に、大都市は外資が入り乱れて、先進国と変わらない社会になることは、
もうほんと秒読み段階なんだけど、
その同じ国に、わずか1つ2角の大根を作っている人とか、4元のラーメンを作っている人とかは、
多分、これだけ広大な国家だとなくなりようがないわけで、
そこで起こる貧富の差とか伝統的田舎社会の価値基準と近代的都市社会の価値基準の違いから、
国家内で様々な摩擦が起こることは容易に想像がつくので、ちょっと恐いなと思う。

都会が高度成長でもてはやされている時代はいいが、
そんな時代は一時期に過ぎず、いつか必ず不況期が訪れる。
そうなった時に、都会と田舎の両方から様々な不満や不平が、
大きな火種となることも考えられなくはない。

もともと民族が違えば一民族の独立運動も出てくるだろうし、
古き良き時代の帰農主義も出てくるだろうし、
外資がうまい汁だけ吸って、不況になったら株や資本をさっと引き上げてしまったと、
またしても先進国へのバッシングが過剰な武闘主義を生まないとも限らない。

中国がこれまで「眠れる獅子」であり続けて、やっと「目が覚めた」と思われてはいるが、
実は急速な高度経済成長は、国内矛盾をあちこちにばらまいているだけともしえるし、
先進国が高度成長の後に立ちいかなくなった同じ問題に突き当たることはまず間違いない。
そうなると、独裁的社会主義によってとりあえずことなきを得ていた、広大な「中国」が、
またしても様々な民族主義の台頭によって、紛争地域へと変わらないとも限らない。

はっきりいってこの国の舵取りは相当難しい。
というより本来なら、これだけの地域、これだけの民族が、
1つの国家という枠に流しこまれいること自体がおかしいのだ。

チベットの独立運動・ウイグル自治区の独立運動・
広大な草原で遊牧する内蒙古自治区の人々への強圧的な定住化政策・・・
とにかくこの国が一つであることが不自然であるということが、
資本主義という世界共通ルールのゲームに参加してしまったことで、表出しないとも限らない。

高度成長を続ける中国を見て、
世界の平和や人間の幸福な社会とは何なのかを考えざるを得ない。
このおばさん一家も、そのうちばからしくなって農家をやめて、ケンタッキーなんかで、
「ファインモーニング!!」なんて叫んでいるかもしれない。

・高度成長真っ只中!〜今の中国とは〜
11日間の日程で、大連・旅順・瀋陽(かつての奉天)・長春・ハルピン・青島を訪れた。
中国東北地方と呼ばれる(青島を除く)この地域は、わずか70年前に、日本がでっちあげた満州国である。
それゆえに今でもその当時、建てられた日本の建物が残っていて、
満州で生まれ育った昔を懐かしむ日本のお年寄観光客が結構訪れている場所である。
あとはかつてこの地を支配した日本の横暴を忘れないための、歴史的な史料が残されている地域である。

そういった歴史的名所を中心に直でこの目で見て回ったが、本当に考えさせられることが多かった。
北朝鮮の拉致問題が取り沙汰される中での、日本の歴史の再確認的作業は絶対に必要であり、
この地に残された傷跡を辿る旅は、単に「日本の横暴」ということにとどまらず、
暗雲立ち込める国際情勢を考えるのに、大変意義深いものだった。
なかなかこんなところへは観光には行かないだろうから、徐々につぶやきで紹介していきたい。

しかしもう一つ。
そういった「かつての満州」という歴史的側面でしかこの地方を捉えていなかったが、行ってびっくりした。
昔の歴史的側面などどこ吹く風で、ものすごい高度成長真っ只中なのである。
大連や青島は、香港や上海と何ら変わりない高層ビル群が林立する大都会で、
今も古い建物を次々とぶっこわし、30階建て以上のオフィスビルや高級ホテルではなく、
なんと分譲マンションをボンボン建設している。
とにかくどこへいっても建設ラッシュ。
高速道路、高層ビル、新空港、巨大デバート等、めまぐるしい建設ラッシュが続いている。

建設ラッシュによる急速な現代的都市型社会化は中国社会を大きく変えつつある。
経済発展を遂げている大都会的都市は、それこそ今の日本や欧米の生活スタイル化が急速に進んでいる。
驚いたのは携帯電話。
3年前に訪れた時はほとんど目にしなかった携帯電話だが、今は若者を中心に日本と変らずみんな持っている。
中国人ガイドいわく、今の若者の80%以上はまず携帯電話を持っているという。

この急速な経済発展を目の当たりにして、すでに高度成長を終え、バブルの崩壊とともに生きあえいでいる、
いわば未来の社会からタイムスリップしてきた日本人から見えると、様々な問題が透けてみえる。
若者と年配との大きな価値観や意識の隔たり。急速な発展に伴う貧富の差の拡大による治安の悪化。
晩婚化・少子化・教育問題・環境問題・時間的ゆとりの減少・通勤ラッシュ・金儲けの犯罪・詐欺・・・
まさしく今、日本や欧米が抱えている先進国の社会問題を、経済発展とともに引きつれている姿を、
この目で見れる中国社会という場は、まさしく生きた教科書であった。

日中友好30周年ということもあって、僕も驚いたが、北京や上海に限らず、
大連や青島にも日本からの直行便がバンバン飛んでいて、日本企業の進出も目覚しい。
とにかく社会が変っていくスピードが目まぐるしい、中国東北地方の大都会群。
もしまた1年後に行ったら、その姿は大変貌しているに違いない。

ほんと、これはすごいですよ、ちょっと。
何かの機会があったら、日本の歴史の勉強ついでに、
この急速な経済発展しているすさまじいパワーを見てみるとよい。
言葉や写真では言い表せない、肌で感じるものはすごいですよ。

といってもなかなかいく機会がないと思うので、
日本の歴史的側面から引き出す現代国際情勢考と、現代社会問題を考える経済発展段階説を、
写真を交えて紹介していきたいと思います。

・資本主義の不均等発展〜バリクタテロから中国考〜
<序>
「何をかさこさん、今さら、1年前の9.11のテロの話なんか持ちだして。
もう終わった話じゃないですか。アメリカの横暴を声高に叫ぶのも、もういいんじゃないですか」

2002.9.11、バリ島の隣の島、ロンボク島でビンラディンTシャツを着た女性の写真をつぶやきに掲載した。
そして、中国不在の間のつぶやきに、またしても昨年のテロについての論考を書いた。
何を今さら?という読者の気持ちとは裏腹に、この不在の間に、世界各地でテロが続発した。

<1>
バリ島・クタでの爆発テロは、タマちゃん騒動で平和ボケした日本人にとっても、
目を覚まさせる契機だったのではないか。
僕はバリ島に行く際も、ロンボク島に行く際も、すでにバリ島的良さを失ってしまった、
人々の欲望と犯罪が渦巻くクタやレギャンなどは、絶対に行きたくない場所だった。

よく日本人が行くところを避けて、あまり馴染みのない土地などに行くと、
「大丈夫?危険じゃないの?」と言われるが、日本人が集まる海外ほど危ないところはない。
その予感が、爆発テロという形で、ついに顕著になってしまった。

テロというと実に複雑な問題と受け取られるかもしれないが、
今のテロを半減させる簡単な方法は明白である。
アメリカが自らの世界政治に対する政策の非を認め、
アフガニスタンに展開している軍隊を即時撤退させることだ。

これで今起きているテロはほとんどなくなるといっても過言ではない。
まあ、さらにいうならば、責任を明確化するために、
あのコザルブッシュ大統領を、アフガニスタンの罪のない人を殺した殺人罪および、
アメリカ国民および世界各地の人々を無差別テロの驚異にさらした世界反逆罪で、
全世界の人々に対する見せしめに死刑にしたら、間違いなくテロは収まるだろう。
そのぐらいアメリカが犯した罪は大きいということだ。

実は先月のロンボク島旅行で、最も行きたくなかった、魅力のない町バリ・クタに1泊せざるを得なかった。
確かに海に沈む夕日はきれいであったが、町の雰囲気は最悪だった。
整備されすぎてしまって、ここがバリ島だという雰囲気がないのである。
完全に欧米人および日本人たちの観光地化・リゾート地化されてしまった、
魅力のない町に成り果てていたのだ。

ここは非常に治安が悪い。
なぜかって簡単なことさ!
現地人にしてみれば信じられない大金を持っている欧米人ならびに日本人が来るからだ。
まじめに農業しているよりも、観光客相手に商売した方が、簡単にボロ儲けができる。
中には詐欺や犯罪まがいの商売もある。
地球の歩き方「バリ島」のトラブル報告は、騙された日本人の恥さらし体験談がわんさか載っている。
HISのオプショナルツアーでさえ、普通に地元の交通手段であるタクシーやバスを使うのより高いのは、
行ってみればぼったくりの制度化みたいなものである。

こういう欲望にまみれた社会で、まじめに農業やってるのに貧しい生活しか送れず、
うまいこと日本人や欧米人に取り入って楽にボロ儲けしている豊かな生活を送るものとの間の、
貧富の差の拡大はすさまじい。
社会犯罪や治安の悪化は、まずこの貧富の差の拡大から起こるのである。


伝統的な社会生活を破壊し、自然を破壊し、
貧富の差の拡大を生んだ諸悪の権化は欧米人や日本人などの先進諸国である。
そのような一般市民の不満を宗教が吸い上げる。
自分たちの古き良き生活を守るために、中には手段を選ばず、武装化する集団も出てきて当然。
彼らには国家権力もなければ軍隊もなければ金もない。
そうした集団が自分たちの主張を広く世界にアピールする手段が「テロ」なのである。

<2>
国際社会の様々な問題の原因を一言で簡単に言い表せることができる。

資本主義の不均等発展

かつて日本が中国に侵略したのも、バリ島クタでこのようなテロが起きるのも、
中国東北都市が競って高層ビル群を林立させるのも、すべては資本主義の不均等発展が原因。
世界の貧富の差が、世界を歪め、様々な問題を引き起こす原因となっているのである。

しかもそれは、社会主義の消滅によって、加速化されることになってしまった。
資本主義の不均等発展という問題に対抗しえた社会主義が崩壊してしまい、
今、資本主義に対抗できうる価値基準が「イスラーム」になってしまっている。
元社会主義国やイスラム諸国、また資本主義経済の発展に乗り遅れてしまった国々が、
資本主義の権化として立ちはだかるアメリカを敵視するのは当然である。

そして第2次世界大戦が証明しているように、
資本主義の不均等発展に、先進国の恐慌が重なると、戦争になる。
簡単な図式である。
実は今まさに第2次世界大戦の二の舞を繰り返そうとしている国際情勢にあるのだ。

アメリカ含め、ヨーロッパならびに日本など、先進国の経済は今や破綻状況にある。
それを追いかけるようにムチャクチャな建設ラッシュで急成長を遂げる中国。
そういった「マネーゲーム」とは価値基準を異にした諸国ならびに、
マネーゲームの脱落諸国が、テロという手段で世界に対抗する。
恐慌のはけ口としてアメリカが「正義」の名のもとに戦争を起こし、
それに否応なく巻きこまれてしまう、ヨーロッパならびに日本。
対アメリカにしか行われていないテロが、ヨーロッパや日本で起きたらどうなるか?

世界恐慌・正義という名の戦争・無差別テロが頻発する、
世界史上稀に見る暗黒時代の到来が、今まさに目の前に迫っている。
だからこそそんな時代にしないために、アメリカの横暴を、
世界貿易センタービルのテロから1年たった今でも、僕は声高に叫んでいるのである。


・ラストエンペラー
それこそ今のハリーポッター並に、いやそれ以上に騒がれた映画。
確かテレビで放映された時、どれどれと見たものの、
あまりの退屈さとあまりの単調さと、そしてあまりの長さに途中で見るのをやめてしまった記憶がある。

ただその時と見る状況は違う。
2週間前に、まさしくラストエンペラー溥儀の舞台の一つである満州各地を訪れ、
かつ満州国の首都新京(長春)にも行き、
溥儀が暮らした皇宮や映画制作した長春映画製作所を訪れていたし、
溥儀についての博物館も見た前知識があったので、それほど退屈せずに見ることはできた。

でもあたらめて見て、この前知識や職業的必要性がなければ、
よくできている映画とはいえ一般人が見ておもしろがれる映画ではないなと思う。
とにかくセリフが少ない。シーンだけで見せている。
これは映画のクオリティとしてはすごいことだと思ったが、
これじゃあ一般人が見たら退屈してしまうだろう。
それから今の映画のように無駄なところに莫大な金を使ったり、
CGをフルに使って映像のすごさを見せる手法とは違って、
ほんとこれはすごい壮大な映画だなと思う。
北京・紫禁城でのシーンなど、ほんとすごいなと思う。

とはいえやはり全体的に単調感はぬぐえないのだが、
この映画で考えさせられたことといえば、最後のシーン。
溥儀は戦犯として捕まり、刑務官に「自分の罪を告白せよ!」と迫られる。
それから何年かたったある日のこと、
一般人に戻った溥儀の目の前にかつての刑務官が罪人として捕まり、
同じように「自分の罪を告白せよ!」と迫られる。
毛沢東主義ふきあれる、嵐の時代。
為政者が変われば「罪」の基準も変わり、「反政府分子」として捕らえられてしまうのだ・・・。

それは溥儀生涯そのものも同じ。
3歳で皇帝になったものの、紫禁城での監禁皇帝時代や日本傀儡の満州国皇帝など、
皇帝という支配する身でありながら支配される立場に置かれるという皮肉。

この傀儡皇帝溥儀の住まいとなった満州の都・長春に行って、僕が驚いたことは、
満州国当時の支配の象徴ともいえる、日本の支配者が建設し政治・行政を担った、
日本的建物を「歴史を忘れない」という意図なのだろうが、そのまま今も使っているということだ。
満州国が崩壊し、日本が敗戦に追いこまれたとき、
まっさきにこれまでの恨みを晴らすためにぶっこわされてもおかしくなかった建物が保存され、
しかもそのまま使われているのは正直驚きだった。
だってそれこそ、満州に行ったら、日本人と知れたら石投げられるんじゃないかと思ったぐらいなのだから。
(もちろんそんなことはなかったが)

でもそこには日本の支配者の変わりに中国の支配者が入っただけ。
日本の警察署に中国の公安が入り、日本の官邸に中国の人民政府が入る・・・。
もちろん日本の抑圧体制とは違うものの、
所詮、政治の世界というのは、そこに住む人々とは関係なしに、
国家間、政治家間の権力闘争のなれの果てでしかないという思いを抱いた。

今、世界は様々な問題が表出している。
でもそこで考えねばならないのは、
国家レベル政治レベルでの権力闘争や政治駆け引きは、
彼らは無傷にもかかわらず、一般市民がただ犠牲になるだけのこと。

ブッシュや金正日やビンラディンやフセインがどうのと騒いだところで、
犠牲になるのは無実の国民でしかない。
残虐非道極まりない日本を追い出し中国が全土を支配したが、
もしかしたら一部の少数民族にとっては、単に為政者(支配者)が変っただけのことで、
抑圧されることには変りないかもしれない。

ラストエンペラー溥儀の目まぐるしく変り行く立場の変遷や、
中国政府が長春の日本の満州統治機構の建物をそのまま使っているのを見ると、
ふとそんなことを思う。

政治のレベルと国民のレベルがかけ離れた時、不幸はおこる。
いかに政治と国民レベルが同一線上に並べることができるか。
そのための「民主主義」なのだろうが、
今の世界の政治家を見ると、民主主義も制度疲弊を起こしているのではないかと疑いたくなる。

そこに住む人が幸せになるための手段としての政治。
ま、もちろん、人間が人間である以上、限界はあるのだけれど、
少なくとも今よりはもっとよくできるはずだとその努力をする必要があるんじゃないかな。

・出稼ぎ



日本駐在員が3000人という大連の町には、日本人相手のスナックがあちこちにある。
僕が泊まった日本人スタッフのいるまっとうなホテルでさえ、ホテル内にスナックがあって、
セーラ服を来たねえちゃんが時々ロビーの近くを飛びまわっているのは、ちょっと興ざめである。
なんだかホテルの品位を落としているようでなあ。
しかもそのセーラ服姿がなんとも中途半端なんだ。
セクシーに見えないんだな。多分まねて作ったのか安物のせいなのかが原因なのだろうが。

女性ガイドさんの知り合いが「スナック博多」を経営しているという。
女性ガイドさんの同じく知り合いで日本語ぺらぺらのお友達がスナック好きらしく、
せっかくだからと3人でこの「スナック博多」に乗り込んだのである。

店に入ると、日本語のカラオケが・・・。
見ると中にはオタクっぽいあやしげな中年男性が1人、中国人女性に囲まれ歌っている。
なんだかまいったな。こんなところに来てしまって。

いちよここの女の子たちは日本語が話せることになっているが、
それほどつっこんだ話ができるほどは話せない。
ガイドの友達はオーナーというか現場責任者(ママ)だけあって、日本語はぺらぺらだったが。

チャイナドレスがよく似合う女の子。
背が高く足が長くてきれいだ。
出身はハルピンだという。ハルピンから大連に稼ぎに出てきたらしい。
ハルピンも都会ではあるが、所詮内陸の極北地であるが、大連は同じ都会でも質が違う。
3000人もの日本人がいるとなれば、日本人相手商売は出稼ぎするにはもってこいの商売なのだろう。

ガイドやその友達に勧められて、僕もカラオケを歌わざるを得なくなったわけだが、
たまたま歌ったミスチルの「名もなき詩」に「Oh darlin(ダーリン)」という詩があって、
僕は一人ちょっと気恥ずかしくなっていた。
というのもここ「大連(ダイレン)」は中国語で「dalian(ダーリエン)」と発音するからだ。

ま、そんなくだらん話はともかく、
東北地方の中でも北に位置するハルピン女性は、スタイルが良くて美人で有名らしい。
寒い地方というのは美人を育てるのだろうか。日本でも秋田美人というしなあ。

ここの店の後、飲んで酔っ払った女性ガイドの友達が「もう一軒行こう!」とつきあわされて、
同じような日本人相手のスナックに行ったのだが、
そこに座った女の子もハルピンから出てきたのだという。

なんだかなあ。
資本主義の不均等発展は貧富の格差を生む。
大都市ではあるが東北地方の中ではそんなにすさまじい発展をしているわけではないハルピンから、
いまや超高度成長する大連へと体を売るわけではないが、
中国人にとったら相当な水商売であろうスナックに出稼ぎにくる、ハルピンの女性。

もしかしたらこの女性の両親は、ハルピン郊外の畑で2角(3円)で20個の野菜を売っている生活をしているのかもしれない。
そう考えたら娘の稼ぎはきっとすごいもんだろう。

ただ僕はこのスナックを訪れた時点ではハルピンを訪れていなかったので、そこまでは考えなかった。
ただなんとなく大連というところは、中国東北地方にとっては日本の東京みたいに、
金を稼げる場所として田舎からどんどん人が出てきているのだなと思ったぐらいではあったが。

ま、そんな難しいこと考えなくても、
このきれいなねえちゃんの写真だけ載せればいいじゃないですかっていう意見もあるかと思うけど・・・。
ただね、ほんときれいでしたよ。