冬のシルクロード 「冬のシルクロード」の写真のリンク
  
・1999年11月17日・1日目・日本
僕は8/1〜10/29の3ヶ月のアジア放浪を終え、再び旅に出ることを決意した。
再びシルクロードを陸路で行こう。

ところが日本に帰ってくると、謎の腹痛に悩まされ、前日(11/16)、病院に検査しに行った。
旅をあきらめようかと思ったその日、旅行会社より難航していたウズベキスタンのビザを取るための、
インビテーションが取れたとの連絡が入る。これで旅行に行ける。
検査結果は1週間後、本人が直接病院に行かないと教えてくれない。
まだ謎の腹痛も続いていた。
しかし僕はとりあえず行けるところまで行って帰ってこようと、旅の支度をした。

もしかしたら、祖母のいる静岡に行って1泊して帰ってくるかもしれないし、中国あたりで引き返すかもしれない。
とりあえず、腹痛がどうなるかわからないけど、行けるところまで行こう。
このまま何も動かずに日本にいることが堪えられなかった。

朝9時、家を出発し、再び東京駅より出発した。
最終目的地はトルコ・イスタンブール。
遠いなと、新幹線に乗らずに東海道線の鈍行に乗りながら、思った。

静岡に14時過ぎに到着。祖父の墓参りがこの旅行の一番の目的。
腹がどうしようもなく痛くなったら、どこかで引き返せばいい。
とりあえず腹痛は最小限に収まっているので、静岡から弟の車に乗って、弟の一人暮らししている豊橋まで行った。

冬のシルクロード。旅行1日目。
とりあえず埼玉の実家から豊橋まで。
トルコ・イスタンブールに僕は行けるのだろうか?

・1999年11月18日・2日目・豊橋
豊橋の弟の一人暮らしのアパートに泊まった。
12時起床。弟は大学の授業があって帰ってきたのが15時。
それからずっとスーパーファミコンの「信長の野望」をやっていた。このゲーム、おもしろいのだがとにかく長いのが欠点。
結局18時半で打ちきって、弟の彼女と合流。3人で弟の家でキムチ鍋をする。

なんだか不思議な日だ。
弟が一人暮らししているところに行くのもはじめてだし、弟の彼女に会うのもはじめて。
第一、明日、神戸港から北京に向けて船で出発しようというのに、
その前日に3人で夜中の3時過ぎまでプレステのゲーム、桃鉄の勝負をしているのだから。

会社を辞めて、こんなことしていていいのだろうか?などと殊勝な思いがないわけではないが、
そんなことより、こうして遊んでいることの方が新鮮だった。
桃鉄では誰とやっても不敗神話を誇っていたこの僕が、弟にはじめて敗れた。
帰国後のリベンジを誓って、明日に備えて眠ることにした。

謎の腹痛は大分収まっている。
とりあえず、明日の中国行きの船には乗れそうだな。
まあ、行けるところまで行ければいいや。

・1999年11月19日・3日目・神戸
桃鉄の勝負明けで眠いながら、朝7時起床。
中国・北京行きの船に乗るため、神戸港に向う。
新幹線・モノレールを乗り継ぎ、10時半に神戸港に到着。
そういえば、関西のエスカレーターでは、東京と違ってみんな右に立って、急ぐ人のために左側をあけている。

神戸港は閑散としていた。乗客がほとんどいないのである。
船が出航中止になったかと思ったぐらい人がいなかった。
やっぱりこのくそ寒い冬に、わざわざ2泊3日かけて船で北京まで行こうなどという酔狂な輩は少ないらしい。
料金は片道2万円。

日本人乗客は7、8人だけ。あと20人ぐらいは電化製品をいっぱい買い込んだ、大きな荷物を抱えた中国人のみ。
船に乗ると「ようこそ、燕京号へ」と制服を着た”燕京レディー”が10人も立ち並んで出迎えてれた。
どうも乗客より船員の方が多いらしい。
本来12人用の雑魚寝部屋も半分の6人しかいなかった。

「酔狂だな」
3ヶ月のアジア放浪から帰ってきて2週間後に、再び船で中国に向う自分のことを思った。
とはいいながら、この延々退屈な50時間の乗船も、結構有意義に楽しんでいた。

船から瀬戸大橋を眺め、まるでここは日本じゃないのではないかと思うぐらいの海に沈む美しい夕日を船から眺めた。
船には風呂もあり、湯船に浸かっていると船なので微妙に揺れがあって気持ち良かった。
豊橋のコンビニで見つけた「ヨーロッパ極貧旅行術」の本を読んだりして、退屈な船内の時間を過ごした。
この旅はまさしく「酔狂だな」と、何度となく自嘲的な思いに耽っていた。

2日後に到着する北京は、今度で4度目の訪問となる。
北京とは何かしら縁があるようだ。

・1999年11月20日・4日目・船内
1日中、船の中で揺られている。
本を読んだり、海を見ながらCDを聞いたり、ガイドブックを見て計画を立てたり。
しかし船は遅々としか進まず、いつまでたっても陸の見えない海原の中では退屈してくる。
謎の腹痛は収まった。とりえあず、しばらくは旅行ができそうだ。

会社を辞めて8月から3ヶ月旅をして、再びまた旅に出た僕もかなりの酔狂者だが、
寒い冬にわざわざ船で北京に行こうという他の日本人もかなり酔狂なメンバーだった。

はじめての海外旅行でこの燕京号に乗り、北京到着後は南へ向って、
正月ぐらいにはタイのビーチでのんびり過ごしたいという大学生ぐらいの女の子。

同じくはじめての海外旅行で、予算20万円以内で、これから、
中国シルクロードをのぼり、カザフスタンーウズベキスタンートルクメニスタンー(ここまでは僕と同じルート)
アゼルバイジャンーグルジアーアルメニアートルコ、そしてイタリアまで行きたいという大学4年生の男の子。

マレーシアに留学していた経歴を持ち、これから氷点下マイナス20度近くにもなる、
冬のモンゴル、シベリアを行き、さらに東欧・北欧・西欧すべてを2ヶ月程度でまわろうという大学3年生の男の子。

酔狂なのは僕だけじゃない。
そんな酔狂なメンバーたちと、退屈な船内で話をして過ごした。